作品内に登場するURLについて考えてみた
あとりえむ
作品内に登場するURLについて考えてみた
現代を舞台にする作品を書いている場合ですが、作中にURLが登場することがありますよね。
特に配信ものや掲示板シーンで登場することが多いです。
その際に、実在するURLを使ってしまうリスクがあります。
執筆時点では存在していなくとも、将来存在する可能性があります。
そういうときに、どうやって問題を避けるのかを考えてみます。
技術的な話はしません。
技術的な観点からは、かなり雑な説明になりますがご容赦ください。
## 避けなくてもいい場合(避けてはいけない場合)
評論などで参照元を示したり、引用元を提示する場合、少なくとも執筆時点で該当URLが存在してなければなりません。
よって、この場合は何もせずに該当URLを提示しましょう。
## URLについて
URLの構造についてはRFC 3986で規定されていますので、詳しく知りたい方はそちらを読みましょう。
RFC 3986: Uniform Resource Identifier (URI): Generic Syntax
https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc3986
## 1.伏せ字
URLを伏せ字にすることで、存在しないURLを作り出す方法です。
例 https://■■■■/
URLとして不正なのでアクセスできません。また、一見して「URLを出すリスクを回避するため」と読者に伝わると思います。
見た目が悪い(どう見ても正規のURLではない)のがデメリットでしょうか。とはいっても、それほどのデメリットではありません。
## 2.ノーガード戦法
うるせえ将来かぶってもしらねえ! 俺はそれっぽいURLで行くぜ。商業化したら検討するかもね! という方法。
例 https://{正規のセカンドレベルドメイン}.{実在トップレベルドメイン名}/
たまに見かけます。
執筆時点で存在してなくても、将来存在する可能性はあります。
## 3.存在しないトップレベルドメインを使う
トップレベルドメインというのは……
◦ .com
◦ .net
の部分です。
これらは、使用目的や取得制限があったりします。
◦ .ac.jp:高等教育機関(大学など)
◦ .go.jp:日本の政府機関(.govは米国政府)
のように、厳しい制限があるものや
◦ .jp:日本
のように、国別のものがあったり、
◦ .com:目的自由
◦ .net:目的自由
◦ .xyz:目的自由
◦ .moe:目的自由
のように、緩いものがあったりします。
トップレベルドメインは大量にあるので、かぶらないものを作るのは大変ですが、現在存在しないものを作るというのはいい手法に思えます。
しかし、先ほど出てきた「.xyz」「.moe」などは比較的最近追加されたものです。
つまり、将来追加されてかぶる可能性があるということです。
## 4.意図して不正なドメイン名を使う
URLの構造をもう少し細かく見てみましょう。
https://abc.example.com/
というURLがあった場合、
◦ .com :トップレベルドメイン(TLD)
◦ example :セカンドレベルドメイン(SLD)
◦ abc :サブドメイン
という構成になります。
このうち、「example(セカンドレベルドメイン)」の部分が、サイトのメインとなる名前です。
ここが重要です。
サブドメイン(abcの部分)に不正な文字を入れても、メインの example.com が実在している限り、そのサイトの管理者がページを作成してしまう可能性があります。
しかし、メインのセカンドレベルドメイン自体が不正なものであれば、そもそもドメイン自体を取得できません。
ドメイン名(SLD)として使える文字種は限られています。
◦ 0~9
◦ a~z
◦ -(ハイフン)
以上です。
これらに当てはまらない文字を含む名前は、取得される心配がないということです。
そこで、このセカンドレベルドメインの中に、意図して不正な文字「_」(アンダースコア)を入れる方法があります。
例 https://twi_x.com/
そもそもの問題として「作者がほしいのはURLではなくURLっぽく見える文字列」であることです。
なにもリスクを冒してRFC準拠のURLを使う必要はありません。
実在のサイトに繋がる事故を防ぎつつ、読者には「なんとなくURLっぽく見える」というリアリティを残せるのがメリットです。
注意点:
「アンダースコアは絶対に使えない文字なのか?」というと、DNSの仕様上は特殊な用途(サブドメインなど)で使われることがあり、完全にありえない文字というわけではありません。
ただ、ウェブサイトのメインの名前(SLD)としてはルール違反となるため、一般的なブラウザーではアクセスしてもエラーになるか、検索画面に飛ばされるだけです。
## 5.公式に予約されたドメインを使う
技術的にもっとも正しいのはこの方法です。
インターネットのルール(RFC 2606)において、「将来にわたって絶対に誰も取得できない」「例示やテスト用に使ってよい」と決められているドメインがあります。
① example.com / example.net / example.org
これらは例示用に予約されています。
そのまま使うと味気ないですが、サブドメインを活用すると、それっぽくなります。
例 https://my-tube.example.com/
② .test / .invalid / .example
これらは予約済みのトップレベルドメインです。ウェブシステム開発などで使われます。
例 https://magic-school.invalid/
例 https://search-engine.test/
これらは公式に保証された手法であり、安全です。
しかし、これらは開発者でもなければ普段から目にすることはなく、目的以上に目を引いてしまいます。
作中のURLはURLだと分かればいいのに「変わったURLだ」と思われてしまう可能性があるということです。
作中で出てくるのはおおよそSNSや動画サイトのURLでしょうから、余計に気になるでしょう。
## どうすればいいの?
どうしたらいいんでしょうね?
絶対に安全に行きたいなら5しかありません。
しかし5の項目で書いたようなデメリットもあります。雰囲気が壊れるかもしれません。
URLとしては不正ですが、4の方法もありでしょう。
先に書いたとおり「作者がほしいのはURLではなくURLっぽく見える文字列」なのですから。
URLっぽい文字列を出しつつ、雰囲気も壊れません。
https:// って書かれてればいいだろって場合は1でもいいと思います。
作品内に登場するURLについて考えてみた あとりえむ @atori_m
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