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第5話への応援コメント
>渋い顔をする抱主は、火鉢に翳した指先を揉んで考え込んでいる。
抱主といえば、当代なら興業主か社長さんでありましょうか。
この仕草が、ただ手を温めるだけでないのは明白です。
寒いと擦るであろうところ、指をわざわざ「揉んで」いるのは、吉野に苦渋を「見せる」ための所作かと思われます。
やだー、怖いよう。
吉野さんはじめ、皆親の借金のかたに奉公の身。
外出に厳しい制限あり、客以外の男性と立ち話もいけない。今は遠い幼馴染みであろうとも。
内女衒(取持の姐様=マネージャーかな。など役割がわかりやすくて助かりました)が一切手を触れていけないというのは――スタッフ同士が関係してしまうのを避けるためですよね。
私の少ない読書録の中に、太夫と用心棒が深い仲になったため、死を命ぜられるという短編がありました。ヒイ!(隆慶一郎氏「張りの吉原」)
金糸銀糸に螺鈿の簪で装いたる尾長鶏…その足に結ばれし鎖の鈍き輝きが。
東雲さんの庇護の下にあった吉野さん。
せめて幼き妹は堕とすまいと、苦界の海に小舟で棹さし渡ろうとしています。
>「まぁ、言わなきゃいけん事は色々あるがの。御前さんは東雲に似てきたのうや」
自己犠牲の質について、抱主は鋭く見抜いている。
身よりのなかった東雲さん。
生家はおそらく没落しており、囲碁を教えてくれた優しき兄様の学費のため苦界に入ったのかもしれず。
その兄様も、優しさのあまりおそらくは…。
病んでもただ寝かせておくしかできぬ時代…けなげな娘たちは身内のため闇夜に浮き、桜花のごとく散ってゆきます。
東雲さんは吉野を妹のように感じていただけでなく「健やかに光を受けて育ちたかった自らの分身」として見ていた気がします。
だから、大切に懐に包んで汚さず置いて、八利の旦那に託した。
この子には、幸せになってほしかったのですよね。
自分の未来の分までも。
>抱主が吉野に神経を尖らせたのは、別見世に立つ太夫が、その称を返上することが決まったからにある。廻船問屋である船主からの身請け話を受けた太夫は、次の便で尾道を去る。それまでに新しい太夫を推し出そうと、町は既に動いていた。
怖かった抱主の叱責が、ようやく終わりました。
吉野さんよく耐えましたねえ。
前回から太夫推挙がちらついていた吉野さんですが、謙虚な彼女には奢りがなく。
話を出され、ひどく驚いている。
いやいや、あなたしかいないでしょ吉野さん。
ここで疑問がひとつ。
普通なら傲っても不思議ではない立場なのに、吉野さんは純心でいられるのか。
首をひねりつつ寝て、起きたらわかりました。
吉野さんは自らの価値を定めぬことによる、揺らぎを常に背負っています。
太夫に推されようというお人が、自分を「いい女カテゴリー」に入ると思っていないのです。
これは奇跡です。
自らの美や芸を金銭に換算し得る商品ならば、それらを誇り武器とするは遊里の習い。
ところが吉野さんは誇らない。
美しく装い所作を整え茶を点てるけれども、それら全てが天然の美。
ただそこに、咲く花の在るごとく、やわらかな光の在るごとく。
己の存在を、誇示しない。
そこが最大の見やすさの要因かと感じられます。
吉野さんをヒロインに据えた、この物語に稀有の輝きをもたらした豊かな光源。
吉野さん、テンプレ離脱の女神です。
漂泊の徒にも似たるかな。
自らが逃げぬ籠の鳥なることを示し、内女衒を無力化するだけでなく味方につけた。
嘘をつかないという、心根の正しさによって!!
抱主だって、妹を守るという利他の輝きに自らの人生を三年差し出して手をつく吉野さんを罰せない。
かくて、苦界の掟は吉野さんの周りで自然と無効力され、気がついたら奇跡が起きていた。
という段階が丁寧に重ねられてゆくため、読者の気づかぬうちに外堀を固められ…いつの間にか!! 忽然と典雅の楼閣が揺らぎつつ立ちあらわれるのです。
すごいっ、高度すぎて、深くじっくり読み解かないとわかりませんでした。
作者は枠な、深層の仕掛人であります。
語らぬことによって生ずる「美」の極致といえましょう。
>吉野はいつものように一服の茶を点てる。湯酌から注がれる湯の音、茶筅を振る音に、旦那は耳を傾けていた。茶を喫した後は、吉野に酒を注がせて舌鼓を打つのだった。
八利の旦那の凄みが、さらさらっと一筆で。
この方――茶を点てる吉野さんを心眼で見つめ、音を聴いとりますのや…!
音だよ?
それで何がわかります、っておっしゃる方へ書いときますえ。さっきまでのあほな自分にもあてて(笑)。
ええですか。
音には心の全てがまるごとあらわれてしもうさかい、茶の味にはひとっつの誤魔化しもききまへん。
湯温と抹茶しか条件があらしまへんよって。
不安があれば身体は固くなり、手首がこわばり茶筅の返しがなめらかにいかんのです。
どこか、口あたりが悪くなる。
それは当然、味に出る。
>通人にして風雅と他に言わせる旦那が、口先も滑らかにして言うには空々しい。それが戯れであっても、こうまで言われれば吉野も不機嫌な顔を解くしかなかった。
八利の旦那は吉野さんの清らかな支援者となるも、芸を愛でるのみ。
さすがの吉野さんも、遊里の習いからあまりにかけ離れた振るまいに少々不安を覚えもする。
なぜなら彼も…いいえ彼こそ真打ち――テンプレ無効化の帝王だから。
不機嫌と拗ねて見せるは遊女のテンプレ、そこを旦那もわかって遊ぶ。
その少し下、中層あたりに吉野さんの不安と迷いがある。
まずは、遊女としてのテンプレに乗っていないこと。
身体の技能を行使し、客を捕える務めを果たしていないのでは…という揺らぎ。
そして、八利の旦那の真意が読めないことへの不安があります。
気まぐれに目をかけているだけに「見える」、ひとりの男性への信頼と不安の鬩ぎ合い。
さらに深層…この人を愛し、愛されたいと望む健全なる女性性の海の輝きが横たわっている。
吉野さん…ビジネスネームを排した本来の彼女は、遊里の掟など超えて…深く静かに、真実の愛を捧げたいのです。
八利の旦那の思いが真実であるならば――いつしかそれは、愛になる。
吉野の点てる茶が師である東雲さんをこえたのが転機となり――二人の間にくつろぎと和やかさが満ちる。
茶の味が、変わってゆく。
最初は所作を褒めていた旦那も、音を聴き風雅を愛でる。
吉野さんが、八利の旦那の目に籠められた愛を、やがて身体で汲み上げ悟る日が来る。
その時…茶の味はまろやかに深く、爽やかでいて甘く愛しく五感を打つ!
嗚呼、拈華微笑。
身体で結ばるるより先に、二人の精身は共鳴していた。
東雲さんの魂を間に置いて手を繋ぎ、そっと歩き続けていたのです。
八利の旦那も、他の旦那衆方も東雲さんを救いたかったことでしょう。
ところが傷が深すぎて、他人に頼ることができなかった。
弱みを見せることが生存不能に繋がる、過酷な世界線で生きてきた東雲さんだから。
健やかに人を信じられる吉野さんには、自分のようにならず幸せをつかんで欲しかった。
八利の旦那にも深い悔恨の念ありて。
東雲さんに届かなかった温もりを、せめて吉野さんに与えたい。
ただし、完全に安全なる状况と信頼のうちで。
先に身体をつなぐことは、愛より欲望が勝っているのだと誤った信号を届けてしまうから。
吉野さんの全身に、目から所作から表情から、溢れんばかりに愛の輝くときを、静かに待っていた。
十三夜の青き時過ぎゆきて、その爛漫の…望月の頃を。
それゆえの静かな笑み、暗さと悲しみをも背負った大人の風格。
>「吉野は得難い女ゆえ、請うにも身が震えてしまうんじゃ。剥れた顔などせず、機嫌をお直し」
吉野さんの爛漫の時を待つ八利の旦那。
白い結婚、清いパトロンのままです。
吉野さんは当然ながら、語らぬ旦那の深い情けを知りません。
幼馴染君が現れた時にはヒヤリとして、里心がつきそちらに傾く図なども去来したのですが。
彼と駆け落ちなどすれば、幼い妹さんが倍に膨れた借金を背負う地獄絵図が待っている。
転落していった姉様たちの姿が、まぼろしのように重なります。
吉野さんは、そちらの道を選びませんでしたね。
なぜかなーと思いました。
吉野さんがただの良い子というだけでは、説明がつきません。
彼女が東雲太夫の継承者であることが、凛とした振る舞いや仕草に表れている。
もはや紅白ひとり舞い、梅と桜を名にし背う。
もうひとつ。
吉野さんの生家はお百姓さんです。
これは身分低きこと、数多き職業をあらわす記号ではなく。
命を育てる職業としての、百姓だったのではないでしょうか。
幼い吉野さんは田の蛙や虫やタニシを見、稲や菜っぱが伸びる音を聴いて育った。
お米が採れた年には、一家の暮らしはようやく息をつける。
日照りの年には枯れ果てた大地が養うものなき様を、肩を落としてみつめることしかできない。
お米の数粒が、今日という命を繋ぐ重さを体感で知っている。
吉野さんは、命を守り育む人です。
いまだ顔を知らぬ妹――帰省できぬのなら一生顔を見ぬことになる――を守り、東雲さんの魂を懐に抱いて守っているのです。
どこまでも読み解けてしまう、破綻なき多層構造に敬意をあらわしつつ…今回はここまでにいたしとうごさいます。
重厚かつ、軽やかな読み応えでございましたー!
