第7話 謁見シンギュラリティ
「私が13様にお願いして、ここにお目通りを願ったのは、πとは別件です」
ぼくは神妙に頭を下げながら話し始めた。こういう相手には下から行くのが一番だ。
「――虚数空間の発生の報告と、その対策のご相談です」
<虚数>という言葉に反応して、
「先ほど、我々の仲間である−1が、不覚にも平方根を使用してしまいました――」
「なるほど。事情は読めた」
元老院の
「――で、その対策と言ったな? 何か考えがあるのか?」
「はい。素数の皆様と、1様のお力をお借りできれば……世界を虚数空間から救えます」
「救う!? ずいぶんと大きな口を叩くな。虚数は我らでも対抗できん概念だぞ?」
僕の言い方が気に食わなかったのか、3が激昂する。
「私になら案があります。――<人間>である私になら――」
ぼくは胸を張って答える。ここで弱気になれば終わりだ。
「ふふふ……面白い。――よかろう、シィよ。特別に1様への謁見を許す」
2が椅子のレバーを引くと、奥のカーテンが開き、金ぴかの王室のような空間が姿を現した――
「まったく。このぼく様に用を頼むなんて、人間ってのはつくづく図々しい生き物だね」
最初に口を開いたのは、子供のような見た目の少年――彼が 1 か。
「そう言うな。わしらも暇を持て余しておるだろう」
筋肉の塊みたいな
「謁見、感謝します」
ぼくは頑張って
「1様にお願いしたいこと――それは、このプリモリウム城を<軸>として回転させていただきたいのです」
「回転?」
1が首を傾げる。
「はい。虚数は<回転>の概念です。1様のお力で世界を90度回転させられれば、この数次空間は虚数空間に同調できるはず――です」
「はず?」
「はい。……何分、試したことはないので」
「うふふ。面白いね」
1はいたずらっぽく目をくりくりさせて、ぼくを見る。
「この城を軸にするには、固定する力が必要だけど、どうするの?」
「それは、素数の貴族の皆様で城を支えていただき、地上は平民に押さえてもらおうと考えてます」
「なるほど。それならいけるか。――いいよ、力を貸そう」
1がうなずく。
「なんだ。楽しそうだな。わしにもやらせろ!」
∞が割り込んでくる。その後ろには「わたしも」という感じで0が続く。
「じゃあ、0様にはすべての中心をお願いできますか? ∞様には回転による軸の歪みを押さえるため、軸の端で世界を支えてください」
「がははは! 世界を支える? それはまさしく、わしの役目だ!」
∞は嬉しそうに腕をぐるぐる回している。0も心なし嬉しそう。
「では、私は地表の者たちに知らせてきます。回転のタイミングは――?」
「1時間後だ。それ以上は待てないよ」
1が
「承知しました。では1時間後、よろしくお願いいたします」
ぼくは礼をして、13の腕を引く。
「行くぞ、13。時間がない」
「ちょっと、引っ張るな!」
残り1時間。
のんびりしている暇は、どこにもない。
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