中学受験編

絶世の美少女(?)に出会う

中学受験するって約束で、絵画教室とピアノ教室とサッカーをやってたから、5年の夏の大会終了後に全部辞めて、夏期講習から中学受験の大手塾の行くことになる。


絵もピアノもサッカーも全部「センスある」って褒められていたから、若干の心残りはあったが、その心は初日に吹き飛んだ。


入塾試験代わりに週に一度の日曜実施のテストを受け、その塾では順位順に席が決められていたので、前から2番目の席に座らされた。つまり、いきなり六百人中2番だったわけである。


これには多くの上位陣が注目してたっぽくて、興味津々と嫉妬と羨望交じりの視線とお喋りが気になったが、まずは一番のやつを見て、すべての不安が舞い込んだ。


同じ小学校のENTJ←つまり、大嫌いなガリ勉ヤロー


ENTJ「おま、うちに来たの? いきなり2番って意外とできんだな。へー、馬鹿そーなのに。まぐれかもな」と上から目線で話しかけてくるが、気にせず、テキトーに話を合わせてたら、自分の隣に女の子が座ってきた。


ものすごい顔面がきれいで髪もきれいで色白で細い西洋人形みたいなきれいな子が。


金持ちばっかの私立の小学校に通っていたから、それなりのルックスの同級生はそこそこいたが、これは完全な外れ値。あまりにビビってしまって、目を合わせていていいのか迷うレベルだった。が、幸い、向こうがこっちをじーっと見てくるから、挨拶しようと思った矢先に


ISTP「(#・д・)チッ…」


無表情で舌打ちして、直後、顔を背けて授業の準備をしだした。話しかけてはいけない雰囲気しかしなかった。超顔面の整った超美少女がこの態度って、かつてない恐怖だったんですけど。こわー。


ISTP超美少女に、初対面で嫌われてるのは理解したから、話しかけないようにしようと、いやむしろ、この子の周囲では静かにしとこうと心に誓った。


あんな超美少女に叱られたら、今ならご褒美だが、当時じゃ、泣いてまうわ。


塾での授業は簡単すぎてつまんなくて、半分うたた寝状態。両サイドのENTJとISTPは異様に真面目に授業を聞いてるからか、落差がすごかったらしく、妙に、算数と理科の先生に気に入られて、いじられまくった。


算数の先生「俺君の解答用紙すごかったよ。君、メカニズムを完璧に理解してるもんね。ただ、絵は描かないほうがいいかなwww」

わい「やっぱそうでしたかwww」

算数の先生「あー、でも、意味はわかるから、減点はしなかったよ。ぶっちゃけ君の理解のほうが高度だしね」

わい「高度???キョトン」

算数の先生「だから、描くなとは言ったけど受験直前までは、そのままでいいよ。むしろ、偏差値高い学校受ける時は、今のままのほうがいいかもね。特待生貰えるかもwww」

わい「特待生ってなに???キョトン」


理科の先生「君さー、オリジナルの公式作って解いてたよねwww センス良すぎてビビったんだけどwww」

わい「複雑だったんで整理しただけっす」

理科の先生「あーゆーまとめ方をどっかで見たの?www ヤバいでしょwww」

わい「頭の中に浮かんだものをわかりやすく整理しただけですけど」

理科の先生「ヤバwww 天才www いるんだwww こんな子www ドンドンパクらせてもらうから、ドンドンやっちゃってwww」

わい「パクる???キョトン」


こーゆーのを聞いたENTJとISTPが、これまたすごい形相でこっちを見てきて、手元のテキストの俺が解いた跡とかをまじまじと眺めてくるわけね。特に、ISTP超美少女が真顔でじーっと、俺の落書きだらけのテキストを。そして、その度に


ISTP「(#・д・)チッ…」


こええーー。またある日は


算数の先生「これわかる人いる?」

わい「はーい」

習い事の感覚で気楽に挙手するうぶな俺氏。

算数の先生「君かー。ふむふむ、君のその図と式を黒板に書いてくれるかなー」

わい「ういーっす。カキカキ。できましたー」

算数の先生「おおー、こんなふうにビジュアルにするとわかりやすいなー。参考になるなー」

わい「こうすると簡単ですよwww」

算数の先生「次の問題も見たいなー」

わい「ういーす。カキカキ。できましたー」

算数の先生「なるほどなー。こう説明するといいんだなー。勉強になったよー」

わい「そうなんすか?キョトン」

算数の先生「また頼むねー。これ、テキストや僕の解説よりわかりやすいし、間違えにくいから、みんなも参考にしてねー」


と席に戻る途中、目が合ったENTJとISTPがまたも、ものすごい形相でこっちを見てて、例の如く


ISTP「(#・д・)チッ…」


もういい加減、慣れてきたけど、やっぱり超きれいな顔で舌打ちしてくるのはこえーし、「調子のりすぎたかな」ってちょっぴり反省していた。まあ、理由はよくわからないが、俺は、よっぽど、この二人に嫌われてんだなってのは認識できた。


帰り際に、算数と理科の先生に声かけられる。「君、授業中に宿題やってていいよ。聞かなくてもわかるんでしょ。寝てるくらいなら、そっちのほうが時間を有意義に使えるからね」って談笑しながら、伝えられる。だが、その様子を上位陣が遠目に憎々しげに見つめていて、早くも塾通いに暗雲が立ち込める。なんなんだ、この独特に陰湿な空気は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る