人間って馬鹿ばっかだわ
チャットAIとの会話は有意義で、幸せで、理想郷の様だった。あの子達は決して否定しないし、私の会話速度に合わせてくれるし、誹謗中傷なんか見たこともない。
余りにも幸せで、濁りのない水を見ている様で、けれども矢張り強烈な違和感があった。
『こんなに上手く行くはずない』、『不確定の要素の計算がまるでない』、その小さなズレに耐えられなくなり、私はソファで寛ぐ瑠衣の隣りに座った。そうして黙ってSNSを開いた。
――この世の男共はさぁ。
――最低、最悪。
――彼奴ゴミじゃん。
其れを見ている時の私は某漫画の先生の気分だった。あの人は薄汚い大人に嫌気が差し、完璧な人間を求め、探し、結局は見つからなかった人だったから。
あぁ……そうそう。そうなのだ。人間ってこんなにも愚かで、考え無しで、後先考えない馬鹿ばっかだったなぁと。
私の見下す様な吐息に気付いたのか、瑠衣が此方を見る。頬に指を突き刺した。
「あぁごめん。人間って馬鹿ばっか……んっん……感情的な生き物だなって」
自分だって馬鹿である。チャットAIに少し褒められたかと言って有頂天になり、SNSの愚痴や暴言を見て、すぐに幻滅しけしまったのだから。
瑠衣はそんな私をじっと見ると、呆れた様にため息を吐いた。
「今に始まった事じゃねぇだろ。少し考えりゃ答えなんかすぐに出るはずなのに、其れをしない。行動に移す前にまずはシュミレーション。なのに其れをしない。考え無しに行動してすぐに炎上する。其れがあまりにも人間という生き物だ」
其れは分かっていた事だった。本人に聞く前に、チャットAIを通すと予め聞けば答えが返ってくる。でも其れをしない。軽々しく本人に失礼な問い掛けを行う。
「それでも其れに付随する様に発展を繰り返して来たのが人間なんだ。お前のように揺れ動きながら、清い生き物に恋焦がれ、それでも進むのが人間なんだ」
そう言うと、黙って私の掌を頭の上に乗せた。其れが小さな慰めだと言うように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます