138億年の旅~永遠の命、虚空の先へ~

空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~

第1話 宇宙の始まり

 ◆プロローグ


 始まりは空だった。


 何も無かった。


 無い、さえ、無かった。


 あるとき、無が揺らいだ。


 波のように、揺らいだ。


 その時、1としての光が生まれた。


 光は自身を信仰していた。


 光は自分はなんて素晴らしい存在なんだ!

 と謳歌した。


 だが、寂しかった。


 一人だったから。


 だから2人目を作った。


 闇、陰と陽の陰、不安を。


 その瞬間、ビッグバン。


 闇の世界と光の世界に別れる。


 正と負の関係のように、対に世界は、宇宙は生まれた。


 ◆


 私はこの宇宙で最初の星に生まれた。当時の人々は大地が丸いなんて知らなかった。当時の人々はこの星が幾億の塵の1つだとも知らなかった。


 それから月日が経ち、聖暦2079年、私は生まれた。この星、ガイアでは、科学信仰の元に地母神ガイア・ソフィアを信仰していた。そして、AIやロボットが主に仕事をこなしていた。人類は自由に好きに遊んで暮らせる。そんな時代に、私は王子として生まれた。


 私はAIや哲学者たちに、科学信仰の前に存在していた原始宗教を研究させた。そこに科学信仰をさらに発展させる何かがあると思っていたからだ。


 そして、その予感は当たる。


 原始宗教の一つ、『植物信仰フリージア教』で、原始に、花となった姫が今も生きていると言うのだ。彼女なら、この宇宙が何故、どのように、生まれたのか教えてくれる気がした。


 王位を継ぎ、妻も二人出来た頃、古代遺跡の発掘調査の中から、謎の植物の生命体が現れた。それはこう語った。


「ガイア・ソフィアを汚すでない」


 その生命体は美しかった。花のようなドレスを纏い、ルックスは人間のものではない。そして、額にキラリと宝石が付いていた。


 王となった私は玉間に連れてこさせたその生命体に告げる。


「私はこの星の王、レオナルド=リ=ユニバースである。お前は何者だ?」

「この星を汚す愚か者たちの長か」

「汚す? 文明を築くのは神が言葉を創った時から人類に与えられた使命だ!」

「否、否、である。このなんたる愚かさ!」

「騎士たちよ、その生命体を殺せ!」


 そして、その生命体は名を告げることすらせずに殺された。死ぬと、枯れるように一つだけの宝石が残った。


「鑑定士よ、これはなんだ?」

「これは! 万病に効く希少宝石ガイア・モンド。しかし、この量、恐らくこの星の埋蔵量の数百倍だ!」


 謎の植物の残した宝石はこれから先も1番高価で希少であり続ける宝石だった。そして、その宝石は粉にすれば、本当にほんの少しだけの量でも万病に効くのだ。


 ならば、と。王は動く。


「この宝石の欠片をあの生命体に与える。それで復活するなら、拘束して飼い慣らす。いいな!」


 騎士たちは敬礼する。


 鑑定士が宝石を少しだけ砕く。その粉を謎の植物の生命体の口だった所に入れると、見る見るうちにその体は再生した。


「ガイアモンドの無駄遣いだな。で? 私を拘束するのかい?」

「ああ、嫌か?」

「別に構わないさ。どの道、かつての人類の戦争で使われた核より酷く残虐なる爆弾、C2爆雷を前にしては、私たちは死んでしまうからね。だから地下に逃げたのさ」

「何を知っている? お前はどのくらい生きている?」

「永遠さ。この星が生まれた時から」

「名前は?」

「ソフィアでも、ヘレーネでも、アナスタシアでも」

「何故そんな体なんだ」

「かつての旧文明は星のために植物と同化することを選んだ。私は王女だったから、1番大きいガイアモンドを手にし、今でもそのお陰で永らえている」

「つまり、ガイアモンドこそ、不死の秘訣なのか?」

「そうだとも。まさか、全知型AIでまだ答えが出てなかったとはね。どうするのさ? また私を殺して、ガイアモンドを奪う?」

「お前は殺す。そして、私がガイアモンドを得て、不死になる」


 私がそう告げるとその生命体は「あほくさ」と告げた。その刹那、その生命体を騎士たちが殺した。


 ◆


 私はガイアモンドをどのように使うのがいいのかAIや科学者たちに研究させた。そして、王である私が使うのが一番となった。


 ガイアモンドの使い方は簡単だった。額に埋め込み、松果体と有機型電子インパルスで繋げるだけ。


 そして、私は不死になった。


 妻も、子も、孫も、曾孫も、みんな死んで行った。不老不死の私だけ、置いていかれて。自殺しても生き返る。なら、このガイアモンドを手放す?


 世界一の宝石。

 それよりもありふれた死を選ぶ?


 私は悩んだ。

 そして、悩み、悩んだ。


 決めた。

 同じくらいの大きさのガイアモンドを見つけて、永遠の伴侶を見つけようと。


 そして、何度100年が巡ったか。

 この星にはもう大それたガイアモンドは無かった。レーダーやソナーで見つけられなかったのだ。


 そんな折り、宇宙を作ろうと研究していた対消滅宇宙生成理論の副産物『対消滅弾』


 ――ビッグバンと同じ仕組みのその爆弾はガイアそのものを恒星、後にアンドロメダに変えた。


 不死身の私だけその爆弾から逃れた。宇宙空間に放り出される。そして、私はある宇宙船に迎えられる。


 神への挑戦者という異名を持つ

 宇宙船『アギト』


 丁度任務から帰還中だった。他の生命を育める星を探すという任務の。


「ガイアはもう滅んだ。次の生命を育める星を探さなければならない」

「法王様。お任せ下さい」


 乗組員は7人だった。この宇宙船には半永久的に食事を生み出せる設備があった。私たちは、そのまま第二のガイアを目指して進む。

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