美少女Vtuberのリアル密着で俺の心は騒がしい!防音マンション管理人の配信者生活

ちかあま理久

プロローグ

ソファに沈む俺の身体を、左右からじわりと包み込む体温があった。


先に寄り添ってきたのは、左側。


艶のある黒髪が肩から流れ落ち、頬をかすめて揺れる。

細くしなやかな腕がそっと俺の腕へ絡み、ミルキーな甘い香りがふわりと鼻先を満たす。

耳元へ寄せられる吐息は、熱い。


「……兄様あにさま。大学のときから、ずっと……好きでした」


柔らかい声とともに、胸の奥が強く締めつけられる。


「アピールしてたのに気づいてくれなくて……

連絡も途切れて……すごく寂しかったんです。

だから……もう離れません。ずっとそばにいますから」


囁くたびに、肌をくすぐる体温が揺れる。


そのとき。


「……わ、わたしも……」


右側から、小さな足音。

次の瞬間、肩に落ちるぬくもり。

明るい茶髪が頬に触れ、柑橘の香りがやわらかく広がった。

小柄な身体が寄り添い、腕にしがみついてくる。


「会社にいたときから……ずっと先輩のこと、好きだったんです」


「アピールしてたのに全然気づいてくれなくて……

会社がなくなるって聞いて……離れるのが嫌で……

でも、今こうして隣にいられて……すっごく嬉しい」


頬へ近づく気配――


……ちゅ。


ふわりと熱が広がり、息が止まる。


「ふふ……トロトロの顔してますよ、先輩。かわいい♡」


すぐ反対側からも、甘い声。


兄様あにさま、反対側のほっぺ……いただきますね?」


……ちゅ。


両側から落ちるキスに、身体の芯まで熱くなる。


「見て、真っ赤。……ドキドキしてますよね?」


「かわいい女の子に抱きつかれてキスされて……当然かも♡」


二人の体温、香り、囁き声。


どれも逃げられないほど甘くて、反応できないほど強烈で。


なんの前触れもなく、俺の平凡な生活は溶かされていった。


――なぜ、彼女いない歴イコール年齢の平凡会社員だった俺が

こんな生活をしているのか…

話は2週間前にさかのぼる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る