第19話 神 VS 人

次の日。


私たちは、他の生きている囚人たちと共に仕事会場に到着した。


ラストプリズンに収監されていることもあってか、殺伐とした人たちが多い。ただ、その中にも冴えない感じの人も少しいるが。


ちなみに収監されている女性は私しかいない。


今私たちのポイントは-100点なはず。


後200点も取ればここから出れるということか。




「あら。ご機嫌よう。」


アマネは空中から急にぽっと出てきた。


アマネはそのまま、空中に浮いている。


流石腐っても神。


羽もないのに空中に居座れる。


普通にできないようなことを平気でしてくる。


「人数はいるみたいね。」


すると、囚人の一人が行動に出る。


彼は隠し持っていた小さなナイフを手にかなりの高さのジャンプをする。そして、アマネのいる場所に到達し、アマネをナイフで切りかかった。


アマネのいる場所はこの建物の天井より少し下くらいであり、かなり高い位置にいるはずなのだが、それでも届くジャンプ力は彼自身も身体能力は高かったのであろう。


しかし、彼女がナイフで切られようとした時、彼の体が爆発した。



ふーくんさん以外の皆は口を開け呆然としている。


赤い血のシャワーが私たちに降りかかる。


血まみれになったアマネはこう告げる。


「雑魚には私は興味ないの。私をあんまり怒らせないでくれる?」


皆は何も言えず硬直していた。


ふーくんさん一人だけは、静かに笑みを見せた。




色々とハプニングはあったものの、今現在私はタオルをひたすらおっている。


畳むだけではなく、タオルを1枚とり、畳んでから畳んだタオルを積み重ねていくこの作業。少なくとも1枚に0.5秒はかかってしまう。つまり、1秒で2枚、1分で120枚、1時間で720枚…




あれ…無理じゃない?




普通に考えて、10万枚が無理なことが判明した。


ふーくんさんの方が、もっと無理なことがわかる。



少し遠くにいるふーくんさんの方を見る。



彼は机を顔に伏せ寝ていた。。。



諦めてる…。



私は諦めず、たたみ続けた。だが到底10万枚など畳めるはずもなかった。


仕事の終わりの時刻は8時である。現在7時半。終盤にさしかかっていた。


しかし私が畳んだ数は半分すらもいってなかった。


すると、隣に座っていた気が荒い男性が私のいすを蹴った。




椅子は倒れガコンという。


私は椅子から離れ、床に叩き落とされた。


「お前さぁ何本気でやってんだぁ?」


私は彼に顔を踏まれていた。そして、力がだんだん強くなっていく。



「ノルマ10万枚なんです!お願いします!やめてください!」



「お前アホだろ?ここはラストプリズン。他人の物を奪えば俺のノルマは達成されるんだよぉ。」


え!?そんなバトル要素の強い裏ルールがここに存在するの!?



「ちなみに、俺のノルマは5千だ。お前はここに入ったのが運の尽きだな。」


そんな…。5千って簡単じゃん…。


自分で畳んでよそれくらい…。


というか、ここで盗まれたら私の努力が全て水の泡に。。


それだけは、それだけはされたくない!


私は、彼の足を手にもつ。


そして、威力の低い電撃の魔法を使う。


「なんだぁ?強めの静電気か?」


え?きいてない…?


前使ったときは泡を吹いていたのに!


予想外の出来事に私は戸惑う。


服に火をつけようかなと思ったけれども、ここにはタオルがたくさんある。


大惨事になりかねないので、やめておいた。


火でやらかした後だしね…。火って小さくても取り扱い注意の代物だ…。


それならもう力で解決するしかない!!!


私は片手で彼の足を持つ。そして、力を最大限いれ、彼を上に少し持ち上げた。


「おいおい、俺って一応80キロくらいはあるんだぞ!?貧弱な体なのに片手で持てるようなもんでもねぇだろ!!!」


私は昔から不器用なのか力が入りすぎているからか、色々物を壊しやすい性格だった。


そのためお金を稼ぐ際、皿をめちゃくちゃ割ったりしたわけだが…。


今は、その力加減の知らなさを利用させてもらう!



私は立つ。



そして、片手で彼を持ち上げた。



「いっけぇ!」



私は彼を野球のピッチャーのように投げた。


彼は首が見えなくなるまで壁に刺さった。



「はい。終了。ノルマは達成できた?」



アマネが朝と同じように現れた。


私はタオルを畳んだテーブルの方を見た。


あれ!?タオルが一つもない!


おそらく他の囚人が私の畳んだタオルを盗んだのであろう。


私はダメ元でふーくんさんの方を見る。


なぜか、タオルが大量に積まれてあった。。。なぜ!?



