負けヒロイン負けヒロインって言ってるけど勝ちヒロイン確定だから!
パミーン
第1話
「ねえ瞬!今日はカフェ行きたいんだけどいいかな?」
「おう、今日は部活がないからもちろんいいぜ!なあ、晃弘もいいだろ?」
「もう!そう「いや、僕は遠慮しておくよ。二人で行ってきなよ」
僕は薫の声を遮ってアシストを決める。
「そ、そうか。じゃあ仕方ないな。久しぶりに三人でどうかなって思ってたんだけどな」
「確かにしばらく三人でってことはないね。でも僕も色々予定があるからさ。また誘ってよ」
なんだか納得いってない僕の幼馴染の
僕達三人は小さい頃からの仲で幼馴染の関係にある。と言っても僕は中学の後半ごろからは除け者に近いからもう半分以上この関係は終わっているようなものだと思っている。
狭山薫は中西瞬のことが好き——これは確定事項だからだ。
薫が瞬と付き合えるようにしてあげないといけない。だから二人の邪魔をしちゃいけないというのはよく理解している。
理解はしているけれども、心は納得してくれていない。これがとても辛いところだ。
※
僕が物心がついた時にはすでに僕と薫は一緒にいた。親に聞いた話だと、生まれて間もない頃から一緒にいたというのだから実質ずっと一緒にいたと言っても過言ではない。
一緒にいるのが当たり前。そこに入ってきたのが瞬。確か4歳頃だったと思う。僕と薫の家はお隣さんの関係で、瞬は道路を挟んで僕の家のお向かいさんとして引っ越してきた。
それからは親同士も仲が良かったのと、同じ幼稚園に入っていたのもあって小学校に入るまではずっと三人で遊んでいた。
もちろん小学校に入ってからも三人で遊ぶことが多かったけど、高学年に上がり始めた頃から少しずつ僕達の関係は変わっていった。
薫の普段の様子がおかしくなり出したことが始まりだった。ことあるごとに遠慮がちになったというか、少し照れてるというような感じに受けとれた。
僕はまだこの時は気づいていなかった。その行動が薫が恋を意識し始めたからだということに。
ちょっと性格が変わったのかな?と思っていた程度でいつも通り接していた。そうするとそれが気に障ったのか僕に対して当たりが強くなり出した。
一方で瞬に対しては一歩下がった感じで瞬を立てるような行動を取るようになった。
今となってはそれが瞬という愛する者を立てる行動だというのは分かるけど、当時の僕にはなんで瞬を立てる必要があるんだろう?と思っていた。
そして中学に上がり、僕も思春期に入ってようやく恋というものを理解できるようになった。学校ではいつも薫のことを目で追っていた。夜になると「今薫は何をしているんだろう」とか「薫は何を今想っているんだろう」とか、とにかく薫のことで頭がいっぱいになっていた。
つまり、僕は薫のことが好きだということを自覚したってわけ。
中学に上がると身体的特徴は大きく変化する。瞬は一気に身長が伸びて180㎝を超え、顔立ちもどこかのモデル?と言いたくなるような爽やかなイケメンに成長した。
そこに加えて小学生の頃からやっていたサッカーの才能が開花した。県内でも名を知られるようなエースストライカーへと変貌したことで学校の女子からは黄色い声援を受けるようになった。
薫はというと、瞬にも引けを取らないルックスに加え、身長は150㎝ほどで止まった代わりに胸が著しく成長した。ただ本人はそれが恥ずかしかったみたいでなるべく目立たないように地味な感じで人気者の瞬の取り巻きを遠くから見ているという感じになっていた。
それでも勉強はできるし、身体能力も高いから学力テストや体育祭などのイベントがある度に目立ってしまうため、「孤高の高嶺の花」なんて呼ばれるクールビューティーな美人へと成長した。
僕は瞬のようなイケメンでもなければ薫のように勉強や運動ができるというような成長もなく、俗にいう「モブ」といういてもいなくてもいいような存在になっていた。
そんなイケメン、美女、モブの三人組幼馴染は当然ながら立ち位置が変わったことで一気に関係が変わった。
イケメンエース瞬とクールビューティー薫は幼馴染という関係から理想のカップルなんて噂されるようになり、僕はそんな人気者についてまわる邪魔なモブと認識されるようになった。
それと僕が恋を自覚したように、薫が小学校高学年から瞬を立てていたことがどういうことなのかを理解できたことで僕の失恋が確定した。
だから僕は失恋の苦しみと二人の噂を考えて距離を取ることにした。
そしてそれが中学卒業まで続き、僕らの関係はそこで終わったと思っていた。
ところが何故か進学する高校が三人とも同じになってそこからまた関係が大きく変わることになった。
僕らが進学した県立濃山高校にはとんでもない美女がいたんだ。まず一つ上の学年の先輩で現生徒会長でもある
僕らが入学式を終えてすぐに(黒羽先輩はすでにだけど)三人は学校中で話題の人となった。本当はここに薫も入って濃山四天王なんて呼ばれているんだけど、薫はそんな枠に入るような存在じゃないと拒否している。
それでこの濃山四天王、同じ人物に恋をしている。そう、中西瞬だ。
濃山四天王が有名になるのと同じくして瞬も「濃山の王子様」なんて二つ名がつくほどに有名になり、薫以外の四天王三人も瞬に恋をしてしまった。
中学では瞬と薫はベストカップルなんて言われていたけど、実際に付き合ってはいない。それが知れ渡ったことで濃山四天王による瞬争奪戦が始まった。
先ほども薫は四天王と呼ばれるような存在じゃないと言っている通り、この三人には勝てないと思っている。それでも瞬のことは諦められないみたい。
そこで薫は僕に相談するようになった。中学の時に離れていた距離が嘘かのような接し方だったのには驚いたけど。
「もう私、100%負けヒロインじゃん……」
なんていうセリフをよく言うようになった。それくらい薫は弱気になっていた。
でも薫、そんな心配をする必要はないんだよ。だって君は勝ちヒロイン確定なんだから。
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