長年片想いしていた幼馴染に告白前に振られて街を彷徨っていた俺は、ビッチと噂される学園一の美少女と出会い、カノジョからハジメテの証明をされてしまった。

きたみ詩亜

第1話 幼馴染からの告白。

「──聞いてよ、伯人(はくと)! 昨日ね、三年の近藤先輩に告白されて、付き合いはじめたんだ〜! しかもね、いきなりだったけど、もう先輩と初体験しちゃった……♡ 痛くないように凄く優しくしてくれてね……、ハジメテだったのに、すっごく気持ちよかったの……!」

「へ、へぇ〜……未姫(みき)、ヨカッタネ……」


 ──通い慣れた、幼馴染の暮らす部屋。

 ベッドに腰掛け、トロンとした目で頬を赤らめている少女──高梨(たかなし)未姫(みき)。

 俺──西村(にしむら)伯人(はくと)は、幼馴染からの惚気話という名の告白を、頭が真っ白になりながら聞いていた。


 未姫との関係は、語り出せばキリはない。

 かいつまんで言えば、彼女との仲は、小学一年生から高校二年生の十一月中旬の現在に至るまで続いている幼馴染だ。

 小学一年生の頃から、長い年月、ずっと片想いしていた未姫という存在……。

 彼女についての浮いた話は、今まで聞いたことがなかった。

 そんな、長年の片想いに決着をつけるため、今度のクリスマスに未姫をデートに誘い、そこで告白しようと考えていた。

 なにせ、彼女へのクリスマスプレゼントもすでに準備していた。


(──告白がうまくいったら、あわよくば、未姫とクリスマスエッチも……!)


 そんな妄想に駆られて、ひとりでシたりもしていた、そんな矢先の出来事。


 俺がどれだけのショックを受けてしまったかは、全世界の男子諸君なら、よく分かることだろう。


 ベッドの真ん中に、あどけなく座る未姫……。 

 彼女は、赤いチェックのミニスカートで体育座りをするという、なんとも無防備な姿を俺の前に晒している。

 ……そして、両足の隙間からは、シミひとつない純白のショーツがバッチリ見えてしまっていた。

 ──そのショーツの奥に潜む暗闇の中を、近藤とかいう先輩が貫いて汚したのだと思うと、胸をかきむしられる思いにとらわれる。


 ──まさか、告白前に、こんなことになってしまうなんて……。

 しかも、本人からこんな赤裸々な話を聞かされるとは……。


「──未姫……、今日はもう帰るよ」

「うんっ! また話聞いてねっ」


◆◆◆◆


 未姫の部屋をあとにした俺は、茫然自失の体で、夕方の街をフラフラと彷徨い歩いていた。


「──ダメだ……。もう、俺の人生は終わった……」


 街のはずれにある、ひっそりとした橋の中腹までやって来た俺。

 欄干の下を流れる黒い川を、呆然とした気分で眺める。


「──死にたい……」


 俺に関係ない他人からすれば、そんなことくらいでと思うだろう。

 しかし、俺はもう…………。


「──あの……、そんなところで、なにしてるんですか?」

「え……?」


 ──背後から不意に掛けられた声。

 のっそりと後ろを振りかえると、女の子が立っていた。


「……たしか、私と同じ学校の西村先輩ですよね? 学校でお見かけしたことあります。……そんなところにいると危ないですよ?」

「キミはたしか……清瀬さん……?」


 俺と同じ高校だという彼女。

 たしか、俺の後輩にあたる一年生、清瀬(きよせ)琴葉(ことは)だ……。

 

 ──彼女は、高校一年生とは思えないほどの巨乳に、可愛いらしい顔立ちをした美少女。

 腰ぐらいまで伸ばした黒髪に、大きな胸という完璧プロポーションのため、入学当初から学園一の美少女と呼ばれ、全校生徒からの衆目を集めていた。

 その際立った容姿から、告白する男子は引きを切らない。


 ──何人も男をとっかえひっかえしているビッチだという噂まである。


「長年片想いをしていた幼馴染に、告白する前にふられちゃってね、ハハ……」

「それで、死のうとしてたんですか」

「清瀬さんはモテるから、くだらない悩みって笑うんだろ……?」

「別に笑いませんけど……じゃあ、私の家に来ますか?」

「え……」


 ほぼ初対面の俺に、突然手を握ってくる彼女。

 ……何故か指を絡めて恋人繋ぎ。

 緊張に、手に汗が滲んだ。

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