ともだち、ひゃくにんできるかな
「……さっき、アタリって言ってたな。君はみたのか? ミスティルテインの店が爆破されるところを」
「あ、もちろん見てたっス。だってそれやったの、オレですから」
あっさりと。悪びれる様子などまるでなく、オールフレンダーはさらりと自白した。
少し考えるような仕草をすると、さらにこう付け足す。
「いや、オレがやった……なんて言ったら、協力してくれた友達に悪いっスね。オレたちがやりました」
「……なぜだ?」
僕の問いに、オールフレンダーは小首をかしげると、
「運営からのお知らせ、まだ見てないっスか?」
ウィンドウを出して、ある画像を表示した。
それは掲示板のスクリーンショットだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
親愛なる
イベント【ホウライの宵風よ、
今回のイベントは【ホウライの玉の枝】を探すというものですが、広大なマップのどこを調べればよいかわからない。そんな方もおられるかもしれませんね。
そんな皆様のために、追加情報をお届けいたします!
【ホウライの玉の枝】はすでに、ある方が保有しております。
そして、その方は現在、マルドゥク村の市街地にいらっしゃいます。
【アドベントゥラ・インフィニタ】運営事務局では、今後も【ホウライの玉の枝】を所持している方の所在地を定期的にお伝えする予定です。
ですから、当アイテムを取り損ねた皆様も大丈夫。まだまだチャンスはありますよ!
一方、【ホウライの玉の枝】を手にされた方につきましては……他のプレイヤーに狙われないよう、くれぐれもご安全にお過ごしください……!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
僕らが探し求めている【ホウライの玉の枝】。
それを持っているやつが近くにいる。
思わぬ事実に胸が高まる。
が、それも一瞬。
目の前で真っ赤な口をパクパクさせるパペットに、すぐに現実に引き戻される。
「ってわけっス。でも誰が【ホウライの玉の枝】を持っているかは分からないから……とりあえずマルドゥク村の全プレイヤーを殺すと決めたんス。だから」
ジャギン!
ウサギのパペットから、
オールフレンダーは姿勢を低くし、構えをとってこう告げる。
「君らも死ぬっスよ」
「え、ちょ、ちょっと待って……!僕らは【枝】、持ってないけど……??」
そう抗議する僕に、奴は耳を貸す様子もない。
「はいはい、とりあえず死んでから弁明するっスよ~。じゃ、みんなぁ、出ておいでぇ~(裏声)」
男がパンダのパペットの口をパクパクさせながら、声高に叫ぶ。
次の瞬間、ボゥ、ボゥ、ボゥ、と
出現するのはプレイヤーの一団。
「なんでこんな変なやつに振り回されにゃならんのだ……」
「しょうがねえだろ、
小声の文句がブツブツと聞こえてくる。
あまり統率はされてなさそうだが、恐るべきはその数だ。
「逃げても無駄っスよ。オレの99人の友達が取り囲んでるっス」
99人。
オールフレンダーはそう言う。
実際、その言葉に嘘はなさそうだった。
あっちを向いても、こっちを向いても、人、人、人。
大量の人の壁に、僕らは取り囲まれている。
「……へぇ。サービス終了直前のゲームで、よくそれだけ集めたな」
そう言うと、オールフレンダーは得意げに胸を張る。
「友達を100人作ること。それが死んだ婆ちゃんとの約束だったっス」
そこで感慨深げに一息つき、さらにこう続ける。
「【ホウライの玉の枝】をくれたら友達になってあげる。そう言ってくれた人がいたんス。オレはあの人を100人目の友達にするんだ。だからあのアイテムは絶対手に入れるっス!」
「……所詮は烏合の衆。僕とミネラルウォーターでなぎ倒してやるよ」
「君らに勝ち目はないっスよ……!幾重もの防御魔法に守られていた【剣商 矛盾】も、オレと友達の一斉射撃で陥落したんっス。この世界の絶対のルールはやはり、友情・努力・勝利っス!!」
場の空気は一気に緊迫する。
だが、問題がある。
僕は今、武器を持っていないってことだ。
「この事態だ、今だけでもアンクラーゲを返」
ミネラルウォーターに訴えかけたその瞬間。
僕の脳は思考を停止し、言葉は引っ込んだ。
僕だけではない。
その場の者すべてが動きを止めていた。
この状況にとってあまりに異質な音――のんきな鼻歌が聞こえたからだ。
「♪線路はァ続くよ、どっこまでっもー」
皆が振り返った先には、白の詰め襟制服の男が一人、タバコを
「なんだこのオッサン??」
「ボイスチャット切り忘れて熱唱……??いや、恥ッず」
ざわめく群衆に、その男はおどけた表情を作って両手を上げた。
「おっと、勤務時間中にタバコを吸うのは
そうニンマリ笑うと、火のついたタバコを吐き捨てた。
タバコはくるくると回転しながら、細い白煙を残して落ちていく。
その先に待つのは……いつの間にか置かれていた、樽。
タバコの先端が触れた瞬間、小さな火花がその板材に引火した。
樽の側面には【発破用】と書かれており……次の瞬間。
大爆発が起きた。
轟音とともに爆風が無茶苦茶に吹きすさび、男の周囲にいたプレイヤーが四方八方に飛んでいく。周囲の家屋も巻き込み、
事前に炎耐性のポーションを飲んでいたらしいその男は、火炎の中でクツクツ笑い、高らかに告げる。
「ただいま、このメインストリートは【サラマンカ鉄道同盟】が買い取った……。工兵!消火作業をすみやかに行い、線路を引けェ!!路面鉄道の開設や!!!」
/
「アイアイサー!おらドケッ!作業の邪魔だ!!」
どこからともなくヘルメット姿の作業員が飛び出し、爆風をかろうじて耐えた生き残りたちを容赦なくぶっ飛ばす。
罵声、悲鳴、工事道具の機械音が響く雑踏の中、詰め襟制服の男は上機嫌に歌の続きを歌いながら、こちらに向かってウインクした。
「あ、あんたは!!!」
「おー、昨日ぶりよね。駅員さん」
「だから駅員呼びやめろや!乙松や言うたやろ、ええ加減覚えろや!!!」
乙松。
僕らを【京都ダンジョン】へと導いた【鉄道クラン】の男。
その彼が、オールフレンダーの『友達』に混じっていた。
「キミは57番目の友達……! なにするんスか、
「建設長! 線路の敷設を完了しました!」
オールフレンダーの必死の抗議は、作業員の馬鹿でかい報告の声に掻き消される。
「よし!えー出発進行、黄色の線より内側にお下がりください、さもないと……」
向かいの建物の裏側で、ポォウと鋭い警笛。
「暴走列車がテメエらをペチャンコにしますからア!!!!」
曲がり角から轟音とともに飛び出したのは、黒煙を放つ巨大な蒸気機関車。
「オレは友達を傷つけるやつを許さないっス!!!」
オールフレンダーは線路に突っ込む。
鉤爪を構え、機関車に向かっていくも……
「へっぶ…………ッッ!!!!!!!」
あっけなく機関車に跳ね飛ばされ、彼方の空へと飛んでいった。
「
機関車は生き残りの『友達』を猛スピードで跳ね飛ばし、ボウウゥゥ! と野太い警笛を
僕らの前で急ブレーキをかけて止まった。
漆黒の大型獣のように唸る機関車を背中に、乙松は片膝をついて礼をする。
「恩に着るぜ、あんたら。上終中学校美術部……わしらの永遠の宿敵を、よくぞブッ倒してくれた。誓おう。全プレイヤーが敵に回ろうとも、サラマンカ鉄道同盟は永久にあんたらの味方や!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます