後編:処刑と責務

 そこからの行動は早かった。俺の家の者達が妻の不貞の相手を探しだし、数々の証拠も押さえた。

 相手は近くの領地に住む商家の息子が妻の相手で、無骨な軍人といった強面の俺とは違い、女受けの良い美男子だった。女慣れもしているようで、妻は口先八寸と手練手管で堕とされてしまったのだろう。だけど、それは何の言い訳にもならない。


 事実と結果がすべてであり、セラの行いはこの帝国において尤も行ってはいけない禁忌を犯してしまったのだから。


 程なくしてセラとセラ父母兄妹とその子供達がまず捕らえられ、そして商家の息子の父母兄妹もまた捕らえられた。セラも商家の息子も無実や潔白を訴えていたけれど、魔術によって産まれた子供が二人の子であることが証明されると押し黙った。

 国家反逆者として法廷にひったてられて、皇帝陛下や数多の重臣、そして他の帝国十二星が見守る中での裁判でセラは“寂しかった、本当は俺の事を愛している、やりなおしたい”と言い訳を述べて許しを請い、商家の息子もまた、“ほんの出来心だった、遊びだった、悪いのはほいほいついてきて抱かれたセラだ”としてセラに責任を転嫁していたけれど、もうこうなっては、俺にはどうすることもできないのだ。


「お前達がしたことはただの不義、不貞ではない。国家に対する反逆であり、ひいては人類種全体を危険に陥れる行為なのだ。その末路は、同じことを他の者に繰り返させないために


 裁判長が淡々と述べる処刑宣言にセラも相手も、その両家の家族たちもまた救いと許しを乞うけれどそれに耳を傾ける者はいない。


「帝国十二星とはただの看板にあらず。

 その身体に流れる血は太古の昔から伝えられる伝説の武具を起動する鍵であり、そしてその伝説の武具は12個を以て邪神マルサルオスの封印のひとつを成しているのだ。

 。子供でも知っていることで、帝国十二星への不義不貞は三族皆殺しと古来より定められている」


 裁判長の言葉に、ただただ青い顔で震えることしかできない愚か者たち。

 セラの母親が、号泣しながら娘を殴っている。なんてことをしたのだと、国家の要職につくものの妻になるという事がどういうことか子供のころから教えたのはなんのためかと、そしてザールボルグ家が外敵から国を守っているから内地の民が安全に暮らせるのだと、悲痛な声と娘を殴打する音が法廷に響く。


 愛情はあった、何不自由ない暮らしもあった。

 俺も前線からは間をおかず手紙を書き、国によって定められ許された休日は家に戻り家族とともに過ごした。自分にできる全てを以てセラを愛した。幼いころから隣にいた女性だったからだ。けれど今は失望しかない。

 俺の侮蔑と失意の眼差しに気づき、涙と鼻水を垂れ流しながら赤子を抱いたセラが俺に向かって手を伸ばし叫ぶ。


「ウアアアアッ、お願い、許して、助けてライティィィィィッ!!」

 

「さらばだ、セラ」


 俺から言えるのはそれしかない。衛兵たちに縛り上げられ、処刑場に連れて行かれるセラは此方を振り返りながらそれでもあきらめずに必死に叫ぶ。



「嫌ぁっ、そんなこと言わないで!助けて、たすけてーっ!私まだ死にたくないよぉっ!!子供は、こんな子供は処刑してもいいから!反省するから、だからやり直させてっ!」


 あまりにも聞くに堪えない言葉に顔をしかめて無視し、俺も処刑場を見下ろせる場所へと移動した。

 老若男女問わず、セラや相手の家族達が順番に断頭台に消え、最後にセラとその相手の首が落とされたのを見届けてから俺は深くため息をついた。

 セラと出会って20数年、その結末がこんな終わり方になるとは思わなかった。

 そんな俺の心中を慮ってか、帝国十二星の主席が俺の肩に手を置いて、慰めるように声をかけて来た。


「初代皇帝陛下の言葉だ・・・大いなる力には、大いなる責任が伴う。これもまた俺達に与えられた責任という奴だ。うちの縁戚から良い相手を紹介しよう」


 日が暮れゆく処刑場と、見せしめのために並べられた裏切り者達とその家族たちの首を見下ろしながら、俺は主席のそんな言葉に静かに頷くしかなかった。

 俺達にはかつて世界を戦乱に陥れた邪神の封印を維持する義務がある。それは俺達の先祖がそうしてきたように、次代に血と共に平和をつなぐ責務だ。


 今回の、ザールボルグ家の御家騒動・・・不貞と裏切りは発覚し、処される事となった。

  けれどもし、裏切りが明るみに出ないままに帝国十二星の血が人知れず欠けてしまったらどうなるのだろうか?・・・そう考えると恐ろしさも感じる。

 この世界に絶対はないけれど、こんな事が繰り返されず邪神の封印が危険にさらされることがないようにと願わずにはいられない。


「何黙って黄昏てんだライティ、どんなタイプが好みだ?うちの家は大きくて親族の娘も多い。あと帝国十二星主席の縁戚だと家格が強すぎて嫁ぎ先に苦労する娘もいるんだ。巨女ロリ巨乳貧乳多分大体どんな娘もいるから包み隠さず性癖をぶちまけろ、男どうしだろ」


身長タッパチチがデカい女が好みです」


「なんだお前おっぱい蛮人か!!そーかそーかわかるよーおっぱいぷるーんぷるんってな!!っぱロリよりボインだよなぁ!!」


 バシバシと背中を叩いてくる主席の掌が痛い。嘘みたいだろ?このノンデリおぢさん、帝国十二星最強なんだぜ・・・。俺はもう何度目かになるため息を零すしかなかった。

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妻に托卵を企まれたので処すことになった。 サドガワイツキ @sadogawa_ituki

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