僕か君が

春本 快楓

プロローグ

「お前は、次のクリスマスくらいには破滅するだろう」

 僕のすぐそばで、黒い霧みたいな何かがささやきかけた。その声は、同級生がよく言葉にするシネ、と違って重みがあった。本気で言っているようだった。

 僕の背中から冷たい汗が出てきた。

「なんで、それって死ぬってこと……どうしたら、死なないでいられるの?」

 黒い霧は、くっくっくっと面白そうに笑う。

「いいな、そのチンケな顔! ああ、おいしいおいしい」

「教えてくれよ!」

 僕はまだ、死にたくなかった。これから高校に入学するのに。これから楽しい事をいっぱい経験したいのに。

 まだ何十年もこの命は残っているのに。

 黒い霧は、ほぉー、と息を吐いた。

「ふん、お前には特別に教えてやる、助かる方法を。それは、一人の女を見殺しにすることだ」

「見殺し……」

「ああ、別にわざわざ殺さなくていい。見殺しにすれば、いいだけだ。簡単だろ……おっと、そろそろ時間だ」

 

 

 白い天井と太陽の光を浴びたカーテンが目に映る。窓から明るく高い話し声が聞こえてくる。そこでようやく、さっきのはただの悪夢だと理解し、ほっとした。

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