クラスの女子全員とヤらないと世界滅亡 ~なんでもいうことを聞かせられるエロノートを駆使して攻略せよ~
羽田遼亮
第1話 エロノート
「一年以内にクラスメイト全員とエロいことしないと人類が滅亡するって!?」
そのような衝撃的な発言をしたのは俺こと桐生翔大。
その言葉を興味なさげに聞くのは悪魔のユダ。
ユダはじゃがりこをポリポリと食べながら言う。
「そうだ。おまえは悪魔と神に選ばれた。今、天界と悪魔界では論争になっていてな。人間を滅ぼすべきか、生かすべきか」
そんなスナック菓子を食べる感覚で決めないでほしい。
「無論、神側は人類を生かす方向に持っていきたいみたいだが、悪魔は滅ぼしたい。そこで人類の中からひとりを選んで『英雄』が生まれるか試そうってのがこの企画だ」
「英雄って……」
「昔から英雄色好むっていうだろう。日本の校長の平均値を上げたレジェンドもいるし、そんな破天荒なやつがほしいんだ」
ちなみにユダは人類滅亡派ではないらしい。ただ、なんの試練もなく人類が生き延びるのも癪なようで……。
「そこで俺様が中立の立場になっておまえを導く。具体的にこのノートをやるからクラスメイトの女子全員とエロいことをするんだ」
「エロいこと……」
「ちなみにこのノートは相手の名前を書けばなんでもいうことを聞かせられる魔法のノートだ」
「てゆか、それ最強じゃね?」
「そうでもない。直接的なお願いは駄目だし、同じ願いは使えない」
「結構、制限があるんだな」
「そうだ。おまえならばどう使う?」
「まずは本物か確かめる。ええと、クラスメイトの名前を書けばいいんだよな?」
「そうだ」
それじゃあクラスで一番可愛い連城明里さんの名前を書こう。そ、そうだな、明里さんのパンツがみたいな……。ダイレクトは駄目って言ってたから突風が吹いてスカートがめくれる、にしようか。
そのようにノートに書き込むと一陣の風が舞い、登校途中の明里さんのスカートが……ふわり、という生易しいものではなく、まるで台風の前触れのような突風となって巻き上がった。
「きゃあああっ!?」
明里さんは悲鳴を上げ、慌てて鞄でスカートを押さえつける。
だが、そのコンマ数秒の遅れが命取り――いや、俺にとっては僥倖だった。
重力に逆らい、花が開くようにめくれたプリーツスカートの下。そこには、清楚な彼女のイメージを裏切らない、いや、むしろその期待を遥かに超える『純白に水色の小さなリボンがあしらわれたショーツ』が、朝の陽光に照らされて白日の下に晒されたのだ。
俺は通学路の電柱の陰で、その光景を目に焼き付けながらゴクリと喉を鳴らす。
風が止むと、明里さんは真っ赤な顔をして周囲をキョロキョロと見回した。幸い、目撃者は俺(隠れている)以外にはいないようだ。彼女は涙目でスカートの裾をギュッと握りしめると、小走りで校門の方へと駆け去っていった。
「……マジだ。マジでパンツ見えた」
「ほう、白か。悪くないスタートだな」
いつの間にか隣に浮いているユダが、今度はポテトチップスを開けながらニヤリと笑う。
「おい、今の風も『自然現象』として処理されたのか?」
「そうだ。おまえが書いた通り『突風が吹いて』という事象が確定しただけだ。誰も魔法だなんて思わない。ただのラッキースケベとして処理される」
「ラッキーってレベルじゃねーぞ……心臓止まるかと思った」
俺は震える手でノートを見つめる。
黒い表紙のそれは、ただの大学ノートにしか見えないが、確かに現実を改変したのだ。
「で? 満足か? まさかパンツを見て終わりってわけじゃないだろうな」
「も、もちろん違う! これはあくまでテストだ!」
「そうだな。そもそも今回のミッションは『エロいことをする』だ。見るだけじゃカウントされんぞ。今の風はあくまでアシスト。そこからどう『接触』に持ち込むかが、おまえの腕の見せ所だ」
ユダの言葉に、俺は現実に引き戻される。
そうだ。人類を救うためには、見るだけじゃダメなんだ。
「……なあユダ。クラスの女子全員ってことは、あの『氷の委員長』こと神崎玲奈も含まれるんだよな?」
「当然だ。彼女は難易度Sランクだな。どう攻略する?」
「くそっ、いきなりハードルが高すぎるだろ……!
でも、やるしかないのか」
俺はペンを握り直す。
次はもっと直接的なハプニングが必要だ。例えば、体育の授業中、あるいは放課後の教室で二人きりになるシチュエーション……。
「よし、次のターゲットと作戦を決めるぞ。人類の存亡がかかってるんだ、俺は心を鬼にしてハーレムを築く!」
「その意気だ。おっ、次はチョコ味のスナックか? うまいなこれ」
こうして、俺と悪魔と、そしてクラスメイト全員を巻き込んだ、とんでもない一年間が幕を開けたのだった。
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