クライマックスの果ての果て

未熟者

しつこい幽霊

「さっさと成仏しろーー!!!」

そう言ってお札を幽霊の額に貼る男。

すると幽霊の体は灰となり消えていった。

「次こそはやっただろ.....」

男は振り向き帰ろうとする。

すると、部屋の隅にあった椅子がガタッと揺れ動いた。

振り向き、椅子に目を見やるとなんと幽霊が椅子に座り、腕組みをしていた。

「お前、何偉そうに座ってんだ!!!」

すかさず男はツッコミをいれた。

――――――――


【終わらせ屋】

この男が働いている事務所だ。

この事務所はいわゆる何でも屋で、色んな依頼が舞い込んでくる。

ここで働く男が星導 聖也(ほしみち せいや)だ。

聖也の元にはいつも何らかの依頼が舞い込んでくるが、その内容はどれもおかしなものばかりだった。

おばあちゃんの形見に足が生えて逃げ出したとか、

愛犬のペガサス4世に好きな犬がいるから付き合わせて欲しいとか、ふざけた内容ばかりだった。

ある日、こんな依頼が聖也に託された。

「家に居る幽霊がなかなか成仏してくれない」

という依頼内容だった。

聖也はこの話を聞くなり「え〜...いやですよ。俺、幽霊とかそんなの無理なんですけど....」

しかし、仕事は仕事なので仕方なく引き受けることにした。

―――――――


家に行き、ドアを開け中に入るとソレはいた。

「welcome」と書かれた紙を持ち笑顔で待っていたソレが.....

「芸能人が来日した時のサプライズか!」

すかさずツッコミを入れる聖也。

依頼人が困った顔で聖也に言う。

「あんな感じなんですよ。ユーモアあっていいなって思ってたんですけど、ウザくなっちゃって」

「マジ、その気持ちわかるわー...殴りたくなる顔してるもん」

そう言いながら幽霊に近づき、カバンからお札を取り出した。

それを幽霊に貼った。

すると、眩い光が幽霊を包み、灰になり消えた。

「あれ?成仏しちゃったよ?簡単じゃん」

依頼人に仕事が終わったことを伝えようと振り向くと、依頼人の肩に手を乗せて寄りかかっている幽霊の姿があった。

「お前、何偉そうにしてんだ!」

そう言ってお札を貼るがまた現れる。

お札を貼るが現れる。この繰り返しが行われていった。


―――――――ということがあって今に至る。

聖也も椅子に腰かけ幽霊に問いかける。

手には大事そうにwelcomeの紙が掴まれていた。

「お前、それが未練か?!」

幽霊は首を縦に振った。

(マジかよ.....)

「ちょっ、幽霊さん?あなたはいったい何で成仏するんですか?」

そう問いかけると幽霊は首を傾けた。

「そうかー.....潔く成仏するよう頑張ってくれ」

聖也は気づく。

(あれ?こいつ物理攻撃効くんじゃね?)

今までだってそうだ。紙を持ち、お札をくっつけられ、椅子に座っていた。

「ちょっとこっちこい」

手招きをして幽霊を呼ぶ。

幽霊が聖也のもとへ行き、聖也の前で立ち止まる。

聖也は手を伸ばし、幽霊に差し出す。

「ちょっと握ってみて」

そう言われ、幽霊は手を差し出し聖也の手を握る。

「あー!!!お前、物理効くじゃん!」

そう言われ幽霊は驚き、自分の手を交互に見る。

「なんでお前が気づいてなかったんだよ!」

そうなると攻撃の幅が広がる。

聖也はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、幽霊に視線を向ける。

「覚悟しろよ?」

幽霊は後ずさりをする。


聖也はバックの中から釘バットを取り出す。

「お前、いい加減にしろよ?さっさと成仏しやがれ」

幽霊はその光景を見て、恐怖に震え上がる。

立場は完全に逆転した。

聖也は釘バットを振り回し1歩、1歩と幽霊に歩みを進める。

それに合わせ幽霊も1つ、2つと後ずさりをする。

ついに幽霊は壁に追いやられ、聖也が釘バットをスイングする。

見事にバットは幽霊を捉え、命中する。

幽霊は回転しながら大きく吹き飛ばされ、地面へ倒れる。

起き上がり、頬に手を当て涙ぐみながら聖也を見る。

「俺が悪いみたいになってんじゃん」

この状況はどう考えても聖也が悪い。

そんなことを考えていた幽霊は驚きの光景を目にする。

なんと聖也が懐から銃を取り出したのだ。

幽霊はすかさず懐から六法全書を取り出し、聖也にみせる。

そのページには銃刀法違反に関する内容が載っていた。

「お前どっから出してんだよ!」

お前がな

とでも言いたいが言えない。

幽霊は絶体絶命のピンチに陥り、逃げ出してしまった。

「二度と戻ってくんなよ!このバカタレが!!!」


次の日、聖也は依頼主に依頼の成功を告げた。

「いやぁー。何とか成功しましたよ。こう、シュバッとね」

話を多少盛りながら話す聖也。

「ははは....ありがとうございます....」

苦笑いをしながら感謝する依頼人。


穏やかな時間は過ぎていくもので、今日も終わらせ屋には新しい依頼が舞い込んでくる。

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クライマックスの果ての果て 未熟者 @Kon11029

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