編集済
第4話への応援コメント
こんにちは、琴音さま。
4話の解釈の前に、第3話の書き漏らしに気付きまして。
先ほどコメントを編集して参りました。
もしも通知が届いておりませんでしたら、どうぞご確認くださいませ。
お手数をおかけして、申し訳ありませんですー。
さてさて。
事件が立て続けに起こり、読み応え十分の第4話です。
中でも一番の柱となるのが、東雲姉様の退場です。
私はすっかり東雲さんのファンでした。
なので、彼女の体調不良が徐々に明かされるにつれ「…えっ嘘でしょう。回復して、あの清冽なご気性を可愛らしい表情に包んで見せてくださるのよね、ねっねっ」とプルプルしていました。
>――今のわいがこうしていられるんは、東雲姉様のおかげじゃけぇ。どうして、そんな情けも持たない真似が出来ようか。
吉野はそう言って、決して首を縦に振ろうとはしなかった。
東雲姉様の体調を気遣いながらも、部屋持ちの三味線姉様を、無理に部屋から追い出そうとしなかった吉野さん。
やさしい彼女にはどちらを切ることもできず、辛い板挟みでしたね。
そうしたところがあるから、彼女は顧客の支持を得ている。
容貌だけでも、芸の巧みさや話術でもない。
もちろん茶芸は、吉野の人気を納得させるための証明であり、酒席に耽る客から遠ざけるための安全策となっています。
ただ、それだけではないのです。
この、気遣い。
どちらも立てようとし、両者の苦しみをいったん自身の身に引き受けることからの、苦悩を背負う。
吉野は苦界にあって、自ら苦を背負う異能者として立っているのです。
それが、太夫昇格の裏付けと思えます。
ただの主人公びいきではないのです。
下積みとして格子前に座ることなく、お客様の引き立てを得る理由なのだな…と。
それらのすべてが、読者の腹に心地よい重みで落ちてくる。
語り口の静けさと、程よい遅さ。
そう、早い文章ではいけないのです。
早口では、川底の泥を掻き立ててしまう。
澄んだ水を得るためには、足音ひそめ、ゆっくりと。
誰に気づかれぬよう、摺り足で進まねばなりません。
書き手の心理に負担を強いる、舞の奥義を。
かくも艶やかに、さりげなく展開して見せる本作品への敬意が、わたくしに拙文を書かせている理由のひとつでもあります。
>東雲の容態を気に留めながらも、お内儀や部屋持ちの姉様達は、吉野に東雲を元の部屋へ戻すよう勧めた。
吉野は応じなかった。
春霞の風情の吉野さんから、不意にきりりと紅梅の気迫がたちのぼった瞬間です。
この時点で、吉野さんは東雲姉様の継承者になるのかなーと予感が漂って参りました。
>春を待たず、溶けた雪のように見世から東雲の気配は消えた。
信じがたくて、何度も同じ箇所を往復してしまいました。
今にして思えば、颯爽たる姉様ぶりで登場した東雲さんが、このところ元気がなかった。
他の姉様方と遠景で笑っていたり、影が薄くなっていた。
体調が悪いのを堪え、気丈に隠されていたのかも。
しかも、こんなに悪くなるまで…と、かなりのショックで。
その辺りを自然に絵として描きわけて、読者に悟らせる作者の手腕が素晴らしい。
書き手として、唸ります。読み手としては、涙目で
すうっ。
せめて東雲さんに、この曲を捧げさせてくださいませ。
東雲さん〜!
https://youtu.be/3rFDm0K7qps?si=eDzCVUxlnVam27XM
東雲姉様を「暗」とするならば、「明」として鮮やかな対比を見せる部屋住みの姉様。
確かな三味線の腕でこの苦界を泳ぎ抜き、晴れやかな年季明けを迎えます。
肌に冷たく感じる絹は、着崩れを直さねば美く保てぬもの。
対する木綿は肌にやさしく、動いても崩れぬ丈夫さとあたたかさを持つ。染色も容易で、今後庶民の衣服を席巻してゆきます。
なんという鮮やかな、残酷な対比。
苦界に住む彼女たちの分かれ道は、そのまま吉野さんの前に未来図として示されています。
さあ、どちらをとるか。
この両者の間には、名もなき姉様たちの浮沈が海の泡のごとくに多くあったことを、さらりとした筆致で過不足なく描かれています。
果たして、吉野さんがどちらの道へ行き着くのか。
白梅と紅梅の間――薄紅の闇を揺蕩う吉野さんの運命や如何に!?
だって、少々気を緩めたら足を掬われる世界ですもの。
先達として吉野を導き、盾となってくれた東雲姉様はもういない。
その虚を抱いて、吉野はどこへ行くのでしょう。
目が離せない展開です。
八利さんの手代さんは、東雲姉様に思いを残していたのですよね。
彼は今、どうしているのか。隠した文を、見せる日が来るのか。
そわそわしているうちに、事件です。
郷里からやって来た、幼馴染くん。
ここでふと思うのですが。
彼も部屋住みの姉様たちも、固有名詞を与えずに役柄だけで筆を運ぶところがなおさら粋に感じられます。
主役級と、それ以外の人々が見分けやすくなります。
たくさんの固有名詞を覚えずに済むという、読者への配慮も感じられます。
ただ、この手法は…。
キャラクターの個性と人格がしっかり成り立っていないと、誰が誰やらわからない問題を多発する恐れがあります。キャー!
逐一役柄説明を兼ねてキャラクターを書くのは、作者にとってやや手間なもの。
読者にとっては親切ですが。
ゆえに…あまり見かけない気がしておりました。
ネット小説であれば尚のこと。
キャラクター推しも兼ね、名前を連呼して物語を進めるのが主流になっていることもあるでしょう。
琴音さまの選んだ手法は…渋い。かっこいい。
この一言でございます。
もうね、大好きですよ。
いいですよねえ。
キャラクターが押し付けがましくなく、自然になるんです。
感嘆しているうちに、長くなってしまいました。
>家の影で柱を打ち据えたまま項垂れていた父の姿が、吉野の脳裏に浮かんで胸がしくと疼いた。
ああ…。吉野さんのやさしさは、お父様譲り。
ただ無情に娘を売り払ったわけでなし、己の無力を悔いている。
そんな肉親だから、援助したい。
まだ顔も見ぬ妹への思いもあり。
>内女衒は吉野の言わんとする事が分からず、厳めしい顔が解けて紅潮しはじめた。
呆れ顔の吉野が袖を小さく二度ほど引っ張ると、握りしめていた内女衒の拳が釣られて揺れた。
内女衒の推測と吉野さんの思いが食い違っていることが、動作で示される名文です。
ここで、吉野さんがどのように考え、どう行動するのかはまだ示されません。
示されても、風に揺らぬ花の風情の彼女が借金という現実の重さにどう耐え、どう乗り越えるのか。
読者としては、一歩足を踏み出した吉野さんの背中を見つめるよりないのでした。
ああ、まっすぐな背中だなあ。日の当たる方へ顔を向けて。
どうやら吉野さんの中で、何かが育ちつつあるようです。
それを明示せず、立ち姿に表す隠喩の美学に、やはり本作品は日本画である。
との思いを深くし、次回を端座して待つ心が芽生えるのでした。
今回も名作!!
