第9話 たまには飲みに行こうか
――――今日も元気に出動した夕方。
「トキヤは男ピンク会の飲み会、ソウキは落研の同窓会、スミレはマイナーカラー科同窓会……か」
ヨウさんが告げた通り、今夜は私とヨウさんとホムラさんの3人だ。
「出前取ってもいいってトキヤは言ってたけどなあ」
「せっかくだから外食べに行く?」
「いいですね、ホムラさん!行きましょう!」
この3人だけでと言うのも新鮮だ。
「どこにする?」
「手頃なところなら俺黄か?」
いつものイエローの飲み会場!飲み処『俺はイエロー』である。
「季節限定フェアもやってるから飽きないしな」
「そう言えば。でも今は何フェアなんですかね?ホムラさん」
「串カツ」
「二度付け禁止!」
「よく分かってるな。それじゃぁ行こう」
二度付け禁止の境地へ!
――――とは言え到着すればいつもの雰囲気だ。宴会用ではないとはいえ、少し小さめの座敷に腰掛け串カツやつまみ料理。私はもちろんジュースだが大人2人はお酒である。
「私も二十歳になったら飲むようになるのかなぁ」
「なってもいいが……飲みすぎると二日酔いと言う恐怖に襲われるんだぁっ」
「ひぃっ!?」
ホムラさんの表情が悲壮にまみれている。
「水飲まねえからだよ」
「そうなの!?ヨウさん」
「そうそ。覚えとくと楽だぞ」
「そういやヨウさんって飲んだ翌朝も元気……」
「他の部分はガタいってっけどなー」
しれっと悲しい事実織り混ぜないでくださいよ。
「しかしこうしてると、昔を思い出すなぁ。ルミナスに入った頃の話」
「ヨウさんがルミナスに入った頃の話ですか?聞きたいです!」
「そうだなぁ……俺はグリーンだけどクラスもCでさほど優秀でもない。各地の戦隊を転々としてさ、20代半ばになるともうどこの戦隊も受け入れてくれないわけよ」
「それは……」
「それでも俺はグリーンから他のカラーに移行しようとしても取り留めた能力もない」
ヨウさんは支援系で優秀なのに。戦闘力だけが全てじゃない。
「戦隊としての仕事もないから、仕方なく裏方に徹しながらもグリーンのスーツは捨てたことはなかった。そうして数年過ぎた頃、昔世話になった先輩から事務所の社長をやってるって連絡が来てな」
それってうちの社長……?
「今度新しく結成する戦隊でグリーンを募集してるから入ってくれないかとさ」
「さすがは社長っ!見る目がありすぎますよ!」
今では支援系から出動車、重機の運転までできるもの!オル黄も出動車やら重機操れるのが謎だけど!
「でも当時はなかなか信じられなかったよ。何でこんな30過ぎたおっさんを?ってな。リーダーのレッドは19だって聞いてたし」
「……俺が卒業後に入った戦隊は半年も続かなくて」
初めてホムラさんから聞く前所属戦隊の話だ。
「どうしようもなくなった時に社長に拾われた。当時はオル黄の先輩たちしかいなくて、これから俺の戦隊を作るって言われたけど半信半疑で、情緒も不安定で」
当時のことちらっと聞いただけでも、相当なものだったのだと分かる。
「オル黄のバックアップとして戦闘に参加しても、終わったら即出動車に駆け込んで叫んで喚いて……」
今でも朝はそうなるけど……トキヤさんがいるから何とかもってるんだよね。
「でもさ、オル黄の先輩たちからはうんと可愛がってもらえたからやってこられた」
さすがはオル黄の先輩たちだ。だからホムラさんもキハダ先輩たちには緩いのかも。
「トキヤと出会って取り敢えずピンクだけは見付けたけどなかなか合うメンバーもいなくて。そんな時グリーンとしてヨウさんを紹介されたんだ」
「だな。最初は半信半疑だったけどよ。何つーか……当時はもっと追い詰められた顔してたから。このまま放ってはおけないって思ったんだよ」
「ヨウさん……」
当時のことを思い出ししんみりしているホムラさんの頭をヨウさんがよしよしと撫でる。
「今はだいぶいい顔、してるがな」
「ん」
確かになあ。憧れの人の裏にあった葛藤を、ルミナスに入る前は何一つ知らなかったけど。その裏には事務所や先輩たち、メンバーの支えがあったんだよね。
「だからまぁ、今夜も楽しもうや」
「ああ、ヨウさん」
「ほら、キキ。お前もだ」
「はい!」
はむっと串カツを口に頬張れば。
「おいひぃ~~っ!」
「ははっ、お前の食いっぷり見てると元気になるなぁ」
「ほふあはむ」
※ホムラさん
「ほら、もっと食いな。二度付けはダメだけど」
「はーいっ!」
私もルミナスやホムラさんの支えになれるように頑張らないと。そのためにはやっぱり……イエロー伝統の食いっぷり!これが今一番にできることだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます