幼馴染のファーストキスを奪ったアイツが逃走した⁉︎

猫の集会

ヤバいやつ

 今日は、どんよりした曇り空だ。

 

 昨日の予報では、晴れだったんだけどな…

 

 まぁ、十一月にしてはあったかいけどな。

 

 …

 

 せっかくの休日なのに、布団から起きる気にならないなー。

 

 

 いつまでも布団でゴロゴロしていると、ドタバタ一階で音がした。

 

「おじゃましまーす‼︎」

 

 この声は、モナだ。

 

 まったく…

 モナは、いつでも元気なヒマ人だ。

 

「まだ寝てるのー⁉︎お注射のお時間ですよ」

 

 …

 

 意味のわからないことを言い出すモナ。

 

「なんの注射だよ…」

大史たいしの眠気が覚める注射」

 

 …

 

「そんなのしなくても起きるよ…てかさ、モナなんでマスクしてんの?風邪?」

「ううん、それが…あのね、かーくんにキスされてさ…」

 

 ⁉︎

 

「はあ⁉︎モナって和大かずひろと付き合ってたの⁉︎」

「ううん。」

「じゃあ、なんでキスなんかしてんだよ」

 

 …

 

 少し黙ってからモナが、俯きながらボソッと呟いた。

 

「知らない間に…奪われた。」

 と。

 

 ⁉︎

 

 え…

 

 和大のやつ、なにしてんだよ…

 

 和大とは、オレの兄貴だ。

 

「オレが文句言ってきてやるよ‼︎」

 

「え…でも、もう逃げちゃったの」

 

 はあ⁉︎

 

「帰ってきたら、ただじゃすませねー」

「お金とるの?」

「違うだろうが!てか、モナは…その…和大のこと、どう思ってるの?」

「え、和大兄?ほんとうのお兄ちゃんみたいな?そんな感じかな。で、大史はわたしの弟的なね!」

 

 …

 

「弟って…そんなことまで聞いてないから。てか、モナは妹だろ。」

「はぁ?失礼だなぁ」

 

 

 でも、お兄ちゃん的存在だと思っていた人に、いきなりキスされるとかって…辛かっただろうな。

 

 てかさ‼︎

 

 兄貴彼女いるよな⁉︎

 

 昨日言ってやがったんだ。

 

 明日は、デートってさ‼︎

 

 あんなにルンルンだったのに、なんでいきなりモナにキスなんか…

 

 

 あ、まさかモナを練習代にしたのか?

 

 …

 

 ますます許せねー。

 

 

 コンコン

「大史ー、ワックス持ってない?」

 

 ⁉︎

 

 兄貴‼︎

 

 いるんじゃねーかよ‼︎

 

「おい、和大‼︎モナにいきなりキスしたって本当かよ」

 

「「えっ?」」

 

 モナと和大が顔を見合わせた。

 

「え、されたんだよな?和大に」

「ううん、かーくんにね。」

 

 …

 

 だれだよ…かーくんってよ‼︎

 

「あー…ごめん和大。間違いだ」

「うん、それでワックスない?」

「ある。」

 

 ほいっと和大に渡した。

 

「サンキュー」

 と、爽やか和大はワックスを持って行った。

 

「で、かーくんってだれなの?」

「知らない。身元不明」

 

 ⁉︎

 

「えっ?通りすがりのキス魔⁉︎なら警察行かなきゃじゃん‼︎てか、もう行った?通報したの?」

 

 …

 

「大袈裟だね。まぁ、わたしもマスクとかして、隠してるけどさ。でも警察は、言い過ぎだよ」

 

 えっ⁇

 

「そんなわけないだろ‼︎まず消毒だ‼︎口拭いたか⁇」

「うん。濡れティッシュでゴシゴシ拭いたよ?ファーストキスを撲滅するために」

 

 …

 

「えっ?てかさ、なんで通りすがりのやつの名前知ってんだよ⁉︎」

「それは、常識でしょ」

 

 ⁉︎

 

 意味がわからない。

 

 最近の常識って、どうなってんだよ⁉︎

 

 

「あーあ…わたしのファーストキスを返してもらいたかったなぁ。いつされたかわからないけど、時を戻したい」

 

 おいおい…いつされたかわからないだと?

 

「それって…まさか寝てる間に?ってこととか?」

「うん、当たり前。」

 

 ⁉︎

 

 当たり前⁉︎

 

 はあ?

 

 ヤベーじゃん。

 

 不法侵入の挙句に…キスとか…

 

「行こう‼︎警察に‼︎」

 

 …

 

「それは、ないでしょうに。警察だって暇じゃないの。」

「そんなこと言ってられないよ?犯人捕まえないと、また来るかもしれないじゃん」

「たしかに‼︎それは、困る」

「だろ?」

「それよりさ、殺すやつ買った方が早くない?」

 

 ⁉︎

 

「たたかうのかよ⁉︎てか、殺すって…物騒な…」

「え、でも売ってるよね?もうないかな?時期じゃないって言ったら、そうなるか…」

「季節関係ある?あ、でも春に変態ってよく出没するよね?」

 

 …

 