作者からの返信
イエロウ 様
この回は吉野の周辺での出来事に寄り道しちゃった所ですね。
さらっと東雲が亡くなったとしようかと考えたりもしたのですけど……
序盤での準主役級だった東雲を、一文で片付けるわけにもいくまいと。
そんなことをすれば、後で吉野に睨まれそうで怖かったのw
東雲に捧げて下さいました十六夜を拝聴しながら。
東雲、年季明けの部屋持ちの姉様。
苦界の遊女にあり得た生それぞれの象徴を背負ってもらいました。
実は八利の手代さんの淡い片想いってことで、東雲の延命も考えてみたのですけどね。
身の上も明かさない東雲さん、中々、気位が高い。ですから胸の内に何かあったとしても何も言わず、意地を張る方がらしい気がしたのです。根は純粋な人ですね。
これまで言われたとおりを素直に受け止めてきた吉野ですが、段々と自ら判断をするようになっていく転換点でもありました。
ここは分析くださったように、吉野の自己犠牲的な行動に現れているわけですが、読み直してみると、吉野は割と俯瞰した物の見方も出来ているんですよね。
なので、袖を握られっぱなしの吉野は落ち着いて対応しますが、心根もいい吉野に見つめられた内女衒にしたらねぇ(´艸`*)勘違いしそうになったことでしょう。
その吉野も、もちろん両親につけられた名前があったのですけどね。ころころと名前が変わってしまうのも混乱するかなと避けてしまいました。
幼馴染に声かけられたこの回ですら、しれっと回避(;^ω^)
その他、端役達も名づけない事で、それぞれの人物像の立ち上げのために筆を割かず、吉野に焦点を向けやすくなったかなと思っています。
ただ、取持や内女衒といった職分は、一般的な呼び名からちょっと外してあります。
今思うと、取持は素直に、年増として良かったかと反省している部分。
また江戸、吉原に見る遊郭制度からすると、ちょこちょこ制度を簡略してあるのも、せめて少しぐらい読みやすく出来ないものかと考えた末のことでした。
吉野にしても、禿のまま水揚げしてますものね(苦笑)
田舎遊郭だから、まっいいか。細かい資料見当たらないし~と開き直っているなんて、内緒ですよ。
そんな吉野の背を温かく見守っ下さいまして、深々と御礼申し上げます
ペコリ(o_ _)o))琴音&吉野ペコリ(o_ _)o))
編集済
第3話への応援コメント
ノリノリで全話に感想書きます! と叫んでおきながら、お時間が少々開きましたことをお詫びいたします。
大変読み応えのある、充実の第3話。
さっそく深読みを始めてまいりましょう。
冒頭、吉野の水揚げに際して届けられた支度品があまりにも美しいです。
見事なお品は、むろん八利の旦那が選ばれたのですよね。
工芸品を間近で見せられるごとく、ありありと眼裏に浮かびます。
着物は薄紅は納得のお色、手鞠の柄……この子があまりにも純粋で可愛らしいからでしょうか。
梅に桜と吉野を象徴する要素がきらめき、目を奪われる描写が続きます。
>鼈甲べっこうの櫛には羽を広げる瑞鳥が刻まれ、金粉が埋め込まれている。
これは…自由と健やかさの象徴でしょうか。
>漆塗の笄にさえ瑠璃の螺鈿らでんが一筋の光を跳ね返した。
この一文があまりにも美麗で、息を呑みました。
闇に沈むと見せかけた滑らかな漆の笄が、きらり…と一拍遅れて光を放つ動きまでが。
たったこの一文に凝縮され、活写されている。
永遠に読み返せる美の強度を湛えて、さながら生ける博物館。
なんとも眼福ですねえ…。
吉野の周囲は、通過儀礼を既に終えた姉様たち。
物慣れぬ妹分をからかいながら、見守るニュアンスのあたたかさ。
八利の旦那を含め町の旦那衆も、遊郭に咲いた無垢の花を愛でる様子。尾道の人情が偲ばれます。
この構造は繭――あるいは孵る前の卵を思わせます。
雛のまわりはやさしくあたたかいのに、中にいる雛自身はそれを知りません。
この温度差が二層構造となり、さらに吉野を揺さぶる。
ついに溢れた体内の水。
頭を撫でで温めてくれる隣の姉さんの、優しさに救われます。
東雲姉様も先輩格の姉様たちも、所作についてはいろいろと教えてくれます。
しかし、そのとき自分自身の身の上に何が起こるのかという実態は、伝聞では掴めません。
吉野は実感で学ぶタイプの誠実さが災いして、雲を掴むような心許ない気持ちになっているのでしょう。
内面の揺らめきがついに極大となり震えと変じたとき――八利の旦那は、この可憐なウサギちゃんを食べることができるのでしょうか。
吉野と一緒になって、ドキドキしてまいりました。
だがしかし….しかしですよ。
冒頭で、この一夜の成り行きがどうなったかが――実にさらりと種明かしされているのです。
大胆なことに!
にもかかわらず、読者はさり気なさのあまり読み流してしまうという、高等すぎるテクニックが施されています。
そのため、ほとんどネタバレ感がありません。
臨場感をもって、物語の進行を追うことができるのでした。
本作品は時間軸の進行にも大胆な仕掛けが施されており、1話目冒頭は24歳の吉野→禿時代の回想と吉野の成長→水揚げ(初回)と移ります。
私は時間軸の移動にまったく気づきませんでした。何度も読み返してようやく気づき、瞠目させられた次第です。
あまりにも文章の運びが滑らかで自然なので、つい息をするように読み進んでしまうのです。
>吉野が注いだ酒を一口で傾けると、盃を吉野に差し出した。
一挙動で盃を空ける所作が目に見える、粋な八利の旦那です。
両手に受けた盃へ旦那が酒を注ぐ。恐る恐る嘗めた酒の味は、すぐに馴染めそうもなかった。
その様子を見た旦那は笑って、盃を手に戻すと残りの酒を口に含んだ。
――天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ
――をとめの姿しばしとどめむ
そのまま旦那は羽織紐を解くこともなく、いつまでも歌遊びに興じた。
>これ…可愛らしい吉野さんを愛でる、独占観賞会ですよね。
いつまでも、をとめの姿を愛でていたい。
これが萩尾望都作品なら、神が出てきて美少女の時を止めているところです。
苦界の定め、女となるのは直ぐにでも。
齢十八の清らな月を、むざと汚したくない。
粋を通り越して、もはや抒情歌。
※可憐なウサギちゃんの吉野さん、この時十四歳でした! 誤読お詫び申しあげます。
正 齢十四の清らな月を、むざと汚したくない。
とすれば、さらに響きが良いですね♪
淡く波立つ十三夜 雲間の隙にぞ 覗き見るも佳き…
失礼しましたっ…シュタタタッ
これは私的な感慨にすぎませんが、浅い文脈においては欲望の暴走と愛の強度は混同されがちだと
感じております。
刺激の強度に比例し感覚も極大化すると規定する類型は、リアリズムを損なうもの。
自然さを損なわず、作中で深い交歓をおこなうためには如何なる配慮をすべきか。
自然さを志向される書き手にとっては、大変苦慮する箇所と存じます。
知り合ったばかりの人といきなり親しくなれない気がするのは、臆病なところのある人間だけの感想かもしれませんが。
豊かに深くつながるためには、お互いの心理と身体の条件が整っていることが前提条件としてある気がします。
受け手側(特に女性)には、安心していない相手に身体をゆだねられない、という神経システム上の構造もございます(ポリヴェーガル理論)。
無理に開くことで壊れる可能性を、身体は知っている。
純真な少女であれば、「わけがわからず、ひたすら怖い」となるのも無理からぬところ。
それを察し、無理強いしない八利の旦那の愛の純度が明らかになる名場面です。
本作品は性愛の前にまず、人間的信頼を得るという順序を慎重かつ丁寧に踏んでいます。
交歓に至るまでのプロセスを、ここまで丁寧に追う展開は大変稀なものとだ感じます。
繊細な受け手にとっても、安心して読むことのできる作品ではないでしょうか。
作者は針の目を通すような洞察をもって、吉野と八利の旦那の関係性を描いてくださった。
本作品の価値は、奇跡に近いものだと感じます。
これは現代ものの設定では、至難の業。ほぼ不可能ではないでしょうか。
>吉野が目を覚ましたのは明け方近くだった。いつのまにか八利の旦那の膝に頭を落として眠りこけてしまっていた。
吉野さん可愛すぎ事件簿!ですね(笑)
八利の旦那がうらやましくなってきました。
>「これで、よう肝が据わったじゃろ」
吉野の様子が気になって話を聞いていた東雲も気楽そうして笑った。
この一文で、引きのカメラに映っていた東雲姉様がかなり吉野を心配していたことがわかり、キュンとします。
筆を抑え、遠景でさらりと描写されているのに、キャラクターの心情が伝わってくる。
書かれていないものを見せる描写力が書き手にあり、筆力として豊かに溢れ出していることへの証左だと感じます。
秘すれば花…の極意。
今日びの主流である、全てを一様に詳らかに説明して見せる風潮とは対極にあります。
それゆえに、艶美の世界を描写しながらも、奥ゆかしさをたたえた清楚な主人公が確として成り立っているのだと感じます。
>尾道は町政による自治の色が濃い町であった。有力商家より選ばれる町役人は、柔和な物腰によらず矜持は硬い。そして商人である故に、したたかさを持つ。
>些か詭弁であると見透かす顔をした某であったが、以後の遊興は慎んであるべしと言うに留まった。
この前段、お役人に華美な祭りを執り行う言い訳がそれぞれ粋で、実に楽しいです。
江戸の気風とリズムを感じさせつつ、そのまま読んでも意味が通るほどわかりやすい。
その塩梅に、さすが短歌と俳句を詠まれる方の手腕であると唸ってしまうのでした。
人物の自然な造形に加え、歴史的背景や設定が緻密に組み込まれているので、読み手は安心して物語の世界に浸ることができます。
>こうして始まった吉野の年季も約束の十年が過ぎた。本当であれば、年季明けを迎えるはずであった。
何食わぬ顔で、十年後に飛ばされました。
この瞬間移動はどうやら手妻と見え、誰も気づかないのです(笑)。
我々読者は十年後に飛ばされ、冒頭の吉野さんがついに水揚げを迎える場面に直面します。
つまりこの、瞬間移動の手妻によってですね。
初花の儀式――いわゆる「白い結婚」と「赤い結婚」が重ね合わされている、ダブルミーニングの構図が完成するのです。
さながら、光琳の紅白梅図のごとく。
気づいた時、芯からゾッとしました。
なんたることじゃー。
なんたる高度な重ね技の、隠し絵じゃー!
