ガチャ

ロックホッパー

 

ガチャ                          -修.


 出張先の空港に到着した俺は、混雑を避け、到着ゲートから少し離れたトイレを目指した。離着陸の際の窓際の席からの景色は何度見ても捨てがたいものがあるが、その反面、フライト中に、通路側の席でくつろいでいる人にどいてもらってトイレに行くのははばかられた。このため着陸したときにはだいたいトイレに行きたくなる。


 目指したトイレへの通路は予想通り人気がなかった。そして俺は、通路の少しへこんだ場所にガチャが1台置いてあることに気付いた。

 「こんなところに・・・」

 全体が黒一色で金の縁取りがあり、中にどのようなカプセルが入っているのかは見えない。正面には・・・

 「あなたを虜にする魅惑のガチャ 無料キャンペーン中 一人1回限り」


 実にあやしい、だいたい、こんなところ1台だけ置いてあるのも不自然だし、タダって・・、これはきっとエッチなお店の勧誘に違いない。しかも、一人1回ってどうやってカウントするっていうんだ。何回でも回し放題だろう。俺は疑問しか浮かばなかったが、タダなら、ということでレバーを回してみることにした。

 「ほれ・・」


 俺は一瞬気を失ったかもしれない。気が付くと俺は大きさ2mほどのカプセルの中に居た。上半分は透明になっており、そこからのぞくと、このカプセルと同じようなカプセルが無数に並んでおり、中には人が一人ずつ入っている。俺は外に出ようとしたが、カプセルはびくともしなかった。

 「閉じ込められたな。ここはいったいなんだ・・・」


 異星人たちは地球から遠く離れた宇宙船に居た。

 「また一人捕まえましたよ。我々の研究チームの成果はすごいですね。」

 「そうだな。地球人はついレバーを回したくなる習性があるらしい。ちゃんと『虜にする』って書いてあるのにな。これなら地球征服も時間の問題だな。」

 

おしまい

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