「達成できていないのは、二人みたいね。」



それは、私と先ほど私が投げた囚人だった。







私と喧嘩を仕掛けてきた男は特別な部屋に連れてこられた。


この部屋は40畳ほどの大きさはあるだろう。


「卑怯じゃないですか!私ちゃんと畳んでましたよね!」


アマネに抗議をする。


隣にいた男性はこちらを見て、マジかよ…とひいていた。


「でもどちらにせよ10万枚は畳めてないでしょ?」


「一日中畳んでも7200枚くらいしか無理ですよ!」


でもどうして、ふーくんさんは畳めていたのだろうか。




「失礼。」




特別な部屋に入ったのはふーくんさんだった。私のこと助けに来てくれたの!?


「あら、部外者は立ち入り禁止。」


アマネは後ろ装備している自分の身長より大きい大剣を出した。


今の間に何があったの!?


「二人とも、喧嘩はやめて下さい!」


「うるせぇよ。ガキが。」


ふーくんさんになぜか睨まれた。


「待ってください!点数を100点取らないといけないんですよ!」


私はふーくんさんの腕をつかんだ。


しかしふーくんさんに腕を振り払われる。


その力が強かったからか私は壁まで吹っ飛んだ。


首まで壁に突っ込んでいた囚人は、ザマァ見ろ!と私を嘲笑っていた。


それどころではない。このままだと、アマネとふーくんさんが戦うことになってしまう。


恐らくそうすることで、点数も下がっていくことだろう。


そしてついには脱獄不可の段階まで…。


ふーくんさんは手を銃のようにし、手首を上に捻る。



「吹き飛べ!」



アマネは一瞬にして姿を消す。


その瞬間アマネがいたところからかなり爆風が現れる。


一緒についてきた男の人は強い風によって壁を突き破り遠い彼方へ吹き飛ばされていった。


これ、部屋が割れちゃう…!!


壁にヒビがかなり入っていく。


「ふーくんさん!落ち着いてください!」


姿を消したアマネはふーくんさんの背後に回る。


大剣を振りかざすも、ふーくんさんは間一髪で避ける。


「ふぅん。近距離は苦手ね。」


「…。」


ふーくんさんは、アマネに向かってまた手を銃のようにする。


「わざわざその仕草する必要性あるのか。」


ふーくんさんは、その伸ばした手の腕を切られた。


腕が片方なくなり、血が吹き溢れてくる。


ふーくんさんは、少しよろめいたが意識を取り戻し、床に落ちていった切れた腕を取りに走る。



アマネが、させまいと目の前に瞬時に現れる。



「リンク魔法!」



ふーくんさんはアマネにリンク魔法をかける。


つまり、アマネは今腕を切られている状態と同じ痛みがあるはずだ。


「そんなもの私に通用しない。」


アマネは大剣を振る。


平然としているアマネに構わず、大剣の軌道を避け、自身の腕を拾う。


そして、自分の亡くなった腕の方に付ける。


無詠唱で治癒魔法を腕の傷口にかけていた。


「ここは、詠唱と魔法陣が使えないようだから治癒魔法に時間がかかるのだが…。」


ここは、詠唱と魔法陣が使えないのか…。しらなかった。。。


でもそれだと、無詠唱だと使えることにはなるのか。


今まで無詠唱しか使っていないので、気が付かなかった。


「近距離戦が苦手なのにも関わらず、私に喧嘩をふっかけたのが運の尽きね。」


「うるせぇよ。」


この会話の間に、ふーくんさんの腕が完全に元通りになった。


思ったより早く治った…。


「その前に。」


ふーくんさんが私の方に来た。


そして、私は腹パンをされた。


あまりにも強い腹パンだった為、私はそのまま気絶をしていった。。。





「俺は確かに、お前には勝てないよ。」


「ならなんで、私に喧嘩をふっかけたの?」



俺は、こいつの能力を完全に理解している。


朝に見た、空中に急に現れたアレ。


瞬時に消えたり現れたりする能力。


戦闘する時にも急に現れたりする。


皆は、これらの能力に対して彼女が邪神だからと疑問を持つことはなかった。

これらは、瞬発力、速さ、なにも使ってはいない。


これらは全て彼女の持っている能力。



ワープ能力。



俺は運がいい。あの女の使った能力、『ワープ能力』を使えるやつがたまたま見つかるのだから。



「俺が一つでもお前に傷をつけることができたら、質問に答えてくれないかなと思って。」


「面白い。私にお前の強さを見せて。」


アマネの顔が笑う。




そこからは、死闘が繰り広げる。


確かに彼女の言うとおり、俺は近距離で戦うことを苦手とする。恥ずかしい限りではあるが、近距離戦はアリシアの方が圧倒的に強い。


勿論俺は、そこらのやつらよりは近距離戦でも余裕で勝てるであろう。


しかし、自分よりも同じレベルか上のレベルになると話は変わってくる。



傷を一つ付ける。


だがそれができない。



俺はどうにかして距離を取りたいのだが、彼女がワープ能力を持っているためすぐに詰められる。相性が悪すぎる。加えて、彼女は近距離戦で戦うため避けるので精一杯だ。


詠唱なしで魔法を使うことはできるが、彼女を翻弄するほどの威力の高い魔法は、詠唱か魔法陣を使わないと使うことはできない。


と、なると、詠唱をしながらこれらの攻撃を避けるしかないのか…。


詠唱もデメリットはある。詠唱聞かれていた場合、何の魔法を使用するかが分かりやすい。その上魔法を使うその瞬間ワープをされる可能性が高い。


魔法陣は時間がかかりすぎる。


裏で、魔法でチョークなどを動かして線を描こうものなら音や視界で気づかれやすいし…。


そういえば、、、うまく動けば、いけるか…?