そして、行われなかった儀式は、いずれ行われる筈の儀式の比重を無限に押し上げる…。
どーする八利の旦那。どーする吉野ちゃん…。
書き手の端くれとして、今後の進展を考え震撼とさせられました。
何度も読ませていただいているのですが、毎回新鮮な気持ちで感想を書いています。
深く読み込むたびに新たな発見があります。
驚嘆させられたり構図の見事さに見惚れたり、楽しみつつお勉強させていただいております。
拙文は、吉野さんの花代として捧げたものです。
特段わたくしめの©️を主張するようなこともないかなーと思っております。
抽出・編集・改変もご自由です。
すべて錦戸琴音さまの世界の一部ですから、どうぞお好きなようにお使いくださいませ。
全話の感想がそろったあかつきには、評論カテゴリにまとめてみたいような野望は…若干こざいます(笑)←あるんかい!
琴音さまは「わかりにくい」などとご謙遜されていらっしゃいますが…本作品の価値は、秘めたる奥ゆかしさにこそございます。
わかりやす過ぎる読み物に慣れた読者へ――読解の一助として、導線を引く役割などさせていただけましたら。
実に楽しそうです。
単なる野望です(笑)、ウフフ。
寝る前にふと、クレヨン社の「辻が花浪漫」という曲を思い出しました。
https://youtu.be/sK2hBJMrHI4
本作品の世界観に近いと感じます。
古い曲ですが、よろしければお聴きになってくださいませ。
【追伸】
超絶大事なことに、触れられていませんでした!
お詫びがてら、誤読および誤字の箇所に訂正と若干の加筆をいたしました。
(初水揚げ時の吉野さんの年齢…18歳→14歳ですよね。大変失礼いたしました!)
>そして、吉野の源氏名が披露された。
この時、吉野は吉野になった。
この作品の中で、もっとも重要な一文ではないでしょうか。
私はこの一文に痺れ、ウヒャっと飛びあがり、ぷるぷる震えて快哉を叫びました。
なぜって…?
カッコイイ!!
この一文により、それまでが読者が脳内に積み上げてきた主人公が、「吉野以前の事」であった事実を、さらりと提示されてしまうからなのです。
ガーン!
名前のない存在、吉野さん…。
彼女が育った故郷で呼ばれた名は、架空のまま席を持たず…淡い薄紅の揺らぎの影に溶け去ってしまったかのようです。
ああっ、凄い、凄過ぎる……。
幽玄に過ぎるではありませんか。
こんな大事なことを書きそびれていたなんて。
思い出してよかったです。
寛容なお心と温かいお返事に甘えさせていただき、喜んで4話の解読に向かおうと思います。
毎回大量の感想文になってしまい、琴音さまにご負担なのでは…と気になるところです。
お返事はどうか、お身体やご都合に支障のない範囲で。
お心は充分に頂いておりますので☆
ではまた。
作者からの返信
イエロウ 様
第3話も詳細にありがとうございます(感謝感涙)
日本書画になぞらえますと、本来、恐縮なのですが、光琳の紅白梅を読んだ瞬間、初見世で東雲と吉野が揃って舞う場面とも重ねてしまったじゃないですか(*ノωノ)
前回でも東山魁夷画伯のお名前が挙がってましたが、わたくしも好きなのですよ。
彩度の変えた同色を重ねることで出る質感。溜息が出ちゃいます。
しかし、時系列が吉野の回想式で分かりづらいわって所がですね。
拙作を公開した直後から、常々、申し訳ないと思っていた部分です。
もう少し、スマートな設計が出来なかったのかと自分を問い質してました。お詫びかねがね、回想を整理しておきます。
(筆者メモ)
回想1.吉野の遊郭入り~禿時代(吉野9歳頃~13歳)
回想2.吉野の水揚げ(14歳頃)
回想3.吉野の太夫昇格(18~19歳)
回想4.吉野の禿(駒菊)の一件(24歳)
を経て、現在に繋がるというね。
現在地どこよ!と言われて致し方ない設計。
ずびばぜん(すみません)
しれ~と行ったり来たりしてます。
けろっと、吉野の務めぶりを省略しちゃう魂胆丸出しです。
ちなみにですが、東雲を見送った年は吉野、16歳頃と設定しておりました。
そして、この吉野の水揚げは、最終部分との重ね合わせの他、対比にも使っており、割と後を引く回でもあります。
書き上げた私でも、この時系の面倒さから読まれないなと思っていた所、イエロウ様始め、皆様から好評いただけたことは、本当にありがたいことでした。
まずは御礼とお詫びを申し上げておこうと思います。
そして相変わらずの深読みが凄い!
多分、水揚げの前日の姉さん達の揶揄い辺りで、読み直された時に、ん?と引っかかったかもしれませんね(´艸`*)
匂わせるなと思ったのですが、それも面白いかな~と消さずに遣り過ごしちゃってます。支度品ではモデルになる参考画像を探したりと、映像的な描写に力を入れた回になっておりますね。
吉野の通過儀礼は形式的に終わりましたが、旦那の娘をみるような視線と、風流人の粋の重ね合わせが入り混じる夜になりました。旦那の粋と情、誠意の人間味を感じて頂けたことに諸手を上げた所です。
水揚げの翌日、吉野の周りから視点を引くと、東雲の他に取持の姐さんもこっそり話を聞いておりました。
こちらは、吉野の出初めへの心配と同時に、次の客の引き合わせも考えねばならぬ立場の人物なので、陰に隠しました。
はて、吉野ちゃん……一体誰が――というのは内緒にしておきましょう。
基本的カメラワークが吉野中心のために、尾道の雰囲気や町政について、触れづらかったのですけど。
奉行所の某に言い返す口上を書くのは、楽しかったです。
AIに批評させた時に、ガチの候口上に添削された時には笑いましたが、さくっと却下しましたw(使うかっ!でも言葉回しは興味深かったです)
この辺りを挿入出来たのは、山成屋の旦那のおかげでした。山成屋さん、ありがとー。
遊郭にあって、吉野を清楚な雰囲気に仕立てるのは、少々違和感あるかなと思ったのですが、吉野の慎ましさと所作に拘って育てた東雲のおかげで、他とは違う育てられ方をしたからという決着へ滑り込めたのではないかなと思っています。
こうして吉野を好意的に分析してもらえまして嬉しいです。
そして、素敵な曲のご紹介もありがとうございました。
仰るとおり、綺麗にイメージがハマりました♪
今回も誠にありがとうございました。
編集済
第2話への応援コメント
長文、ひらにご容赦をー。
文体と人物の気配についての感想で、物語の展開には触れておりませんですぅー。
> 吉野は玉結びの髪を解くと、櫛でゆっくりと梳き始める。火鉢の中で熾きた炭がちろりちろりと色めいていた。
燃える、赤くなる、仄めく、あたりにするところ… 作者の筆は典雅に閃く。
「色めいていた」と。 タイトな一文にさりげなく忍ばせた――これから艶な出来事があることへの伏線と予感。
色がある、燃えあがる、では明確な暗示になってしまう。
そこを、敢えて「めく」とぼかし、揺らめかせた。
春めく、仄めく――日本古来の文体から来る奥ゆかしさのニュアンス。
…しかも、「ちろりちろり」と見え隠れ。
そうなるかもしれないし、ならないかもしれないし…。
なりそうな気配。奥行き。忍ぶ心。
読者の心も、いっしょに揺らめく!
ダブル・トリプルミーニングの多重構造。
だいいち、なにより、意味がわかってもわからなくたって。
すらっと立つ美文を眺めるだけで、震えが来るぐらい美しいじゃありませんか(笑)。
いやいや、すごい。素晴らしい。
美文フェチなもんで、先に進もうとしても優雅に後ろ髪を引かれて、舞い戻ってきてしまいます。
> 吉野は安堵しながらも心中は複雑。手を突いて礼を述べるも、その手が微かに震えた。
出たっ、吉野さんの揺らめきスタイル。
感情の浅薄な流出を避けて一旦奥に沈めるので、水面に微細な漣が表れております。
だって。 遅い水揚げを迎える吉野はこのとき18歳。
28歳まで年季を続けなければならないことが、同じ段落内で示されております。気が遠くなるよぅ…。
禿時代は単なる修行として、ノーカンになっちゃうんですね。
>その手が微かに震えた。
水揚げが決まったことで生まれる、切なさ、誇らしさ、恐れ、気恥ずかしさ。
その、すべてが。
この、たった一文に凝縮して表されています。
陰影を内面密かに折り畳み、懐紙につつんでふところに入れ、深く静かに潜航させるひと。
魅惑の吉野さん、婉曲な魅惑の揺らめきスタイル!
干菓子みたいなひとですね。
丁寧に職人が拵えた和三盆を風雅な意匠の型に入れ、押し固めて作られる、淡い彩りの一口甘味。
ほろっとやさしく崩れて、さっと口中に広がり、あと味儚く引いてゆく。
生の感情を正面に立てず、ビジネスネームである「吉野」桜のごとく、淡くふわりとぼかすところなど。
まさに日本画の風情です。 失はれし美。
つまらん悪役なぞいらんのです。 偉い人には、それがわからんのです!(笑)
えーと、つまり。
吉野さんの内面を精緻な筆致で繊細に描写する本作品は、それ自体が日本画です。
東山魁夷画伯の、樹木を緻密に一本ずつ気配まるごと描き込む絵に、西洋画の大胆な陰影を入れようとは思わないはずです。
世界線が違うから。
陰影の解釈、視点をどこに置くか。
文化が違うので、同じ文脈では語れません。
吉野の奥ゆかしさをみていると、想起するのは木原敏江氏のマンガ『夢の碑』。
少し長いけれど引用しますね。
小学館刊行の20巻 (最終巻)105Pから
「いま 急速に魂すがれゆく この国の 懐かしい美しい 古事のかけらを拾い集めて 碑に記そう」
――中略――
「追憶の碑は 求め 尋ねあてる人を待って いつまでも 失われた夢の底に 沈んでいる………」
このネームを読んだとき、泣けてしかたがなかったのです。 日本古来の風雅を描ける方が、どんどんいなくなってしまうと思って。
わたしは錦戸琴音さまの作品に巡り会ったとき、木原敏江氏の作品に流れる風雅の風を感じたのです。
>「わざに、この東雲を悪者になさいますのや。いつもは名月を外して、十六夜にお見えになるのは、どなた様でしたやら」
ちょっと怒ってる、東雲姐様のぷくっとふくれたお顔がかわいい回。
> これに東雲はわざとらしく顔を白けさせて、ゆるりと首を傾げただけであった。
敢えて素知らぬふりを装いつつ、東雲姐様の心に落ちる陰影の色が揺らめいています。
ツンデレ猫ちゃんスタイルの、高度なテクニックの澄まし顔。
これ、あなたにしかできませんからー! うちの子にほしいー! かわいいー!
