第7話 ホムラのルミナスブルーだから
――――緊迫した雰囲気。
ホムラさんとレジェンドブルーの空気。
「ホムラ、さっきの収録、どう言うことだ」
「……何の話だ」
「何って……俺と接点がなかっただと!?この大嘘付きめ!」
ええと……これ、明らかに接点があると言うか関わりがあるんだよね。
「そこの紛い物のブルーの言われた通りに頷きやがって」
レジェンドブルーがホムラさんに言い寄ろうとするのを咄嗟に止めたのは……ソウキさんだった。
「どけ。紛い物のブルーめ」
「俺は正真正銘、ルミナスのブルーです」
「ブルーが何かも分かっていないくせに!」
「あなたが何をブルーとするかは知りませんけど、俺は俺なりのブルーとしてやっています」
ホムラさんの言うスマートなクールのブルー。みんなのムードメーカーでいつでも笑顔で優しくて、もしもの時はスマートにみんなをサポートしてくれる。
そんなソウキさんがいつもとは違って本気で怒っているのが分かる。そんなのホムラさんのために決まってる!
「そうですよ!ソウキさんこそ私たちには欠かせないブルーです!」
「はぁ?君は誰だ」
ま、まぁヒーローインタビューはマスク被ってるし分からなくても仕方がないんだけど。
さっきもマネージャーとして同行していたし。
「私はルミナスイエロー朝陽名キキです!」
「ああ……女性初のイエローだか何だか知らないが、妙な踊りをやってる田舎者か」
「は……はい!?」
な……何じゃコイツは!!たとえレジェンドでもオウキさんの後輩でも許さん!てめーは県民の敵かぁっ!皆のもの、槍を持てええぇっ!
「本当にルミナスは戦隊を何だと思ってる」
な……何よ、この硬派!イエローのスタンスを知らんのか!
「これが俺たち戦隊ルミナスです。そして俺がホムラのルミナスブルーです。部外者のあなたに文句は言わせません!」
「そうですよ!ホムラさんのブルーはソウキさんしかいません!」
「何も分かっていないくせに!」
その時レジェンドブルーがソウキさんを押し退け私に……っ。
「おい、やめろ!」
ホムラさんの身体が私を庇うのと同時にもうひとり。その顔を見てレジェンドブルーが手を止める。
「そこまでだ、セイカ」
「……オウキさん?」
レジェンドブルーも驚いたように固まっている。
「何故止めるんです!ホムラは……そいつらは!」
「お前こそ、戦隊レジェンドのレジェンドブルーだと言うことを忘れたか」
「……っ」
「お前がルミナスレッドに執着するのは勝手だがお前のレッドは誰だ」
「……」
そんなの決まってる。レジェンドレッドしかいない。
「お前こそ戦隊レジェンドのブルーとして相応しい言動を心がけろ」
「すみませんでした」
県民の宿敵が(※言い過ぎ)大人しくなった!さすがは県民のドン・オウキさん!(※戦隊の世界での話です)
「あとな、キキは俺たちイエローの大事な後輩だ」
「オウキさんは認めてるんですか!?妙ちくりんな踊りでふざけるイエローの、しかも女を!」
「男女は関係ねえっ!男ピンク会に言ってみろ!ひもかわうどん絞めだけじゃすまされねぇぞ」
かんぴょう絞めやもやし旋風、もちもちきりたんぽビンタが待っていると言うことか。
「それとな……妙な踊りと言ったか」
「そうです!ふざけすぎています!」
「ふざけてんのはてめぇだぁっ!俺たちの郷里を馬鹿にするやつぁ……県民総出でぶっ潰す」
確か男ピンク会にもいるはずだから……最強ね!
