男性希少につき、過保護パーティでダンジョン攻略中

クスノキ

戦わせてもらえない!!

「おい見ろ!《クロ保護三銃士》が来たぞ!」

「今日も男の子(クロくん)が無事でありますように...」


ギルドがざわざわ騒がしい。


その中心にいるのは、もちろん俺――


「ほんとに勘弁して...!ただ依頼受けたに来ただけなんだけど!?」


クロアリシア、職業:戦士

だが周囲からの扱いは絶滅危惧種。


「はいはい、道を空けな。クロが通るだろう」


剣士のリサが人を押し出して道を作る。


「クロくん、今日の体温は平熱ですか?

何か不安があったらすぐ言ってくださいね?」


魔法使いのフィーネは、回復魔法を構えながら心配してくる。


「ギルド日誌に記録だ。"本日もクロは可愛い"っと…」


とノートに書いてるのが斥候のサラ ディオン


「サラ! それどこに提出してる日記なの!?」

「ギルドの奥」

「やめて!?」


受付嬢が書類を持って近づいてきた。


「クロさん、本日よりあなた方のパーティの正式名称は《クロ安全最優先隊》となります」

「いや待って!?僕そんな名前つけてないよね!?」


すると三銃士の3人は自身満々に胸を張る。


「私達がつけた!」

「クロくんを守る隊、ですからね」

「最高に分かりやすい名前」

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」


すると周囲の冒険者達は拍手している。


「素晴らしい名前だ!」

「ぜひ男性保護運動の広報に!」

「クロくんの安全第一〜」


「僕が勝手に活動の象徴にされてるぅ!?」


ダンジョン第一層――


周囲には、スライムがいる。

弱い。とても弱い。戦士である僕なら普通に倒せる敵なのだが


「よし、最初の敵は――」

「クロは下がってろ」


リサは大剣を構えた。


「クロくんが攻撃する前に怪我したら大変ですから!」

「クロの前に出る敵は全て排除する」

「なんで僕が1番後ろなの!?僕、戦士なんだけど!?」


スライムが1匹ぷよぷよと近づいてきた。


「じゃあ僕が――」


僕が一本踏み出そうとした瞬間、


「クロに近づくなぁぁぁあ!!」


リサが大剣で地面ごと粉砕。

スライムが文字通り消滅した。


「やりすぎ!!そこまでしなくいい!!」

「クロに一本でも近づいた敵は容赦しない」

「いや近づいてないよ!?」


それからしばらく経った頃、


「…あれ?みんな?」


気づけば僕だけ通路に取り残されていた。


「クロー!!どこだ!」

「クロくーん!!返事して!!」

「監視対象を見失った!?この私が!?嘘だ!」


三人の悲鳴が響く。


(僕より先にみんながパニックになってる!!)


数分後、三銃士が僕を発見する


「クロー!!怪我は!?怪我してない!?」

「してないしてない!僕は無事落ち着いて!」

「良かった!心配で死ぬかと思いました」

「記録"クロは今日迷子になった"よし」

「書かなくていい!!」


そこにまたスライムが出現する


「おっと、今度こそは僕が――」

「クロ、下がれ」


リサが突進し、フィーネが爆裂魔法を放ち

サラが短剣で刺す。


――スライム達は1秒で完全消滅した。


「クロに近づくとは不届き者だ」

「本当に危ないところでしたね!」

「今日もクロは守られた」

「いや、僕、戦士なんだよ!?一回くらい戦わせて!?」


数時間後。


「…結局、何も出来なかった....」


「何を言っているんだクロ。無事に帰れたのが成果だ」

「クロくんが元気なのが一番です!」

「記録"本日のクロ、保護に成功"」

「成果ゼロどころか僕だけ超疲れてるんだけど!?」


----------------------------------------------------------

クロ安全優先隊

今日の評価:安全S 攻略E


コメント:

「クロくんの保護が完璧です。素晴らしい」

「戦士として働かせてあげてもいいのでは?」(匿名)


「絶対最後のコメント、男の人だよね!?僕と同じ境遇の!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る