いや、マジで。
心映えを愛でる文化の名花。
ここらで東雲姐様が「梅」を象徴するものだと気づき始め、背中がゾクリ。
花の兄――梅。紅白くっきり、一輪できりりと咲く。
花の弟――桜。紅白の間に満ちる、気配の色。たおやかに芯がないように見せて、その実は。
相手の呼吸しだいで色味を変える、変幻自在の使い手なのだ。
吉野さーん!
> その喩えが吉野には難しく、褒められたかどうかさえ分からない。
わからないことを、素直にわからないといえる美点を、八利の旦那は見抜いています。
これから伸びる子って意味ですよね。現実を直視することが成長の起点ですもの。
そのうえで、輝きはじめた十三夜の可憐さ。
すでにその目が、優しく光をたたえて吉野を愛しはじめている…! キャー!(笑)
饒舌になってしまうのは愛が溢れて止まらないから!(笑)
清しさに映る、吉野の個性。
ただ若いだけではない。
素直なだけではない。
それだけなら、素朴な山里から出てきた多くの少女たちがこの遊里に流れ込んでいるのだから。
旦那の目は容貌や話術といった表層を通り抜け、身体の奥に宿る精神性を見る。
吉野は口が重い子だけれど、そこを美点と見做している。
だって商売人だもの。
大事なお客様の情報を、ペラペラしゃべられたら堪らない。
さらに高度な粋人のテク。
吉野を直接褒めず、茶を通すことで距離と東雲姉様の面目を保っている。
酒なら無粋に乱れるところ、茶なら無限に語りて崩れを知らず。粋で至高のコミニュケーションツール。
どれどれ、私もここらで茶を一服。
抹茶は立てぬも、京のかぶせ茶玉露と参りましょうか。
虎屋のお雛様羊羹もあるよ。
今度、干菓子を取り寄せておきましょうね。
吉野さんの成長を愛でながら頂くのよ!(笑)
作者からの返信
イエロウ 様
虎屋の羊羹が頂けるって聞いてきました♪
もうイエロウ様の愛が凄い。
ここまで分析されますと、私は幸せですよ。
なので、ついでに虎屋のどら焼き召し上がります?
ドウゾ( *´꒳`*)っᐝ●
―火鉢の中で熾きた炭がちろりちろりと色めいていた。
もう仰るとおり、なんでもなく火鉢で温まっている吉野ですけど、もう仰るとおり。
八利の旦那がお内儀まで呼ぶ座敷で起こる出来事の予告を滲ませてました。そして、物語全体を象徴する一文になっているなと改めて思います。
いや~この読みの深さは、さすが詩人の目によるものだと尊敬ですよ。
吉野については、余り感情を露出させないよう、特に前半では気を付けていました。
なので、あまりに人間性が希薄だとよくAIに怒られていましたね。
「手を震わした」という一文は、うすーく忍ばせてみた場所でした。
振り返れば、挿入してよかったなと思っています。
八利の旦那は、人をよく見る人物ですね。その粋の加減についての解説は、これ以上私が語る必要がないくらいです。
ほんと、口が軽いと、うかうかと話も出来ませんからね。商売人としてはw
吉野の褒め方は回りくどいといえばそうですが、「そろそろ水揚げに応じてもええよ」という信号でもあり、それぞれの顔を立てる塩梅を、ちょっと悩みました。
しかも、当初「爾今の光明」としていたので、仏教的で大袈裟だとAIにボコボコにされたところです。
解釈についてはご指摘とおり。
吉野の成長を見守り、この先も更に磨かれていくという意味を置くには「爾今」以外見つからなかったんですよねw
ここらへんから、AIの意見を聞いているようで聞かない、華麗なスルースキルを身につけた気がしています<(`^´)>エッヘン
褒め言葉の説明をどう入れるかと悩んだ所でしたが、おかげで吉野や八利の旦那の人物像に深みが出たみたいで、安心いたしました。
そして、今回の東雲。そのツンデレっぷりは私も気に入ってます。
ツッコミにも手を抜かない東雲が好きwしかも速攻(客が相手なんだけどなぁ)
こういうところが魅力なんでしょうね。
結構、東雲は人気者です。
えっとー、こうして感想を通した後にレビューの書き換えをなさるおつもりでしたね。もし上書きなさるときにはですね。
最後の一文に、コメントにてイエロウ様解説付きって一文を添えるのはいかが?
第10話への応援コメント
こんばんは!
読了いたしました。
この季節に、この作品を拝読できましたことを嬉しく思います。
吉野は、梅の木や花にもずっと見守られていたのでしょうか。
そのようなことを思いました。
錦戸様は、心の隅々まで満たされるような、そのくらい深くて濃い作品を描かれること、とても尊敬しております。
素晴らしい作品をありがとうございました!🙂↕️
作者からの返信
蒼衣 様
最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。
梅の花を装いつづけてきた吉野は、同時に花達に支えられてきたのでしょうね。
そして、話の続きでも、きっと梅に見守られるのだろうなと、はっといたしました。
素敵な感想をいただけて、嬉しかったです。
こちらこそ、ありがとうございました。
編集済
第1話への応援コメント
錦戸琴音さま、こんばんは。
まずは謝らせてくださいませ。
わたしは間抜けなことに、大好きなこの作品に「しっかり感想入りレビューを書いたものだ!」と固く思い込んでおりました……。
確認したところ、実にざっくりレビューしか書いておらず、
しかも違う作品に「梅香の茶」の感想を書いたりと、非常にアホなことをいたしておりました。反省……。
私の身体の中では、「梅香の茶」が未だ薫り続けているのです。
まだまだ感想が溢れてきそうなので、一話ずつ応援コメントを書いていこうと思いました。
ご迷惑でしたら、いいところで「ストーップ!!」とおっしゃってください(笑)。
最後に総括として、レビューを詳しいものに書き直してからフィニッシュするつもりでおります。
>安芸の国外れにある尾道の町でも、廻米ばかりが湊を出入りして、町や周辺の村に口米は回らず、その値が吊り上がった。麦や稗、粟まで高値がつくようになっては、村にとって大きな打撃になった。
僅かな金で穀物を手にいれようとすれば、すぐに金の底も尽きた。雑穀さえ手に入らないのであれば、やがて吉野の身内も村の衆も痩せさらばえた。かろうじて田畑を持つ農民は土地を手放し、小作人に身を落として凌ぐも、その財さえ持たぬ者達は飢えに耐え、食うものを探して回った。
吉野が吉野になる前(!)の、名もなき暮らしが生き生きと活写されて、眼裏に浮かびます。
資料を読みこんでから、当時の庶民の嘆声が聞こえる精度に高めて書かれているから、もう映画みたい!
>雑穀さえ手に入らないのであれば、やがて吉野の身内も村の衆も痩せさらばえた。
この、たった一行に煎じ詰めた凝縮の見事なこと!
詩作を学ぶ者として、口を開けて見惚れるしかない。
短歌と俳句に磨かれた感性と、切り口の見事さに唸りました。
東雲姐様のあたたかくも厳しき薫陶に、素直に詫びる吉野。これだけで、芯のある子だとわかります。
自らに慢心ありと認め、芸を磨く礎にできる吉野。そして東雲姐様のカッコ良さ!
>「御前の恥は、わいの恥じゃ」
この言を聞いた吉野が顔を上げると、東雲は小さく鼻を鳴らして目を細めた。
「いずれ、雪そそいでやろうじゃないか」
そう言って東雲は障子窓を開けた。障子の隙間を抜けて、座敷に留まる香が流れ出て行く。
重くなった空気を、さりげなく入れ替える東雲姐様。
姐様の心意気! もう、絶対好きになる。
頂き物の金平糖を、吉野にもくださったんですね。二人で同じ甘さを分け合ったんですね。かーわいい…。
見事な圧縮で描かれているこのシーン、二人がまたうら若い少女の身なのだ、と気づいてはっとさせられます。
彼女たちは身一つで、思うままにならぬ過酷な境遇と闘い始めているのですよね。
ここまでが、24歳の吉野の回想として、一息に書かれています。
いいえ、作者の琴音様は非常なる胆力と筆捌きでもって、コツコツとこのうつくしい宝玉を磨かれたに相違ありません。
読む側は、息をするようにスイスイと読んでしまうのです。
呼吸のようなリズムとなめらかさ。
アーッ、読み終わりたくない! でも先を読みたい!!
