英雄騙りの別ゲー転生~前世で憧れた和風ゲーの英雄に成りきって、西洋世界で無双します~
鬼怒藍落
第壱幕:転生先は和風ゲー?
第1話:目覚めた先は
気がつけば、ぽつんと俺は月夜の下に立っていた。
さっきまで何をしていたか分からないが、鼻につく焦げと鉄の臭いに周りを見渡すとそこには巨大な熊の死体が一つ。
それに、手には一本の刀が握られていた。
「えぇ……何だ、これ」
驚いて疑問を口に出せば、耳に入るのは自分ではない誰かの声。
意味が分からないままに立ち竦んでいれば……別の気配が近づいてくる。
「
やってきたのは、着物を着た女性。
豪華というわけではないが、少なくとも見たことないぐらいにはしっかりとしたそれを着た女性が、そんな名前を呼び……どこかに去って行った。
「いや……ほんと、なに?」
何も分からない状況。
誰も説明してくれる人がいない中、俺はただただ困惑するだけ。
そして見知らぬ大人達が慌てて駆けて来る頃、自分が血に濡れていることに漸く気付いて……余計に状況が分からなくなったのだった。
――――――
――――
――
どうやら俺は所謂転生という事象に遭遇したらしい。
着替えさせられたあとの自室で一人、俺は鏡を前にしてそんな結論に辿り着いた。
無駄……というか、子供ながらに整いすぎた容姿。瞳は深紅の焔の様な色をしており、髪は鴉の羽のように濡れたように黒い。
「これ、あれだよなぁ」
自分の名前は思い出せないが、この顔には心当たりが一つ。
その心当たりとは、俺が愛してやまず何周もプレイしたことのある和風ゲームの主人公【
「いや、えぇ……転生? まじ?」
勿論というか、俺には死んだ記憶などない。
まぁ、ぶっちゃけると殆ど前世? の記憶もないけど、少なくとも別の人生を生きていた記憶はあるから多分、転生なんだろう。
「……でもさよりにもよって、こいつはないだろ」
芥火焔矢……それは、和風アクションRPGの主人公。
ゲーム性は最高、やりこみ要素は満載。
ストーリーも面白かったのはなんとか覚えているし、主人公の能力も焔と王道。
神仏妖魔溢れる夢いっぱい全部のせみたいな作品で、ゲームサイトで高評価だったそれ……だけど、その作品には一つというか特大の厄ネタが。
――それは、曇らせ展開満載のプレイヤーの心を折りに来るタイプのゲームという事だ。癖いっぱい詰めたから何してもいいよね! の精神で盛り込まれたシナリオライターの欲望が詰まっており、ストーリーで容赦なく皆が死ぬ。
それはもう、主人公だとか強キャラだとか関係なく、プレイ状況次第でバッサリとめっちゃ死ぬ。そのせいかアクションRPGのくせにエンド分岐がいっぱいで、ノベルゲーかな? とか思った記憶もある。
「その世界に転生? ……え、ふざけてる?」
どうしよう、自分で声に出して普通にキレそうになった。
というかさよくある転生ものには、神様が転生させているみたいな話があるが……この世界に入れる神などがいれば、多分それは邪神だし一発殴らせてほしい。
「……うん、考えれば考えるほど意味分からないけどさ。暇だし一応確かめるか」
一応というかなんというか、まだ転生先が同姓同名の別人の可能性があるかもしれない。だから、ゲームで、それこそ何度もやりこみ使った術を俺は使おうと、起動するための言葉を唱えてみて。
「……起きろ、
そうやって、起きろと名を呼んで。
その瞬間にどくんと、心臓が跳ねた。
それこそ、熱が灯って体中が沸騰しそうになって。
どこまでも熱に喰われて魘されるように意識が蝕まれて、何より砕けそうになって……風もないのに部屋が激しく揺れて、異質とも言える寒さが部屋を支配していく。そして俺の前に何か巨大なモノが現れて――。
『やっと見つけたわ』
だけど、その異質なモノは――横からかき消され、それこそ別種のナニカが降りてきた。それで見えたのは見たことないのに見覚えのある黒いセーラー服を着た黒い角が生えた美少女。中学生ぐらいの見た目の彼女は俺をみて微笑んだかと思えば、
『よろしくね……私の、運命の人』
それだけ言って俺の頭を愛おしそうに撫でて俺の中に宿ったのだ。
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