第12話
シーン1:最後の戦い
【時間】 現代、深夜
【場所】 街中の廃工場、最深部
SE: 嵐の音、雷鳴、雨が地面を叩く音、そして、激しい戦闘の音
カイは、スサノオと対峙している。ソラは、ひかりと献太と共に、鎖につながれた人たちを助け出そうとしている。
スサノオ: (冷酷な笑みを浮かべて) 「小僧。お前たちの、その甘い『絆』も、ここまでだ。お前たちが大切にしているものを、一つずつ…破壊してやる!」
スサノオの放つ強大な闇のエネルギーが、カイを襲う。カイは、その攻撃を、必死に『虚無』の力で受け止め、跳ね返す。
カイ: (苦悶の表情で) 「…負けるわけにはいかない!僕たちの日常を、守るんだ…!」
スサノオ: 「愚か者め!お前たちは、もう、ただの人間ではないのだ!その不純な『愛』が、お前たちの魂を、蝕んでいるのだ!」
その時、スサノオの背後から、クロガネとヤミが現れる。彼らは、スサノオに力を貸し、その攻撃をさらに強める。
カイ: (絶望的な表情で) 「くそ…!」
シーン2:最後の覚醒
【時間】 現代、同時刻
【場所】 廃工場、地下室
SE: 不気味な風の音、重い鉄の扉が軋む音
ソラは、鎖につながれた人たちを助け出そうとしている。しかし、鎖には、強力な霊的な結界が張られていて、ソラの力では解くことができない。
ソラ: (焦って) 「どうしよう…鎖が解けない…!」
ひかり: (力なく) 「…私には、ソラちゃんを助ける力なんて…」
その時、ソラの瞳が、かすかに光を放ち始める。それは、かつて奪衣婆ソトとして持っていた、魂の本質を見抜く「千里眼」の能力。ソラは、鎖の霊的な結界を透かして、その鎖に込められた、死神たちの『絶望』のエネルギーを読み取る。
ソラ: (強く) 「…分かった。この鎖は、彼らの『絶望』で出来ているんだ…!」
ソラは、ひかりに、静かに語りかける。
ソラ: 「ひかり…私に、あなたの『希望』を貸してくれない?」
ひかり: 「私の…希望…?」
ソラ: 「うん。あなたの、誰かを信じたい、誰かを助けたいという、その心の光を…私に、貸してほしい。」
ひかりは、戸惑いながらも、ソラの手に、自分の手を重ねる。その瞬間、ひかりの魂から、温かい光が、ソラの魂へと流れ込んでいく。ソラの瞳の光が、さらに強くなる。
ソラ: (力強く) 「…千里眼!」
SE: 光が弾けるような音
ソラの瞳から放たれた光が、鎖の霊的な結界を貫く。鎖は、音を立てて砕け散り、鎖につながれていた人たちは、解放される。
シーン3:犬の忠誠
【時間】 現代、同時刻
【場所】 廃工場、最深部
SE: 激しい戦闘音、獣の咆哮
カイは、スサノオの攻撃を、必死に受け止め、跳ね返す。しかし、彼の体は、もう限界だった。
スサノオ: 「…終わりだ、小僧。」
スサノオは、巨大な鎌を構え、カイに振り下ろそうとする。その瞬間、カイの前に、一匹の黒い豆柴が現れる。それは、クロだった。
クロ: (力強く) 「ウオォォォン!!」
クロの体が、再び光に包まれる。そして、その姿は、かつて見せた巨大な鎧猪ではなく、スサノオと同じ、荒々しい戦神の姿へと変貌していく。
スサノオ: (驚きと、激しい怒りの表情で) 「…シジマ!貴様、裏切ったのか!」
シジマ: (力強く) 「…俺は、もうシジマではない!俺は…クロだ!俺は、あの子たちの、日常を…守る!」
シジマは、スサノオの攻撃を、その身で受け止める。スサノオの鎌が、シジマの胸を深く抉る。シジマの体から、大量の血が噴き出す。
カイ: 「クロ…!」
シジマ: (苦笑しながら) 「…大丈夫だ。小僧。…お前たちの…陽だまりの…日常を…」
シジマの体は、光の粒子となって、消えていく。その光の粒子は、カイの魂へと流れ込み、カイの『虚無』の力を、さらに増幅させていく。
シーン4:最後の選択
【時間】 現代、同時刻
【場所】 廃工場、最深部
SE: 激しい戦闘音、そして、静寂
シジマの犠牲によって、カイの『虚無』の力は、完全なものとなった。カイは、スサノオの攻撃を、冷静に受け止め、すべてを『虚無』へと変えていく。
スサノオ: (恐怖と絶望の表情で) 「な…なんだ、その力は…!?…なぜ、お前は…その力を、完璧に…」
カイ: (冷たい瞳で) 「…僕は、もう、一人じゃない。」
カイは、スサノオの魂に手をかざす。そして、スサノオの魂の奥底に眠る、憎悪、嫉妬、そして、孤独…それらの感情を、すべて『虚無』へと変えていく。
スサノオ: (絶叫) 「やめろぉおおおっ!!私の…私の…」
スサノオの体は、光の粒子となって、消えていく。残されたのは、彼の魂だけ。
カイ: (静かに) 「…閻魔様。この魂を…裁いてください。」
その時、廃工場の天井から、光が差し込む。それは、天照皇大神の光。そして、その光の中に、閻魔大王の姿が現れる。
閻魔大王: (スサノオの魂を見て、静かに) 「…スサノオ。お前は、裁かれねばならない。」
シーン5:エピローグ
【時間】 現代、数日後
【場所】 公園の砂場
SE: 子供たちの元気な声、ブランコの軋む音
カイ、ソラ、ひかり、そして献太は、公園の砂場で、子供たちと遊んでいる。
ソラ: 「ねぇ、カイ。この前、空から、光が降ってきたんだよ。すごく、きれいだった。」
カイ: (優しく微笑んで) 「…ああ。きっと、神様が、僕たちのことを、見守ってくれていたんだ。」
ナレーション(閻魔の声): 冥府の王と、天界の神は、彼らの『選択』を見守った。そして、彼らが選んだのは、神の理を超越した、新たなる『調和』だった。
カイ: (静かに) 「僕たちの日常は、守られた。でも…僕たちの旅は、まだ始まったばかりだ。僕たちを狙う、新たな脅威が、いつか、また、現れるかもしれない。」
ソラ: (力強く) 「うん。でも、大丈夫だよ。…だって、私には、カイと、ひかりと、献太と、クロがいるから!」
ひかり: 「そうだよ!もう、一人じゃないんだから!」
献太: 「僕たち、最強のチームだからね!」
その時、カイの足元に、小さな黒い豆柴が駆け寄ってくる。それは、クロだった。
カイ: (驚きと、喜びの表情で) 「クロ…!?」
クロは、カイの足元に体をすり寄せ、クゥンと鳴く。
ナレーション(閻魔の声): かつて、冥府の『秩序』を捨てた落ちこぼれ死神は、地上で、新たな『絆』を見つけた。そして、その絆は、神々の理さえも超える、奇跡を起こした。
【第12話 完】
ネザーワールド・リヴァイヴ(冥界蘇生) ~陽だまりの誓いを君と~ 脚本版 たくみふじ @TakumiFuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます