ベテルギウスの願い

るなねこ

第1話

ベテルギウスの願い

ベテルギウスの願い

十一月中旬頃。

それは見える。

ふと空を見つめると、そこには一際輝く星がある。

それは、ベテルギウス。

ベテルギウスは642.5億光年の星だ。

そんなベテルギウスは、いつ爆発してもおかしくない。

正確にいつ死を迎えるか分からないベテルギウス。

約百万年後かもしれない。

ひょっとしたら一年先、

あるいは明日かもしれない・・・。


僕は好きな人がいる。

正確にはお付き合いしている彼女だ。

彼女の笑顔は素敵で守りたくなる。

いつも、笑っていて僕も釣られて笑顔になる。

そんな彼女は星が好きだ。

よく、一緒に天体観測をしている。

流れ星を見に行った時は感動して隣で泣いていた彼女。


そんな彼女は、病気を持っている。

彼女はガンだ。

いつ居なくなってもおかしくない。

そう、ベテルギウスのように。

だから、生きていられるうちに彼女のやりたいことを叶えてやるのだ。


ガンはある意味「幸運な病気」と呼ばれている。

僕はそれは不謹慎だと思う。

だが、ガンはすぐ亡くなってしまう病気でもない。

残される期間は年か月か週か日かわからないが、それでも時間は幾分かはあるのだ。

だからこそ、彼女を生きているうちに幸せにしたい。


しかし、彼女の病気は徐々に悪化して行く。

弱っていく彼女を見ると心が痛む。

突然彼女がこう言い出した。

「貴方とベテルギウスを見に行きたい。」と。

僕は彼女を車椅子に乗せてベテルギウスを見に行った。

とても綺麗で、そして彼女があと少しで居なくなってしまうと思うと涙が出そうになるのを堪える。

ベテルギウスのように輝いてる彼女。

いつまでも、輝いて欲しい。

この先も肩を並べて歩んでいきたかった。

僕はベテルギウスに彼女が元気になるようお願いした。


そして、彼女の手術の日が来た。

成功する可能性は非常に低い。

だが、僕は治りますようにと強く願う。

ベテルギウスにお願いした願いがかなって欲しい。

そう思う一心。

手術は終わった。


彼女は一命を取り留めたのだ。

僕はその場で号泣した。

ベテルギウスの願いは叶ったのだ。


いつ爆発して亡くなるか分からないベテルギウス

そんなベテルギウスもいつまでも輝いて欲しい。

僕はそう願いながら彼女と今日も笑い合った。

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ベテルギウスの願い るなねこ @runa_neco

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