「ひ……っ」
レジェンドブルー、今朝のヒーローインタビュー見てなかったわけ?オウキさんの出身県を知らなかったのだろうか。
「ふんっ。分かったのならとっととけーれ!」
「けーれ!!」
「……っ、分かりました」
レジェンドブルーが悔しげにこの場を後にする。
「すまねぇな、キキ。お前らも」
「いえ、こちらこそ!オウキさんこそどうして……?」
「別の収録で来てたんだよ。収録終わったらアイツだけどっか行ったと思ったら……お前らの収録見に行ってたのか」
「あはは……みたいですね。いつの間に」
「でもキキが出るんなら俺も見に行けば良かったな」
「いえ、私はマネージャー代行なので!出演はしてないですよ!」
「そうなのか?そうだ、マネージャーと言えば、何故かオル黄のマネが迎えに来てるぞ」
オウキ先輩の視線を追えば、手を振って駆け寄って来る女性が見える。
「キキちゃんたち!無事で良かった。オウキさんが来てくれなかったらうちのオル黄を緊急出動させようかと」
「いやいややめてくださいよ!ヒマリさん!」
……絶対やかましくなるから。
「うちの隊プロは少数精鋭なので。今日はオル黄スタッフにも協力してもらってたんです」
「そういやいつものマネ子がいねぇな」
「それがお腹を壊して……もう良くなったんですが」
「そっか、それなら良かった。気ぃつけ帰りな」
「はい!そのオウキさんは……」
「うちのマネージャーが車でうちのレッドと待ってるから」
わぁ……その車にレジェンドブルーは戻ったわけね。自業自得だと思うけど、本当の地獄はこれからだ。
――――こうしてシェアハウスに戻った私たちはスミレちゃんにゼリーを差し入れホッとひと息ついたのだが。
「キキちゃん大変、ちょっと来てくれる?」
「え?ソウキさん?一体どうしたんですか?」
恐る恐る促されて玄関に向かえばだ。
「おっしぇーいっ!シャケ持ってきたぜーっ!俺たちゃオル黄!」
『フウウウゥッ!!重機でドーンッ!!!』
このうるさい連中は……っ!
「何してんですかオル黄の先輩ども!」
つまりは戦隊オールイエローの5人組。お揃いの真っ黄っ黄『All for yellow,yellow for all』ジャージ。リーダーのイエローであるキハダ先輩なんて……何で鮭まるごと持ってきてんの。
「ヒマリさんから聞いたぜ。オウキさんが仲裁に入ったって聞いてなかったらレジェンドに乗り込んでたところだぜ!」
「いや、やめてくださいよ。事務所問題になりますって」
「はっはっはっ!終わり良ければいいじゃねぇの!」
ことを荒らげようとしたやつらが何を言う。
「何はともあれ、お前を元気付けようと思ってな!イシカリ鍋作りに来たぜ!」
「ああ……それで鮭……」
つーかまるごと1本。でも他の具材も買ってきたようだ。
「けどトキヤさんやホムラさんにも了解とらないと……てか鮭、捌けるんですか?」
イエサポの時も鍋はご馳走になったが。
「無論。これでも魚屋の息子だかんな!」
うーん、自分で捌いてくれるなら。ホムラさんとトキヤさんに事情を説明する。
「まあ、オル黄の先輩たちにはルミナス結成当時から世話になってるから」
確かに小さな事務所で2つだけの戦隊だもんなあ。
「土鍋2つ、出してきますよ」
トキヤさんのお許しも出たことで、オル黄軍団が鍋の準備を、私たちも手伝う。
「スミレちゃんは病み上がりだからゆっくりしてて」
「サンキュ、キキちゃん」
「因みにいくらの醤油漬けも持ってきたぜ!魚屋の特製な!」
「おおーっ!」
実際キハダ先輩のいくらの醤油漬けは絶品なのだ。
ぐつぐつと煮立つ石狩鍋の傍ら、イクラ丼もいただく。
「うわ、やっぱりうっま」
「すごい、既製品を食べたことあるけど全然違うね」
トキヤ先輩も驚いてる。
「だろう?何たって産地直送!」
なんと……。
「知ってるか、ホムラ」
「何すかキハダ先輩」
みんなで頃合いになった鍋の具材を取り分けつつもキハダ先輩が語り出す。
「俺ぁ生粋の道民だ。つまり関西人お前が……道民の舌を唸らせる何か面白いことを言え」
無茶振り過ぎるって!
「因みに『でっかいどう』とかつまらないこと言ったらしばくぞ」
この人関西人よりも容赦ない。
「ええー……俺そう言うのはちょっと」
ほら困ってるじゃないですか!ホムラさんの精神が崩壊したらどうすんですか!
「バカ!そう言う時こそ先輩の出番だろ!先輩の胸を借りんかい!」
自分で振ったくせにめちゃくちゃだなこの人。
「そうだそうだー!」
「何たって俺らは……」
『All for yellow,yellow for all!!』
「つまりは先輩を頼れってことだろ?」
ヨウさんが上手くまとめればオル黄軍団がうんうんと頷く。
「ついでにオウキも呼んどくべ」
「ちょ、キハダ先輩!?」
「あ、来るって」
……マジかよ。
しかしこう言う時に頼れる、励ましてくれる先輩がいると言うのも……。
「ふふっ。頼もしいですね」
「まーな」
トキヤさんにホムラさんが頷く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます