嵐のような夜の始まり

背中が革張りのソファに沈み込む感触で、自分が完全に横たえられたことを知った。

彼が覆いかぶさるようにして、その体重を預けてくる。

ずしりとした重み。けれどそれは不快なものではなく、むしろ私の存在をこの場所に縫い留めてくれるような、絶対的な安定感だった。


露わになった肌を、冷たい空気が撫でるよりも早く、彼の熱い素肌が塞いでいく。

直接触れ合う面積が増えるたびに、脳内の警鐘は遠のき、代わりにあまやかな痺れが全身を支配した。

彼と私の肌が擦れ合うたび、小さな火花が散るような幻覚を見る。


「……熱いな」


耳元で囁かれたその言葉は、彼自身の熱情の告白でもあった。

私の反応を楽しむように、彼の指先が執拗に腰のくびれを辿り、やがて太腿の内側へとゆっくり滑り落ちていく。

その動きがあまりに滑らかで、それでいて逃げ場を許さない強引さを孕んでいたため、私は思わずのけぞり、喉の奥でくぐもった声を漏らした。


抗うことなど、もう思いつきもしなかった。

彼の膝が私の脚の間に割り込むと、身体は自らの意思を持ったかのように自然と彼を受け入れてしまう。

恥じらいよりも先に、彼をもっと近くに感じたいという渇望が勝っていた。


視界が揺れる。

涙で滲んだ瞳に映る天井の照明が、不規則な軌道を描いて乱舞する。

思考は溶け落ち、言葉は意味をなさず、ただ彼が与える圧倒的な熱量だけが、今の私を繋ぎ止める唯一の現実だった。

嵐のような夜は、まだ始まったばかりだ。

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