アーティスト

せおぽん

アーティスト

熱くどろどろとした茶色の流体が、ミキサー車から塑像の型に流し込まれていく。


型は私の全身を模したものだ。体高3m重量420kg。初期の設計では重量を支えきれず足元からポキリと折れた。原料の吟味からやり直し、再設計から3カ月かかった。


市販品などでは、私の情熱は表現できない。去年のイベントでは、他の参加者らに大きく水を開けられてしまった。年々ライバルは増えており、手の混んだ作品ばかりだ。幸いにも、去年のイベントでは、彼のパートナーは採用者なしであったが、今回こそ高評価を得て彼のパートナーの資格を得なければならない。卒業も間近の今回のイベントが最後のチャンスである以上、ナンバーワン以外は敗北だ。彼の隣に並ぶのは、私でなければならない。


完成した私の像は完璧だった。艶々とした表面。かぐわしい良質のカカオの香り。上体の空気量を増やしたのが功を奏し、バランスも安定している。


明日は、バレンタインデー。

彼は、このチョコレートを喜んでくれるかな♥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アーティスト せおぽん @seopon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る