第2話 定義域を越えて

「そう。数字の素数」


 12はぼくの言葉を繰り返した。


「この数次空間では今、素数至上主義がはびこっていて、を頂点にした、割り切れない数字だけが<貴族>を名乗っているんだ」


「で、おれたちみたいに約数がある数字は、その支配のもとで肩身狭く暮らしてるってわけさ」


 12はやれやれと肩をすぼめる。


 数字が……生きてる? 信じられない状況だけどいったい何だこの世界ぼくは笑いをこらえきれなかった最高すぎるじゃないか


「どうだい? おれたちの革命に力を貸してくれないか?」


 12は上目遣いで聞いてくる。


「いいよ。そういうことなら」


 ぼくは頷いた。たとえ夢だとしても、こんな面白い状況をスルーするなんてありえない。


「そう来なくっちゃ! じゃあ仲間を紹介するよ。みんな、おいで!」


 どこで待っていたのか、ぞろぞろとかなりの人数が部屋に入ってきた。

 見た目はどう見てもただの人間なのだが――。


「この人たちも、約数なの?」


「あぁ。それと、こっちの肌が黒いのは負の数だ」


 筋肉質な大男が前に出てきて手を差し出す。


「負の数代表の−1マイナスイチだ。よろしく」


 ぼくは-1の圧力におされながらも、握手を返す。


「12、素数と戦うってことは、ゼロイチ無限も革命のメンバーなのかい?」


 特異点のことが気になり、ぼくは尋ねる。だが12は首を振る。


「あいつらは、素数すら超えた存在として、貴族の上に君臨してるよ。きみの世界で言うと王様とか、そんな感じだ」


「なるほどね」


 そのポジションなら、たしかに納得だ。

 そうならば――


「じゃあ、素数に対抗できる手立てはひとつだな――」


 ぼくがそう呟くと、その場の全員がこちらを見る手立てがあるのか――?


「素数が特殊なのって、整数の中だけの話だろ? 小数や分数も仲間にすれば、約数の支配からは解放されるんじゃないか?」


 僕の提案に、12は苦い顔で絞り出すように言った。


「やつらは――半端ものだ。数字じゃない……って扱いなんだよ」


 そしてその言葉に倣うように周りの人たちが頷く。


「ちょっと待てよ。きみたちは素数の貴族特権には文句をいう癖に、少数や分数の差別には目をつぶるっていうのか?」


 それはとんだ自己矛盾ダブルスタンダードだ。


「それは……」


 ぼくの指摘に返す言葉もない12。


「そうだな。シィ。おまえの言う通りだ。おれたちも数字の呪縛に囚われていたのかもしれない」


「よかった。そう言ってくれて。それなら安心して、ぼくの案を話せる――」


 ぼくはそう言うと満面の笑みでみんなを見渡す楽しい革命の時間だ

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