俺は彼女と対峙する。今の状況を見渡す。


あの魔法なら…いけそうか。



俺は、先ほど切られた所に移動する。


「逃げてるだけでは傷はつけられない。」


彼女は大剣を振り下ろす。


俺は腕を切られる。そして、切られた腕は先ほどと同じ方向に行き、床を引きずって止まる。調整はうまくいった。


俺は移動を繰り返しながらアマネの斬撃を頑張って避ける。0.5mほどの差で避けているため緊張が走る。


俺は、真ん中に移動する。


そして、魔法で動かしていた切られていた腕をこちらに引き寄せる。


床には切られていた腕を動かして、文字を描いており、尚且俺が移動している間に出血している腕を移動して描いた円と模様。


あいつの書いた破滅魔法。血で書いていたのが役に立った。



「光闇魔法。バーサスロウ。」



魔法陣から、大量の光のレーザーが出力される。

俺はその光の中へと消えた。



そのあと、建物は天井がなくなり大きな穴があいていた。


俺達は高出力レーザーを食らった。


俺は念のため光の消滅魔法を自身にかけていたものの魔法の出力が高すぎてかなりのダメージを食らった。


その上、腕が切られたままだったわけで、出血しすぎたこともあり、俺はその場で倒れた。




「ここは…。」


「私自身近距離戦に集中しすぎていたせいで魔法陣に気づけなかった。」


俺はアマネの膝で寝ていた。


「しかし、私は能力で魔法陣の外に出ていた。なので無傷。」


俺は目を閉じた。ダメだったか。。。


「まあでも、久しぶりに思った以上に楽しめた。やはり私が見込んだ男だな。それで聞きたいこととは何だ?」


彼女は俺の頭を撫でている。


「子供扱いをするな。」


俺は彼女の膝から離れた。


「膝にいれば、特別に+500点にしてやろう。」


「そういえば今何点なんだ?」


「-500点だ。」


その採点システム、ガバガバというか適当だろ。


まぁここは大人しく膝で寝とくか。。。


そうして俺はアマネの膝に戻る。



「お前のワープ能力を使う方法について聞きたいんだ。」


「ワープ能力は私にしか使えないはず。」


「使える奴がいるから聞いているんだ。」


そう、俺が殴りそこで倒れているあのキチガイ女だ。


殴る必要性はなかったものの、あいつが何かしでかしたとき面倒なことになりそうだったため殴った。


彼女は首を傾げる。


「俺達は、もといた場所からワープしてここに来ているんだ。お前は信じられないようだが信じてくれ。」


「そんなはずはないはずだが。」


アマネは何も理解してくれなかった。


「それなら私がワープして元の場所に戻してやろう。」


「場所的にお前には戻せない。」


「どういうこと…???」


そりゃ、彼女からしたらそうだろうなと思う。


俺だってそうだ。俺だって信じられない。


仕方ない、あいつのことをいうか。


「恐らくなんだが…彼女は…。」


事情を説明する。


「それはあり得ない。と言いたいところだけど、それだと色々と辻褄が合うところが多いので納得する。一つだけ解せない部分はあるけれども。」


やっと納得してくれた。


一つだけ解せない部分は俺も理解はできる。


だが、実際にできてしまうのだから仕方がない。


「私の能力は、私のしたいようにしようとすれば使える。だから簡単だ。」


「もっと具体的に教えてほしいんだが…。」


「自分の思考とともに、勝手に使える感じ。」


直感的に使用している感じか…。


「お前だって、直感的に能力を使用しているだろう。」


「そんなことはない。」


恐らく、手を銃の形にしたところの話だろう。あれは、魔法でも何でもないただの自分が昔から持っている謎の力だからな…。


確かに彼女の言うとおり別に銃の形にしなくてもいいのかもしれない。昔読んだ本で手を銃の形にして、銃弾を出すキャラがいてそこから真似したら何故か似たようなことが出来た。だからそういう風にしているだけなのだが。



「まぁ、参考にする…。」


彼女にこれ以上聞いてもそれ以外の答えはないと思う。


「そんなことよりも、お前を強化したい。近距離も戦えるようになれば、私の理想に近づく。」


そういえばこいつは、自分よりも強いやつと戦うのが目的だったか?


「断る。おれは早く元の場所へ戻りたい。」


「−500点。」


「勝手にいっておけ。」


俺は彼女の膝を離れた。




「あ…。」



俺は、壁に張り付いていたやつをおぶって部屋の外に出た。そういえば、もうひとりいなかったか?まぁいいか。

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