いえいえ大丈夫です。
何度読んでも感銘は失せず、新たな感想が湧き出してきます。
素晴らしいですね。
カクヨムに来て、この作品に出会えた幸運に祝杯をあげるのです。ウェーイ!!
作者からの返信
イエロウ 様
あら。とうとう気付かれてしまいましたのね。
少し、レビューが交錯している感じがしていたのですが、
よほど、この話を気に入って下さったのかなと嬉しかったですよ。
なので、まぁ、いいかなと思ってて。意地悪でしたかね(;^ω^)
でも、ここまで詳細な感想を頂けて、そっとしておいて良かったと思ってしまう程ありがたいお言葉ばかりです。
東雲は知性が高かったこともあるでしょうけど、どこか誇り高いところを持たせたので、結構かっこいい女性になってしまいました。
吉野は反対に素直な子として、対比させていましたから
その分、東雲の下では従順にならざるを得なかったですね。
仰るとおり、この時の二人はまだ少女といえる年頃だったんです。
一応、東雲は二十は越えてはいましたけどね。それでもやたら大人っぽいです。
細かく見ると、粗がのこっていたりするので、この先も詳細分析が続くと思えば震えが来ます(笑)
感想を読ませて頂く方は、面白いですから、思いのたけをどうぞ!
と、申し上げたい所。
ただ、ご無理はなさらないで、飽きたら放り出していいですよ。
本当にありがとうございました。
第10話への応援コメント
ブラボー。わたくしもスタンディンオベーションで吉野改め「お遥」を見送りたいと思います。
吉っさんも、女房に迫られてずいぶんな散財でしたね!
だけど、精神生活の中にしか幸せはないもの。失ったのは金だけじゃないか、旦那!
すばらしい作品でした。ストーリー、キャラ造形、文章力、表現力、花街を研究した造り込み、歌まで、すべて高レベルでバランスしていました。
これは、是非、文芸の新人賞に出してください。わたくしが選考委員なら必ず一票入れます! いやマジで。
頼まれなくてもレビューコメント出しますとも!
まあ、カクヨムじゃ流行らないとは思いますけど、皆に読んで欲しい。
そう思える作品でした。
作者からの返信
小田島匠 様
縦断読了ありがとうございます!!
そうですとも。旦那はいっぱい稼いで、いっぱい使っただけです(`・ω・´)キリッ
八利のお家の最強は、鶴さんですw
度量のある旦那も、腹の座った女房がいるおかげというものですわw
拙作がここまで読んでもらえると思っていなかったので、私は今でも驚いているのですよ。
カクヨム向けではないのに、ぬけぬけと出しちゃいましたからね。
あ、でも、一生懸命書いたので、ご評価はありがたく頂戴します。
第9話への応援コメント
そうだよな、オレの業界でも、顧問会社の社長が代替わりすると、若社長の贔屓の弁護士に変わるもんな。。って思ってたら、身請けか!
吉野も快く受けて、お話はハッピーエンドに! 東雲の二の舞にはならずに済みそうですね。
作者からの返信
小田島匠 様
ふわぁ。現代にも通じる話だったぁ!
そうですとも♪旦那は最後まで面倒をみちゃうんです(^▽^)/
尾道の史実である豪商が破産したという理由に、妾を家に入れてしまって、正妻との関係が崩れてしまったと息子に詫び状を書いた話があるんです。
それで、吉野ちゃんも身請けしちゃおうと決めました。
もちろん、八利は潰れません。なんなら、孫の代までちゃんと続いておりますのよ(´艸`*)
第8話への応援コメント
おお、八利の旦那。かっこいい。ほんとの男はこれだよ!
財力、度量、顔はわからんが、、ま、それはどうでもよくて、酸いも甘いもかぎ分けた、魅力的な男ですなあ。
錦戸さんの描きかたがいいんですよ。ほんと。
作者からの返信
小田島匠 様
八利の旦那が主役を張りそうで、吉野が食われないようにと大変でした。準主役なんですけどね。
町役の町年寄同格になれたって具合から、財力は町の五指から七指あたりと見立てています。ええ、町役も財力次第って所が田舎はありまして^^;
何かあれば、町に藩にと使う先が多いものですから(><。)
天明の飢饉で、救護米を配布する手配に奮闘した経緯から、八利の旦那が名誉職的に同格に就きまして、その時、町役でもなかった灯屋の先代が自主的に協力していたんですな。
それで灯屋が問屋株を買うことが出来たという話なんかもあったのですが、あまりに冗長な話で泣く泣く削りました。
顔は……倅が頑固者な顔しているので、多分、石地蔵さんみたいな顔しているかもしれませんよ。度量については、これこのとおりです。
第6話への応援コメント
おー、八利の旦那。ついに思いを遂げたか。。本当に中身も充実して、心身ともに美しく完成するのを待っていたのか。
わたくし「八利の旦那、もしかして花街の風流を愛でるだけの、男色家なのか?」などと、はなはだしい誤解をしておりました。愚か者です。ほんとすんませんw
作者からの返信
小田島匠 様
おお、ありがとうございます。
実際、愛でるだけを粋とする遊びもあったとか、読みはいたしましたけども。
八利の旦那への疑念は出てくる気がしていましたよ。
だって、私が書きながら、「旦那・・・大丈夫かい」と心配になりましたものw
一応、吉野じゃない別の姉様と遊んでいたり(旦那、ここが田舎でよかったよ)、倅がいたりするので、まぁ大丈夫じゃないかなとかw
それに吉野の歳頃は、嫁や娘と変わらんのですよ(;'∀')
という訳で、辛抱強いってことにしてあげてくださいw
編集済
第10話への応援コメント
@yollさん、青山 翠雲さんのレビューからうがいました。
私、落語で、柳田格之進という話が好きです。
無実の罪で浪人となった清廉な武士・柳田格之進。困窮の果てに娘が父を思い自ら廓に身を落とすも、後に無実が明らかとなり、潔白と父娘の情の深さが浮かび上がる人情噺です。
格之進の娘と同じように、親の身を助ける為に廓に身を捧げた吉野が、最後、八利の旦那に身請けされ、越えれなかった辻を越えるシーンは感極まるものがありました。
東雲の姿には栄枯盛衰、諸行無常も感じましたが、東雲に受けた恩を、自身の禿、駒菊に繋ぎ、東雲の残した文と共に、敷居を出る流れも素晴らしかったです。
文豪の名作を読み切った充実感でした。
素晴らしい物語を読ませていただき、ありがとうございました。
作者からの返信
沈黙のおじさん 様
両先生のご紹介より、ご通読くださいまして、誠にありがとうございました。
過分なお言葉を頂戴し、ついぞ身を震わせてしまいましたが、辻を越える吉野に温かい眼差しを向けていただけましたこと、誠に感無量です。
また落語「柳田格之進」のご紹介をありがとうございます。
ざっくりとWikipediaであらすじを読みましたところ、胸を打つような人情噺ですね。
配信サイトで古今亭志ん朝師匠の高座を見つけましたから、早速、視聴してみようと思います。
第10話への応援コメント
読了致しました。
本当に素晴らしい作品でした。読ませて頂きありがとうございました。
全ての物事に意味があり、一つの所に落ち着いた最後のシーンには、もう嫉妬しちゃいました!(笑)
閾を飛び越える時は一人でしたが、辻を抜ける際には二人と言うのがもう何とも。
名前を呼び合う事すら自由ではなかった吉野が、生まれ変わる瞬間を見ることが出来て本当に満足です。
そしてあの八利の旦那も、家を守ってきてくれた奥様には頭が上がらないようですね。可愛い姿も見れて思わず笑ってしまいました。
色々と書きたい気持ちもありますが、長くなってしまいそうなので一言だけにしてきます。
末永くお幸せに!
作者からの返信
@yoll 様
最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました。
嫉妬なさっただなんて(*ノ▽ノ)キャ 恐れ多いお言葉ですわ。
話がずっと重たかったですからね。最後に軽く仕上げたくて(笑)
八利の旦那をかっこいいだけで終わらやしませんw
この家で最強なのは、鶴さんですもの。
心配なさらないで、お遙も穏やかに過ごしておりますから。
実をいうと本作は、未完作の先史的エピソードだったりします。十万字まで書いたまではいいのですが、色々と見直していた時に浮かんだのがこの話なのです。
長編になってしまってしまうと、書き慣れていないせいで散漫としてしまいましてね。
もともと単調な筆致なのに、AIの指摘で修正していたら、さらに平坦な文章になってしまって、悶々と悩みました。
@yoll様の御作『夜勤明けにChatGPTと戦ったらボコボコにされた件について~最後は誉めてくれたよ~』
あのまんまの悲劇を繰り返しましたもの。
@yollも仰られたように、おかげでいくらかの筆力を得られたとも思います。いい勉強になりました。
作品として仕上げられますのに、AIの評論へのつっこみが面白くて仕方なく、でも批評の痛さも共感できて、お見事でした。
第6話への応援コメント
桜より梅。その言葉に思わず頷いてしまいました。
桜の様に連なるのではなく、只一輪佇むように咲く梅の良さ。
太夫となる筈の吉野であれば、八重の紅梅であっても良いとは思うのですが、頭に浮かぶのは白梅の野梅。随分と香りが良さそうです。
桜の様に儚くも散ってしまった東雲の分を、力強く根を張る梅の様に、生き抜て欲しいと思いました。
漸く読み進められて嬉しい限りです。
作者からの返信
@yoll 様
あぁぁ。もう、ありがとうございます。
今、とても嬉しいのです。
この時、吉野が思い浮かべた梅の情景は、まさに野辺の白梅をイメージしていたのです。
雪被る白梅……花の見分けが難しいなぁと、どうも描写に向かず。
泣く泣く控えた情景を思い浮かべてくださって、感無量です。
御作『ふじの湯へようこそ。三助とペンキ絵師の日常。』
季節は真反対なんですけどね。向日葵の絵を添えるペンキ絵師さんの横顔はきっと微笑みながら、ちょっぴり憎たらしそうにしてたりと勝手な想像をしちゃいました。
山に向かって揺れる向日葵の景色だといいなぁと思ったのですけどね。
それじゃ、画にならないかと溜息を吐いてしまいました。
じれったくて包容力のある素敵なお話、最後まで楽しませて頂きます。
第5話への応援コメント
おお、そうだったのか!? 八利の旦那、わたくしも首を傾げますぞ!
