ピッチクロック・オペレーション
くらんく
第1話 ピッチクロック
マウンドの彼は汗一つかかず、ボールを握りしめたまま、ただただストライクゾーンを見つめている。
「ピッチクロック」
審判が腕時計を指さしながら宣告する。制限時間内に柳生が投球を行わなかったためペナルティが与えられたのだ。
「ボール、ボールフォア」
ペナルティとして与えられた4個目のボールでバッターの出塁が許される。打者は走者へと役割を変え、塁上に溜まっていたランナーが押し出される形で本塁のベースを踏む。満塁からの押し出し四球で柳生は点を失った。
「3254307対0」
柳生はそれでも表情を変えない。生まれつきの不敵な笑みを口元に浮かべてストライクゾーンを見つめ続けるのだ。
対する野球星人は苦虫を噛み潰したような顔でマウンドに視線を送る。あるいは怒りの形相を、あるいは完全に飽きてしまった様子を見せる者もいる。いくら長命種の野球星人とはいえ、8年にも及ぶ1回表の攻防には業を煮やしていることだろう。
だが、これこそが柳生に与えられた作戦だった。
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