第11話 おでかけ
「ガルド、ひかりちゃんの生活に必要な物を、街で買って来ようと思うの。
服のサイズを合わせに、私と一緒に行って来るわ」
「……うん。そうか、気をつけて行ってきてくれ」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。うん」
しまった。昨夜のひかりの姿をうっかり思い出して、返事が遅れてしまった。
ガルドはさりげなく話を逸らす。
「じゃあ、馬車を手配しておくか?」
「量が多くなると思うから荷馬車が良いわね」
「わかった。手配しておく」
食事が終わるとガルドと別れた。
リサリアとひかりは部屋に戻り、すぐに街へ出発する準備に取り掛かる。
リサリアはラフなブラウスとズボンの格好から、グリーンのドレスに着替えた。
胸元は黒いレースで切り替えられ、繊細な金の刺繍が肩から裾まで施されていて、とても上品だった。
一つに纏めていた緩いウェーブのかかった金の髪をハーフアップにして、化粧を施すと美しい貴族女性に様変わりした。
「わあ…リサリアさん綺麗。」
「ありがとう!ひかりちゃんは世界一かわいいわ!」
ひかりは、モデルみたいに迫力美人なリサリアに感嘆のため息をついた。
ほんのり顔を赤らめて、うっとりしているひかり。
リサリアはあまりの可愛さに声を上げ、膝から崩れ落ちた。
ポクポクと馬車をゆっくり走らせ、街へ向かうのどかな道を進む。
ひかりは東京の外れに住んでいた。
この世界の街の外れは、石畳の道に家屋が並んでいて、ずっと素朴だった。
御者はリサリアで、横にひかりが乗っている。
初めての馬車に、ひかりはウキウキと周りを見渡していた。
チチチ…と鳥が飛んでいくのを楽しそうに見上げるひかりに、リサリアも上機嫌だった。
「緑が多いんですね」
「今から行くのは、王都の東の中心街ソラーレよ。色んな店があるから、ひかりちゃんの気に入る物が見つかるといいわね」
買い物…今回は保護の為に生活必需品を買いに行くけど、この先は自分でお金を用意しないといけないよね。
どうしよう…私に出来る仕事ってあるのかな。
「リサリアさん、私が出来る仕事ってないですかね。生活するお金を稼がないと」
その言葉にリサリアは目を丸くする。ひかりは保護対象だが、大人だとすっかり忘れていた。
「そうね…。まずは働き口よりも王城へ行かなきゃいけないわ。
異世界人は国の保護対象なの。
王様に謁見をしてから、その後の生活基盤を整えるといいと思う。だから、それまでは騎士団に支払わせてちょうだいね」
「え!?王様?」
リサリアは、ひかりの全ての世話をする気でいたので話を逸らした。
慎ましいひかりちゃんが働き出したら、私のプレゼントなんて遠慮しちゃうわ!なるべく引き伸ばすわよ!
「もうすぐ着くわよ〜。」
「おお、すごーい!」
街の中心に近づくにつれ緑が減り、建物が増えて賑やかになっていく。
検問所を通り過ぎると、ファンタジー映画やゲームの世界のような街並みにひかりは興奮を隠せなかった。
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