一体どういう意図があるのやら。
まあ、吉野なら年季があけてもいくらも稼ぎ口がありそうです。
太夫昇進も期待します。
しかし濃厚すぎて、一話ずつしか読めません!
また来ます。
作者からの返信
おお!お越しくださいまして、ありがとうございます。
そ、そうですね……八利の旦那も存外に、
初心な所があったのかもしれませんねぇ(;'∀')
読み進められた先に……、はたと、殴られそうな気がしてきました。
いや、そんなことはなさらない。
御作『人生は爆発だ! (カクコン11用シングルカット版)』
人の最終遺物を「人生」と表現した上品な人だもの。
はい、信じています|彡.。.:*・゜サッ!!
第10話への応援コメント
宮本研の「からゆきさん」を思い出しました。
彼女たちは、日露戦争時のシンガポールの女性たちでしたが、
本物の恋や、女衒ゆえの運命に翻弄される物語でした。
彼女たちは、いつか世帯を持って日本に帰ることを夢みましたが、
吉野はそれを叶えたのですな……。
国も時代も違いますが。
あっという間に読み切ってしまいました。
太夫という人生。商家との関係や、
心に残り続け、鑑にもなれば楔にもなった東雲。
そして後輩たち。
年末年始で一つの人生を見た気がします。
舞台を去りゆく吉野、いや、お遥に心から拍手を。
ありがとう存じます。
作者からの返信
SB亭moya 様
最後まで、吉野を見守ってくださいまして、ありがとうございました。
例え地方であっても、遊郭街に暮らす遊女達は自由を制限され、それでも尚、家族身内のために懸命に生きていたと思うのです。
それはSB亭moya様がご指摘くださった獄というものであったでありましょう。
この中を、吉野も生き抜いて、ようやく在るべき所に辿りつけました。
お読みになった段階で、恋でも愛でもないとお示しくださった文を拝見して、どきっといたしました(笑)
気持ちのいい切り込みでしたね♪
最後に改めて、吉野へ向けて下さった共感と、素晴らしいレビューに御礼申し上げます。
ありがとうございました。
編集済
第4話への応援コメント
ああ、東雲姉様が世を去ってしまった。。そして吉野にも新たな厄災が。。
錦戸さん、このお話しは、ヒューマンドラマとして抜群の出来栄えです。尊敬します。誰の紹介か覚えてませんが、巡り会えて良かったです。
また来ます。
作者からの返信
小田島匠 様
ありがとうございます。
何作か小田島先生の作品を何作か拝読いたしておりました所、初めてコメントを残していただいたときには、びっくりいたしました。
お褒めくださって光栄です。
御作『エリトニー興亡記 ~美しき王妃の血脈と、駆け抜けた赤と青の双星~(カクコン11用統合版)』
ファンタジーというには、重厚な作りですね。思いのほか、読み進めるために力を使います。
それだけ、作りこまれた世界観は、ファンタジーを越えて叙事詩だなと。
しかも、リアリティも高い。メラニー女王が世を去る場面などは、歴史書を読む感覚でいました。
こつこつと読ませて頂きますね。
第10話への応援コメント
おぉ!囲碁盤が出てきた!それに香木も!
石畳の冷え冷えとした描写がとても上手いなぁ、と感心いたしました。
勉強になります。
作者からの返信
青山 翠雲 様
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
お褒めくださって、恐縮です。
こちらこそ、翠雲さんの作品では勉強させていただいております。
只今、拝読しております、御作『スー』
あのスー三部作の内容を精選と書き下ろされ、決して翠雲さんの仰るFun & Interestingを外されていない。
見事な作品です。(絶対に真似できない)
元の作品を読んだ側といたしましては、こちらを切欠に元作品も楽しんでほしいなぁと思ってしまいますね(^ー^* )フフ♪
第10話への応援コメント
こんばんは。終の字を見て「ほぅ」と息を漏らした、みたいな感じになりました。私このようなジャンルのお話を読む機会がほとんど無く、でも錦戸さまの書かれるものに興味を惹かれ読み始めたんです。
読みなれない文章というのがありましたので、やはり目が慣れるのにも時間がかかりました。でも内容はしっかりと読み取れるので、ゆっくりでしたが物語に入り込めていったのだと思います。
最後のこのお話は今までに登場された人物、エピソードそれぞれが上手く締められていて、とてもわかりやすかったですし納得感を覚えました。昔はこういったことがどこかであったんだろうなとかも考えちゃったり。
描写表現が豊かですよね。短いのにとても伝わってくるのですごいなと。そこでふと思ったのが詩を数多く詠まれているのがとっても活かされているのかなぁとか思ったりしました。ここぞという所でリズムがよくて美しい文章だと感じたんです。
ラストの画もほんとうに素敵です。
読ませて頂き有難うございました。もうすぐ年末間近ですね、どうぞお身体お気をつけてお過ごしくださいませ。長文失礼いたしました。
作者からの返信
まきむら 唯人 様
あぁぁ、なんとご丁寧な感想を下さいまして、誠にありがとうございます。
本作は勿論、想像でのお話ではございますが、もしかしたらこんな話があったかもと思って、時代を遡ってくださればとも、どこかで期待しておりました。
まさに、これを仰ってくださったので、すごく嬉しいです。
地方の時代物として、その背景を十分に差し込みきれず、読みづらい話を丹念に読んで頂けて、感激いたします。
よく言えば行間が広いと言う言い方も、単に読者の感性を頼りにしているとも言えて、こちらの方こそ、まきむら様の感性と読解力に、ただただ脱帽しきりです。
まきむら様のこうした才が、作品にしっかり投影されておいでと感じられます。
御作『それは人間と同期する ~例えば貴方のスマホの場合について』
初めてモキュメンタリーに挑戦されたとのこと。ふわっとした噂や憶測を絡ませながら、焦点への注目をそらさせない技量は難しいと思うのです。これを巧みに世界観の中に織り込まれて、ストーリーと共に引き込まれてしまいました。
これからも楽しみにしております。
その前に、もうすぐクリスマスですね。
素敵な一日をお過ごしくださいませ☆彡
第1話への応援コメント
錦戸さん。これは素晴らしいです。ここまで完成度の高いヒューマンドラマに、カクヨムでお目にかかれるとは、驚きです。
人の情念が複雑に交差し、読み進めるのにパワーを要するので、WEB小説で流行る作風ではないですが、確かなポテンシャルと実力、丁寧な書き込みを感じ取れました。
感服致しました。
一話で星入れると、運営さまが怖いので、また来ます。
作者からの返信
小田島匠 様
ありがとうございます♪
小田島様から、過分なお言葉を頂けましたこと、喜ばしいやら、恐縮するやら、もうパニックです。
カクヨムコンとか、無縁と開き直って書きましたので、読みづらいだろうなと^^;)
それでも頑張ったつもりでおりますので、これからの励みにいたしますね。
人の情念といえば、小田島様の作品にあるこれが、どれを読んでも圧巻です。
人物の奥深くから溢れ出す心情描写には、思わず息を呑んでしまいました。
逆立ちしても、真似が出来そうにありませんので、引き続きお伺いさせて頂きますね。
こちらにも、またお立ち寄りくださいませ。
第6話への応援コメント
古風な雰囲気と細かい描写が巧みで、独特の味を楽しめる印象を受けます。古い言葉遣いを見やすく整合性を持ってやるのって難しいと思うんですよ、作者様の技量に感服いたします。これからも読ませていただきますね。
作者からの返信
ここグラ 様
❤にお星様、ありがとうございます。
本当のことを申し上げれば、硬質な文調が書く技量がなく、それでも時代の雰囲気をお伝え出来たらと苦心して紡いでみました。
独特の味とご評価いただけましたことは、何よりも嬉しいお言葉です。
後4話を残す所でございますが、最後までお楽しみくだされば、まさに冥利に尽きます。
御作『冥恐の死神伝説殺人事件~瞬間移動を使い、乙女を狩る怪物~』
好評のご様子にも納得いたします面白さです。犯人は人なのか、非ざるものかとワクワクして拝読しております。
通例ですと最終話を拝読して、星を入れさせて頂こうと思う主義なのですが、もう気分は☆☆☆です。
これからも楽しみにして読ませていただきます♪
編集済
第6話への応援コメント
きょーん! ときめきの第6話。続けて読み解きしちゃいますね。
