ダンジョン潜って美少女配信者を助けてバズるとか無かったけど、なんか凄いことになった件
にがりの少なかった豆腐
第1話 同接なんてない
いつものように配信用のカメラを回しながらダンジョンの中を進む。
移動の合間、チラチラと配信画面を確認してみるも悲しいことに現在の視聴者数は0。
「悲しいなぁ」
ここ最近、ダンジョン配信が珍しくなくなってきているため、会話が上手かったり見た目が良かったりと、そういう良さ、華のない人間の配信には滅多に見に来る人間はいない。
悲しいかな。自分が話が上手くないことや見た目が良いわけでもないことは十分に理解しているから、この現状に諦めがついてしまっている。
たまに一人二人見に来てはいるが、長時間見続けてくれる固定の視聴者は存在していない。
「このまま配信していても意味なさそうだよなぁ」
チャンネルの登録者も少ない上に、同接云々以前にアーカイブ上のPVすらろくに回らない。配信での収益なぞ夢のまた夢な状態だ。
そもそも配信なんてしなくても、ダンジョン内で魔石を取っていれば金は稼げるから収益化は稼ぎたいからというよりも、ある意味到達点として目標にしていただけなんだが。
「そろそろ潮時か」
このまま配信を続けていても何か自分に利があるわけでもない。ギルドが事故があった際の補償をするために動画の撮影を推奨してはいるが、配信までする必要はないのだ。
まあ、リアルタイムで何が起こったのかを知らせるためには有効なのだろうが、見ている人間がほぼ居ないのならばそれも意味はない。
「今回はサクッと配信を終わらせて、次回からは動画撮影だけにしておくか。正直、誰も観ていない中で話を続けるのもきついしな」
そう独りごちながら目的の階層までとぼとぼとダンジョンの中を進んでいく。
今進んでいる階層もダンジョンの中ではかなり深い場所に当たるので、同じように金稼ぎ目的で潜って来ている探索者はほぼ見ない。
たまーにすれ違ったり、目的地が近かったりすれば会うこともあるが、そんなのは10回に1回あればいい方でここ最近はそんな同業者に遭遇してもない。
そもそもダンジョンの深い層で活動して素材を持ち帰り売れば、一月は余裕を持って暮らせるわけで、いくら実力がある探索者でも頻繁にダンジョンに潜ることはない。
「高頻度で潜ってる俺がおかしいんだよなぁ」
別に有名になりたかったから配信を始めた訳じゃない。
ただ探索中の話し相手が欲しかったら配信を始めただけだ。しかし、そんな理由で始めた配信には話し相手の視聴者はほぼいない。たまに見に来る視聴者も別にコメントを投げてくれるわけでもなく、少しすればいなくなる。
「なんだかなぁ」
最初のうちは10人くらいの見に来てくれる視聴者もいたが、そういう奴らも今はいない。一時期流行ったダンジョン系小説で、美少女を助けてあれこれするという展開があった影響か、それ目的でダンジョンに潜っているとコメント欄を荒らされたのが、固定で見に来てくれる視聴者が居なくなった要因の一つとも思える。
あの時はどんなコメントを投稿されてもありがたい視聴者に変わりないと思っていたため何もせずにいたが、その判断が間違っていたのだろうと今更ながらに思う。
まあ、そういう邪な気持ちが全くなかったかといえば、否定するとこはできないんだが。というか、そもそもダンジョンの中で美少女配信者とか遭遇したことすらないんだがな。
とはいえ、そういうのを放置していても視聴者が多い配信者も存在しているので、単純に俺が配信者として実力が足りていないんだろう。
「さてと、今日は最後の配信ってことで派手にトカゲ討伐と行こうか」
ダンジョンの下層には凶暴なモンスターが生息しているわけだが、こいつらを1体討伐するだけで無茶苦茶な稼ぎになる。
「魔石を持っていけば軽く1000万にはなるからな。ぼろ儲けだよな」
さっと潜って、さっと倒すだけで半年は余裕で暮らせる。100体狩るだけでほぼ一生働かなくていいくらいには稼げるわけだ。
まあ、それはあくまで単純計算なだけで、一度に大金を稼げば大量に税金を払わなければならないわけだが、それでも十分な金額であることには変わりない。
「これが終わったらしばらくは適当に過ごすのもありか」
アーカイブなら多少PVは付くが、ライブ中は誰も見てくれない配信を毎日のように続けていた。
1日に数度配信していた時期もあって、アーカイブの数なんてとうに500は超えている。しかし、その中でPVが100を超えているのなんて数えるほどしかない。1000を超える動画なんて配信始めたころに別の配信者に遭遇した時の1本だけだ。
「ダンジョンの中もそうだけど、配信者もなかなか厳しい世界に居るよなぁ」
何万といる配信者でも、登録者が10000人を超えているのは上位何%という世界なのだ。何だったらダンジョン探索者よりも厳しい世界かもしれない。
俺も半年以上配信を続けてきたが、もう少し早めに見切りを付けて配信するのを辞めてよかったのかもしれない。
「さて、着いたな。それじゃあ、あいつの顔でも拝みに行きますか」
あれこれ考えながら数十分。目的のトカゲがいる階層に到着したので一度気合を入れなおし、そいつを討伐するために捜索を始めた。
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