第1章23話:第5層

<フィオネたちの視点>


マップスキルを駆使しながら、フィオネたちは順調にダンジョンを進んでいった。


2階。


3階。


4階。


魔物を避け、罠を避け……


最短ルートで階段を目指す。


途中、どうしても避けられない魔物が数体すうたいいた。


それらの中にはゴブリンキングにも匹敵ひってきするような魔物もいたが、全てフィオネが瞬殺した。


エレクとキルティアは、もはや何も言わなくなっていた。


そして。


フィオネたちは第5層にたどりついた。


キルティアがつぶやく。


「だいぶ深くもぐってきましたね。さすがにあと1~2階ほどりれば最下層でしょう」


「そうだな」


とエレクも同意する。


とりあえず新しい階層に降りてきたのでマップを確認する。


(次の階段の位置は……ん?)


そのとき。


フィオネは別の反応に気づいた。


マップ上にピンク色の点が表示されている。


階段のある通路の途中にある位置だ。


(ピンク色……)


フィオネのマップスキルは、色によって対象を識別しきべつ可能だ。


黄色は自分たち。


赤色は魔物。


そしてピンク色は……


(魔物ではない。人間だけど、私が敵と認識している人間……ということ)


つまり敵対的な人間がいるということだ。


ジャランか?


……と思ったが、こんな下の階までジャランが降りてきてるとは考えにくい。


ただし敵対している人間が他に思い当たらなかった。


無視すべきだろうか?


いや一応、確認しておくべきか。


フィオネは言った。


「人間の反応があるわ」


「人間?」


エレクとキルティアが首を傾げた。


「このピンク色のマークのところ」


とフィオネが指差す。


「ふーん。なるほどな。冒険者か? 確認しにいくか?」


「一応しておいたほうがいいかも。このピンク色のマーク、動いてないのよね」


つまり気絶している可能性があるということだ。


一応、探しておいたほうがいいだろう。


「まあ階段と方角が一緒ですし、立ち寄ってもいいのではないでしょうか?」


とキルティアも同意した。


こうして3人はピンク色のマークを目指して進むことにした。


魔物を避けながら慎重に通路を進んでいく。


石造りの壁。


たいまつの明かり。


足音を忍ばせながら歩く。


やがて、目的のポイントにたどりついた。


「あれは……」


フィオネが目を凝らす。


金髪。


騎士のような服装。


見覚えのある姿だった。


(まさか……)


近付いていく。


そして―――――


「……ジャラン!?」


フィオネが驚愕の声を上げた。


床に倒れているのは、まぎれもなくジャランだった。


気を失っているようだ。


すぐ近くには、魔法使いも倒れている。


どうやら魔法使いのほうは死んでいるようである。


「……上の階から落ちてきたみたいだな」


とエレクが頭上を見上げてつぶやいた。


この部屋には天井がなく、むきだしの壁がどこまでも上に続いている。


キルティアが推測を述べる。


「おそらく落とし穴のトラップに引っかかったのかもしれませんね。あるいは大穴おおあながあって、うっかり足を滑らせたとか」


実際は大穴おおあなのそばでゴタゴタがあって、そのせいで2人が転落したのだが……


そんな一悶着ひともんちゃくがあったことなどフィオネたちは知らない。


ともかく。


(なるほどね。ピンク色のマークはジャランだったのね)


とフィオネは納得した。


自分が敵対していると認識した相手はピンクマークで表示される。


ジャランがそうだと言われたら、まあそうだろう。


「こっちの彼は死んでるな……。どうか安らかに」


とエレクが死体となった魔法使いに冥福めいふくを祈った。


「う……うう……」


ジャランがうめき声をあげた。


目を開ける。


「……ここは……どこだ……?」


ぼんやりとした声。


ジャランはゆっくりと身体を起こした。


そしてフィオネたちと目が合う。






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