第2話 TKGを売ってみた
夕方。
弟の
転生するなんて思ってなかったよ。
しかも前世の記憶が戻るなんて。
今世の俺はクズだった。
親が死んでから、働かずにぶらぶらして、妹の稼ぎで暮らしていたようだ。
親はそれなりに裕福だった。
Bランクハンターで勝ち組。
ダンジョンで命を落とした。
親が死んで、1年も経たないうち全財産を食いつぶしたようだ。
今世の俺にそれなりに思うところはあるが、これからは俺が立て直してやるよ。
「迷惑掛けたな。これからは俺が稼ぐ」
「うん、良いの。だけど、俺が稼ぐじゃなくて、みんなで稼ぐでしょ」
「そうそう、僕も手伝うよ」
「そうだな。みんなで頑張るか」
前世は一人っ子だったから、妹や弟がいるのは新鮮だ。
「あのてぃなんとかを売るの?」
「ティケージーな。とりあえずはな」
だが、おそらく『TKG』の神秘性は減って行く。
食えば生玉子と醤油とご飯なのはすぐに解るからだ。
となると意味も全部浸透していくに違いない。
大半のひとが魔法言語は日本語だ。
作る所を見せないで売ったとしても、あの金貸しから広まるのは時間の問題。
あの金貸しを儲けさせるのも何となく腹が立つ。
なので『ティケージー』の商品名で売る。
魔法言語として英語が良いのは俺も解っている。
だが、盗まれるというか、知られてしまうのは時間の問題。
外来語として、和製英語みたいなカタカナの英語は残っているからな。
天才みたいな奴はいるから、ヒントさえあればすぐに解析してしまう。
いつの世もそんなものだ。
とりあえず、玉子掛けご飯を売りまくる。
魔力が回復したので、道にテーブルを出して夕飯として10イェンで売る。
みんな、ふだんは10円の通称ゴブリンバーを食っている。
これは、ダンジョンでゴブリンを倒すと、たまに貰える奴。
記憶が戻る前の感想によれば安いけど、糞不味いらしい。
「ティケージー! 安いよ!」
女の子声の威力だろう、野郎がわんさか寄って来た。
「なんか美味そうだな。ひょっとして米か? いや虫の卵とかいう落ちじゃないだろうな」
「お客さん、米ですよ。それにニワトリの生玉子。菌がいないから、腹を壊したりもしない」
「それが10イェンか? こんなに安いと詐欺だと疑うな。しかもここは下級階層の地域だ」
「いいかい。俺が1個食う。お客さんが指定してくれ」
「じゃあ、それ」
夕方で腹が減ってたので、『TKG』を軽く平らげた。
美味いが、カレーライスやラーメンが恋しい。
後で魔法で出せるか試してみよう。
「しかたねぇな。そこまでされたら食ってやるか。ゴブリンバーには飽き飽きしてた」
そういうと男は10イェンをテーブル置いて、1口食べ。
後は一気食い。
無言で、また10イェンをテーブルに置いた。
繰り返すこと、合計5杯。
「うっ」
男は腹を押さえて呻く。
「お前、馬鹿だな。騙された。おい、誰か通報しろ。こいつらを逃がすなよ」
「ま、まってくれ。食い過ぎで苦しいだけだ。げっぷぅ。はぁちょっと楽になった。美味過ぎる。これなら、死んでも良い」
どんだけ飢えているだよ。
「そりゃそうよ。私なんか涙が出たんだから。さあ、ティケージー! 安いよ! 美味いよ! 早いよ!」
「俺にもくれ」
様子見してた客が一斉に食い始めた。
俺は家の中でこっそりと『TKG』を作るのに忙しい。
だが、少しずつ消費魔力が増えて行くのが感じられた。
やはり、神秘性が失われている。
これは、ちょっと上手くない。
明日は値段を上げないと、いけないようだ。
1週間後の借金の支払いはなんとかなりそうだが、じり貧コースらしい。
借金の証文は正統な物だ。
取り立てに暴力は法律違反かもと思ったが、モンスターとダンジョンの世界。
スキルや魔法もあるから、みんな素手の暴力ぐらいじゃ驚かない。
そう記憶にある。
したがって訴えても無駄。
英語の呪文を使いまくったら、恐らくろくなことにならない。
神秘性が減るだけなら良いが、英語という魔法言語を狙ってハイエナの如く、危ない奴らが群がって来そうだ。
真っ暗になったので店を終わる。
「
「
「
お疲れのどこがおかしいんだ。
家族だから、正直に打ち明けよう。
「ええと、信じられないかも知れないが前世の記憶が戻った」
「
「いいや、どうやら俺の前世の死ぬまでの記憶と知識が膨大で、前世の割合が大きいからこうなっているらしい」
この時代の俺は19歳。
前世の俺は80歳代だ。
単純計算で、前世の俺が8割。
「死んでないなら別に良い」
「だよね」
「今後について2人に相談だ。ティケージーの神秘性が減っている。おそらく、そのうち普通の日本語と変わらなくなる。そうなると数が作れない。しかも、美味いからハエみたいな奴らが来るかも知れない」
「それなら、ハンター協会にハンター登録して、クランに入るしかないと思う。私が所属しているクランに話してみる」
「僕もそう思う。クランなら守ってくれるから」
借金取りからクランは守ってくれなかったじゃないか。
だが、アイデアとしては悪くない。
悪くはないが、クズスキルじゃ有名クランには入れない。
しかもクズ兄貴だったから、
何回か金をせびりに行って、叩き出されたからな。
そういう記憶がある。
いつの時代も情報を得るには金が掛かる。
ネット時代でも、貴重な情報は有料だ。
とにかく明日、ハンター協会で登録だな。
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