第13話 涙のイエロー



――――その日は複数の戦隊に出動命令が発せられた。


「オル黄も別拠点だが向かったらしい。俺たちも出動だ」

『おーっ!』

さて、他の戦隊との共同作戦になるのだろうけど私たちは……。


出動車を降りてピタリと固まった。


「戦隊レジェンド」


「今日は共闘だ。よろしく頼む」

そう告げたのはレジェンドレッドだ。


「ああ。レジェンドレッド」

ホムラさんも平常心だが……マスク越しでもレジェンドブルーのセイカさんはピリピリしているように思える。


「まあお前は新人だし、何かあればすぐに呼べよ」

「あ、ありがとうございます。レジェンドイエロー!」

オウキさんはいつも通りで安心したけど。


「ふん……足を引っ張りそうな連中と……」

ボソリとセイカさんが呟く。


「レジェンドブルー。お前がレジェンドブルーだと言うことを忘れるな」

「……っ!申し訳ありません、レジェンドレッド」

セイカさんがレジェンドレッドの言葉に視線を外す。


「行くぞ」

「……はい」


「気にすんな、ルミナスイエロー」

「……ルミナスレッド」


「俺たちがやることは、街の平和を守ることだ」

「はい!」

早速支援と攻撃に分かれ黒タイツや怪物を倒していく。

今回は私も戦闘参加。大物はレジェンドレッドやルミナスレッドだけど……それでもふたりの役に立てるなら頑張らないと!


「ライトニングナックル!」

「ぎゃーっす!」

今日も元気にぶっ飛ばす!


「ルミナスイエロー!危ない!」

「きゃっ」

レジェンドたちの言葉に崩れかかったビルが迫る。さっき黒タイツをぶっ飛ばした衝撃で……っ!潰される……そう思った。


しかしその時イエローの戦闘スーツが私ごと押し倒すように庇う。


「オウキさ……っ」

「フローズン!」

その声はレジェンドブルーのものだ。


「……っと、無事だったか。ルミナスイエロー」

「は、はい。レジェンドイエロー」

オウキさんが身体を起こし、私を立たせてくれる。そして上には氷漬けになったビルと……こちらにやってくるレジェンドブルーの姿があった。今の……レジェンドブルーが……?


「助かった、レジェンドブルー」

オウキさんが告げる。


「あなたが行く必要はなかった。この足手まといのために」

足手まといって……私だよね。


「おい、そう言う言い方はっ」

オウキさんが怒鳴るが。


「やはり女は大人しくピンクで回復支援でもやっていればいい」

「そんな言い方……っ」

ピンクだからって回復支援に徹しなければならないわけではない。トキヤさんは回復支援向けだけど、前所属のハートピンクはポジションによってはバリバリこなすのに。

それでも……私が男ピンク会とは違って女だから?


「お前をイエローとして起用したホムラの気が知れない」

「……っ」

このひとは、ホムラさんに選ばれなかったから?

でも……。


「何も知らないくせに、勝手なこと言わないでください!」

うっすらと目尻に涙が浮かんでくるのがわかった。

ピンク科に落ちて、イエロー科の恩師に拾ってもらった。嫉妬や偏見で心が折れそうになった時、ホムラさんの言葉に助けられた。

「あなたはホムラさんのことを何も分かってないくせに!」

ホムラさんだって本当はボロボロだったのに……それでもヒーローとして私を守ってくれたのだ。


「何だと……?」

レジェンドブルーが迫る。


「お前の方こそホムラの何を……っ」

「やめろっ!」

それを制したのはオウキさんだ。


「そうだ、そこまでだ」

そして私を庇ってくれたのはあの時と同じ頼れる腕だ。


「そうだ、そこまでにしろ。レジェンドブルー」

しかもレジェンドレッドまで……っ!

「お前は何をしているんだ。お前の役目はここで後輩ヒーローを責め立てることか」

「……レジェンドレッド」


そして気が付けば互いの戦隊メンバーも集まってきていた。


「敵は全て倒した。撤収だ」

そう告げたのはレジェンドブラックだ。


「そうしよう。いいな、ブルー」

「……はい、レッド」


撤収していく戦隊レジェンドたち。


「俺たちも帰ろう」

ソウキさんの言葉に、ホムラさんが私を出動車に誘導してくれる。

大規模な討伐だったと言うのに、今日はマスコミたちもお立ち台を用意することはなかった。


――――そしてホムラさんがシェアハウスに帰ってもいつものように錯乱しなかったのは私のヒーローであろうとしてくれているのが分かって……余計に泣きたい気分だった。



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