「なに変態って?大史のこと?」

「ちげーよ‼︎キス魔のかーくんだろうが」

「あぁ、でも変態って?口にしてきたからってこと?」

「そりゃ、そうだろうよ。てかよ、名前まで知ってて、どこのどいつか知らねーの?」

「うん。突然入ってきたんじゃない?」

「どっから?」

「窓かな?たぶん。」

「モナの部屋って…二階だよな?ヤバいな」

「え、でも普通じゃない?」

 

 

 …

 

「んなわけあるか‼︎ゲホッ」

 

 思わずむせた。

 

 ガブガブと、部屋に常備してあるペットボトルのお茶を飲んだ。

 

「モナも飲む?」

「いい」

「飲みかけじゃないよ?新しいのあるけど」

 

 …

 

「マスク…外したくないし。思いっきり吸われたし…」

「はい⁉︎もう警察行くぞ‼︎」

「ないって。大袈裟…でも、今日学校休みでよかったー。給食とかマスク外さないとだもんね」

 

 …そんなに酷いことになってんのか?

 

「病院は?一応行っとく?変なの感染してるかもよ?」

「たしかに!でも、手とか足もよくやられるし…大丈夫かな」

 

 ⁉︎

 

 なんだよ⁉︎

 

 手とか足もって…

 

 しかも、よくやられるだと⁉︎ 

 

「大丈夫なのかよ⁉︎なんでもっと早く相談しなかったんだよ‼︎」

「えっ?相談って…心配しすぎて笑う」

 

 

 …

 

 モナ…

 

 ついにおかしくなりだしてんじゃんか‼︎

 

 笑ってる場合じゃねーってば‼︎

 

「事件だろ‼︎もう犯罪だろ‼︎」

「えー、それは面白い。名探偵呼ぶ?」

 

 ゲラゲラ笑うモナ。

 

 完全に壊れてるじゃんか…

 

「てかさー、十一月なのにまだいるんだね」

「いや、何月でもいるだろ‼︎てか、そいつ…常習犯なんじゃ…」

「どうだろう?ね?」

 

 なんでそんなにモナは、平然としていやがる⁉︎

 

「あー、オレ頭おかしくなりそう」

「いやいや、もうおかしいですよ?」

「それは、モナだろ‼︎キスされたり吸われたりしてんのに、そんな平然とさ。オレは許せねー‼︎絶対捕まえてやる」

「ほんと?もしかして、まだ部屋にいるかな?なら、退治して?」

「いんのかよ⁉︎通報しろって‼︎」

「あはは、ほんと笑えるんだけど。もういいって。」

 

 よくないだろ…

 

「とにかく、部屋行くぞ」

「はーい」

 

 

 …

 

 モナの部屋に恐る恐るはいると、だれもいない。

 

 

「逃げられたか…」

「あ、いた‼︎カーテン‼︎」

 

 ⁉︎

 

「おい、モナ‼︎部屋の外いろよ‼︎あぶねーだろうが‼︎」

「そんな、大袈裟ー。」

 

 

 で、奴はカーテンの裏に隠れてんのかよ⁉︎

 

 てか、なんでいつまでも部屋にこの犯人居座ってんだ?

 

 バッとカーテンをめくるも…

 

 だれもいない…。

 

「もー、カーテンにひっついてたのにー」

 

 ⁉︎

 

 えっ?

 

 えっ?

 

「どういうこと?」

「あ、窓にいる‼︎ほら、網戸のとこ。」

 

 モナは、窓をしめて網戸をスライドしてなにやらやっていた。

 

「逃げたー」

 

 ⁉︎

 

 はい?

 

「もしかして…かーくんって…」

「蚊だよ」

 

 ⁉︎

 

「待てよ‼︎蚊ってメスしか血吸わないだろ?じゃあ、かーくんじゃなくてかーさんじゃんか」

「おかあさんみたい」

 

 ゲラゲラ笑うモナをみて、オレは思わずモナを抱きしめていた。

 

「えっ?ちょっ…」

「モナが…モナが酷い目にあってなくてよかった。」

「だから、大袈裟…」

「オレ…だれかに酷い目にあわされてるって勘違いしてたわ。マジでよかったー、安心したわ」

 

 

 …

 

「いや、でもほら…大史が一番の変態じゃん。いきなり抱きつくとか」

「あっ、悪い…」

「うそ、ありがとう」

 

 モナがオレに抱きついてきた。

 

「モナ…オレさ、虫には負けたけど、モナが人間とするファーストキスは、オレがいい…ダメ…かな?」

「え…このタイミングで…?」

「うん」

 

 …

 

「じゃ…あ、吸われたとこがひいてからなら…その…いいよ?」

「マジかよ⁉︎なら、予約させて?」

「予約?どうやって?」

「こうやって」

 

 マスクの上から、モナにキスをいたしました。

 

「予約完了」

 

 モナは、マスクの上からでもわかるくらいに、顔を赤く染めてびっくりしていた。

 

 その顔がまた、可愛らしかった。

 

 早く、虫刺され治るといいなぁ。

 

 

 それから毎日、虫刺されどう?どう?と、モナに聞くのでありました。

 

 そして、三日後

 

 今日、うちに来てとモナから連絡が入った。

 

 こ、これはついに⁉︎

 

 

 

 

 オレたちは、人間同士のファーストキスをしたのであります♡

 

 チュ〜っ♡

 

「モナ、好きだよ♡」

「わたしも好き、大好き♡」

「オレも大好きだよ♡」

 

 チュ〜っ♡

 

 

 

 

 おしまい♡

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