第2話 生ノースマン
第一章 点数稼ぎ
先々週の土曜日、新千歳空港にできたガンダムベースの抽選入場権が当たったので、朝10時入場目指して8時に家を出発して、新千歳空港に向かう。高速道路をぶっ飛ばして、新発売のガンプラ(ゲルググ)も買えて大満足だった。ふと、新千歳空港限定千秋庵「生ノースマン」が売ってた。4個入りのパックが残り5個。限定だし食ったことなかったし、ちょうど並んでいる人もいなかったので、すぱっと買えた。
家に帰って食ってみると、結構うまくて、これはおすすめだと思った。でもさすがにおっさん、4個は食いきれない。賞味期限は今日いっぱい。そこで灰色の脳みそをフル回転させて、行きつけのスナックのおねーさまにお土産として持っていって、点数を稼ごうと心に決めた(なんの点数?)。 推しのおねーさま(ゆうきちゃん)に、LINEで「今日出勤する?いきおいで空港限定の生ノースマン買ったんだけど、食いきれないから持っていくわ」(変に警戒されないよう、言い訳めいた理由を添える。我ながら姑息だが、背に腹は代えられない。)送信すると、「出勤するー」と生ぬるい返事が返って来たので、めずらしく土曜日に飲みに出ることにした。
早い時間に行ってもゆうきちゃんがいないかもしれないので、まずはひとりで焼き鳥や「博多かわ屋」に行って、かわ焼きとか、しぎ焼きとか食べる。 思いのほかおいしく、1人で盛り上がり、ぐいぐい食べて飲んで、〆に豚骨ラーメンでも食うかと思ったときに、時計を見たら21:30くらいになっていたので、焦って店を出て、スナックに向かう。
いつもの入り口の重い木製ドアを開けた。カウンターにはずらっと客がいて、酒の匂いが充満し、下手なカラオケが耳に触る。右手のボックス席に8人程度の団体客がおり、わいわいがやがやしている。左手の奥のボックス席にも4人の客が座っている。これは満員かもしれない。座れないかもしれない。と呆然と立っていたら、奥のほうから「席あるよー」と、ママに声をかけられて、奥のカウンター席、おっさんとおっさんの間のひとつだけ空いていた席に通された。なんと昼にLINEしたゆうきちゃんが1つ席を取っておいてくれたとのこと。よくできた娘だ。でも気を遣わせちゃったなと、心の中で思う。
軋む椅子に腰かけると、ゆうきちゃんがオレのキープボトルを持ってやってくる。「いらっしゃい、いつものロックでいい?」「ああ、今日は混んでるね」「そうだねーもう満席だよ」他愛もない会話をしている間に手際よく、『いつもの』バーボン、『オールドクロウ』をロックグラスに入れる。ここのスナックの氷は製氷機で作ったものではなく、氷屋から買った一枚氷を割って使っているため、溶けにくい氷であり、ロックにするとその違いが顕著になる。水っぽくならずにバーボンから温度だけを奪ってくれる。カランコロンとマドラーが氷と奏でる音が心地よい。「はい、どうぞ」ゆうきちゃんが笑顔でロックグラスを渡してくる。「あ、ありがと」まぶしい笑顔に少し照れながら受け取る。
カウンターでひとり、酒をちびちび飲みながら、周りの様子を窺うと、カウンター内にママ、あさみさん、ゆうきちゃん、めぐみさんと4人のおねーさまがいる。再び灰色の脳みそを動かす・・・ノースマンは3個しかない・・・なるべくこっそりゆうきちゃんに渡して、うまいこと分けてもらおうと思い機会を伺う。ママに渡すと気を使ってママ自身が食えなくなる確率が高い。それは避けねば。
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