>吉野も寄合の座席で幾度か、顔を合わせたことのある客だった。確かに艶本にありそうな隠語を囁くような人物で、吉野にしても好ましい客とは言い難かった。その上、寝入った女の唇を盗り損ねたと話せる口の軽さを耳にすれば、呆れてものも言えない。
出たっ、若気の至りの若旦那。手が早く軽口。
語らずの愛を心で密かに守り育てる、八利の旦那との好対比ですね。
>「姐さん、お通しして。けんど、着物についた香を払わなならんし、部屋の支度をする間は欲しいですけぇ。もう少し、繋いどいてもらえんですかね」
そう応えた吉野の声は凛として躊躇いがない。
取持はその声にかつての東雲を思わせる息遣いを感じた。
ぽやぽやと雛めいて可愛らしかった、吉野さんの成長が感じられてうれしい場面です。
取持の姐さん…有能で厳しい人だから。
この評価には思わずガッツポーズですねえ。よかったァ。
>吉野に見送られて物惜しそうに別れた客が、朝ぼらけの石畳を去っていった。
最少の筆さばきで、し損じた若旦那の背中をややとぼけた味わいで。軽薄ですがちょっと憎めない。
>案の定、客は唇を欲しがる素振りを見せた。吉野は酒を多めに飲ませ、枕話で客が覚えた洒落本の話を語らせるうちに寝入らせた。
夜中に客が目を覚ませば、寝たふりで躱し、末には起こされた態を装って身を起こした。更に機嫌をとり、また酒を勧めると、客は甘い倦怠と酒の余韻ですぐに眠りに落ちた。
吉野さんカッコいい! お坊っちゃまの悪だくみを華麗に体躱し。
部屋に戻ってあくびをするあたり、太夫としての貫禄を感じます。
そりゃー誰も起こしに来られないでしょう。敢闘賞を差し上げたい。
>吉野の応えに不埒な真似をされなかったのかと、改めて問うたのはお内儀だった。吉野が体を揺すって頷くと、二人の顔に安堵の色が映えた。
>「よっしゃ。これで、御前さんが太夫に一歩近こうなった。よお、やったの」
>抱主は破顔した。新しい太夫へ推される別見世の候補には、批判的な評判が立ってしまった。
>対して、吉野は落ち度を見せず、騒ぎを起こさなかっただけに批判の声はあがるまい。その分、吉野には有利になったと思われた。
評判を落とした別見世の太夫候補は気の毒なことですが、遊女としての定番的な振る舞い…いわゆるテンプレに乗っ取ったところを若旦那に悪用されたと思われます。
片や吉野さんはテンプレ離脱の女神ですから、無位の構えの返し技。
若旦那の人柄と稚さ、酔いを見抜いての各人対応。
型がないゆえ、客のひとりひとりに誠実に対応している手づくりの、真心の人・吉野さん。
そりゃもう、大人気ですよ。
6夜もお座敷に通っちゃってるもん、私も(笑)。
>小さな紙片に一文だけ。それは吉野の父からの文であった。
>――有りがたき事也
>この時ばかりの吉野は泣こうとも思わず、涙を溢した。
>その文に認められた字は、余りにたどたどしく、見様見真似でようように書いた字だと分かる。吉野の父は、いくらかの字が読める程度で、書き慣れているのは、己の名くらいであろう。
ここ、泣きました。
吉野さんの身内は、皆字を習うゆとりもなく暮らしに追われるばかり。
同じ村に住み、子どものうちは言葉を交わせても、幼馴染みの庄屋どん一家とは階層が違うのです。
吉野さんの身内が人品佳き人々だけに、交流はあった。
しかし、それゆえの格差が胸をえぐります。
もう少しだけ学があれば、浮上の機会もあろうものを。
そんなおっ父が、誰かに(息子さんとかに?)教わりつつ、可愛い娘…一家を生かすため苦界に売り渡した悔恨を、上回る感謝をしたためてくる。
…泣く、もう絶対泣く。
私の心は清められました。
ありがとう、おっ父。ありがとう吉野さん。
私は小人ぐらいに小さくなり、幼い吉野さんの中で麗らかな梅の里で遊ぶことができましたよ。
>吉野は縮緬の手触りを指先で撫でて、花の刺繍をひとつひとつなぞってみる。梅が咲く枝に鶯の遊ぶ姿は錦絵さながらで、吉野も溜息を漏らした。
八利の旦那のお土産が美しく可愛い。喜ぶ吉野さんも可愛い、眼福の一節。
鳥は幸福のモチーフ、何やら予感がして参りますね。
>錨を下ろした船主らは、潮の香から一時ひととき離れて、略式で差し出される茶に堅苦しさを解いた。吉野の焚く香に梅の姿を思い立たせ、茶の微かな甘さを伴う土の香りによって、陸おかにある安らぎを得ると喜んでいた。
泥くささを排した、懐かしくも甘い土の香りが立ちのぼってきます。
脚気など、船乗り特有の病に茶のビタミンCが効くはずです。現代と違い、野菜がとれませんものね。
ほっとする上に、身体が欲している。
気取らず、自然と人をくつろがせる吉野さんの茶は、東雲さんの厳しさを持つ茶芸を受け継ぎ、商人たちのスタンダードになりつつあるようです。
やり手の商人たちをほっとさせてくれる、粋な和みカフェですね。
>こうした流れにあって、茶芸を持つ吉野の柔軟さは、風に吹かれても咲く花のようであった。吉野、それは桜を想起させる。八利の旦那は太夫昇格の祝いとするものが閃いた。
さらっと書かれていますが…超高難度の大技が実施されておりますぞ。
主役を花にたとえ、陳腐化する例の多きを見よ。ゾッ…
真実内側から「花」そのものの振る舞いをする人格を描けていないと、大嘘祭りになってしまう。
乾坤一擲の大技です!
成立してる!!
何ごともなかったかように、さらりと流している。立ち去って次へ。
キャー! 本物の風格って凄い。
>「桜では気に入らんか」と不思議がる八利の旦那に、吉野は梅文様を望んだ。
>「大和の吉野に桜が咲くというのでしたら、この吉野は玉の浦に梅を咲かせる」
>八利の旦那がほうと声を漏らした。
来たぁ!!
春爛漫、満開の花。
桜でなく、梅でしたかぁ。
こいつは一本とられましたわい。
太夫として立つ吉野さんの、しなやかで凛とした台詞に降参!
桜はどうかと問われて、反射的に応じそうになる柔らかさの後、東雲さんを思い出してキリリとする。
この流れに、胸が熱くなりますわ。
東雲太夫を継いだ、吉野太夫の真髄ですね。
>八利の旦那が膝行して、吉野と膝を向き合わせる。
>「梅か。そうじゃな。吉野には、きっとよお似合う」と言って吉野の手を取ると、そのまま胸の内に引き寄せた。
来た!! とうとう合図がきたのです。
時よ満ち、永遠なれ。
十三夜に震えていた少女は、今や豊かに愛の土壌を耕して。
満開の花枝を、美しく広げているではありませんか。
苦界の掟も生家の窮乏も、吉野から人を信じる心を奪うことはできなかったのであります。
>腕の中で透き通って黒く艶めいた瞳が、旦那を見上げて見つめた。その真っすぐな瞳に旦那が囁いた。
>「吉野は良い女になった」
溢れる愛が、その瞳から伝わった瞬間でした。
ただの褒め言葉ではありません。
愛の勝利です。祝福です。
商品扱いされることで撓められがちな女性性が、健やかに守られたのだという確信です。
それは亡き東雲さんとの声なき誓いであり、共闘であり、結願でした。
良かったね、八利の旦那。
あなたは前例のない苦闘に打ち勝って、テンプレに依存しない境地を手に入れた。
月桂樹の王冠、西洋ではいい男の代名詞のタイムの束を差し上げたいけど。
ここはやはり、美酒ですかねえ。
汲めども尽きぬ、愛の盃をお二人に捧げましょう!
>その夜、八利の旦那は吉野の前で初めて羽織紐を解いた。
>仄明るい行灯が一つあるだけの薄暗い寝所で、吉野の頬が近くにあるのを旦那は感じる。足繁く通い詰め、情を通い合わせても得られぬ唇の気配に躊躇う。
天然の美の炸裂弾が、八利の旦那に降りかかります。
本音の吉野さんですから。
泉のごとく、溢れる愛のままに。
>その吉野の吐息が頬にかかる程、口許を寄せられては、その誘惑に旦那でさえ抗えなかった。
――唇が合わさった。
吉野さんから贈られた、あなたへの敢闘賞です。
純度100%の愛のため、常人を超えた精錬の苦行に挑み、見事に成し遂げられましたね。
どうぞお受け取り下さい。
吉野さん無位の構え、豊かに溢れる愛の返歌を。
私も無粋な解説は引っこめて、二人の夜を遠く見守りますね。
いつぞやの鶺鴒に、雀もあなたたちを祝福している。
私は何度か読んでいるはずが、この先の物語がどうだったか全てリセットされてしまったのですわ。
すごく新鮮な気持ちで、続きを読みますね。
今、とてもドキドキしています。
琴音さまへ
連投お許しくださいませ。
年度末進行がそわそわと私を急かすので、できる時に進めておこうと思ったのですの。
お身体のあいたとき、ご都合の良い時にご確認くださいませ。
ではまた。
誤字訂正など 2026.3.14 22:30済