路上占い、あれこれ85【占い師は青い瞳と見つめ合う】

崔 梨遙(再)

伝家の宝刀! 女性ネタ! 1311文字です。

 僕が夜のミナミで路上占いをしていた頃のこと。



 その日は、なかなかお客様が来なかった。目の前には、誰も座らない椅子。普段は、こういう時間も楽しむのだが、その日は無性に占いたい気分だったので、不完全燃焼で燻っていた。


 そこで、声をかけられた。


「スミマセン、何ヲシテルンデスカ?」


 相手は長身美人の金髪外国人女性だった。歳は20代半ばか? 後半か?


「あー、あー、うーん・・・fortune telling!」

「アア、占イデスカ?」

「めっちゃ日本語喋れるんかーい!?」

「私、英会話学校ノ先生デス」

「ああ、なるほどね」

「占ッテモラエマスカ? 東洋ノ占イ、興味アリマス」

「じゃあ、どうそ座ってください」

「ハイ。コノ占イハ、ナント言ウノデスカ?」

「易です」

「エキ? ステーション?」

「ノー、中国の古い占いです。何を占いますか?」

「私、モウスグアメリカニ帰リマス。ソノ前ニ、日本人ノ男性ト恋ヲシテミタイデス。日本デ恋人ハ出来マスカ?」

「はい、占います。・・・・・・できますよ。良かったですね。燃えるような恋愛ができます。あなたは心がキレイ、火のように濁らない、美しい、相手の男性も美しくて優しい心、火と火が合わさって炎になります」

「ソウデスカ、デハ、私トアナタノ相性ハドウデスカ?」

「え!? 僕!?」

「ハイ、占ッテクダサイ」

「・・・・・・めっちゃ相性はいいですよ」

「本当デスカ?」

「あ、嘘だと思ってますか? これ、本当なんです。鳥が卵を暖めるように、真心と真心が通じ合うのです」

「本当ナンデスネ?」

「信じるか? 信じないか? それはあなたの自由です」

「デハ、試シマショウ」

「え!?」

「オ酒ヲ飲ミニイキマショウ、イロイロ話シタイデス」

「僕でよければ・・・」


「って、あなた、身長が高いですね!」

「176デス」

「僕、169ですよ」

「気ニナリマスカ?」

「僕は気にしません。でも、あなたが気にするのではないですか?」

「私ハ気ニシマセン」

「それなら、僕も気にしません」

「私、ダイアナ。アナタハ?」

「崔(サイ)」



「アナタハ楽シイ人デスネ」

「そうですか?」

「アナタハ日本ノ男性トハ思エマセン。日本ノ男性、私ニコンナニ近ヅキマセン。笑イナガラ距離ヲトリマス。崔ハ積極的、コンナ日本人男性、初メテデス。ソレニ、占イ師ダカラ、ミステリアス!」

「もうすぐ夜が明けますね。僕が住んでるマンション、近くにあります。僕の部屋で夜明けのコーヒーを飲みませんか?」

「コーヒー飲ミタイデス」



 ご想像通り、僕とダイアナは付き合うことになった。しばらくすると、ダイアナがアメリカに帰るのはわかっていたのだけれど。



「崔、オ別レデス。私、アメリカニ帰リマス」

「うん、わかってる」

「空港ニ来テ、見送ッテクレマスカ?」

「それは許してほしい。きっと、僕は泣いてしまうから」



 ダイアナは飛行機で去った。


 その晩、僕はミナミの路上に出た。僕は喪失感でボーッとしていた。誰も座らない。まあいい、今夜はそれでもいい。


 と思ったら誰かが座った。間違えるわけがない。見慣れた長身のナイスバディーと彫りの深い美しい顔!


「ダイアナ、どうして?」

「少シダケ、アメリカニ帰ルノヲ延期スルコトニシマシタ」

「ダイアナ」



「延期ハ少シダケデスヨ」




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路上占い、あれこれ85【占い師は青い瞳と見つめ合う】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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