夫婦の日終了まで残り5分!!
二木弓いうる
便乗したって良いじゃない!
「今日夫婦の日だったってよ! えっちゃん!」
11月22日の23時55分。俺は今日が夫婦の日である事を知った。
語呂合わせだし、特に何かをしなければならないという訳でもない。ないけれど。俺達新婚なんだから、便乗してイチャイチャしたって良いじゃない!
「くそっ、もっと早く知ってればケーキなり肉なり用意して食ったのに! 知らないから夕飯もイワシにしちゃったじゃんね!」
勿論、えっちゃんが作ってくれたイワシ料理だっておいしかった。そもそも俺が食べたいって言ったやつだし。
甘く煮詰めたイワシに、さっぱりした生姜が添えられていて。煮汁だって、白米にかなり合った。おかわりだってした。それくらいおいしかった。けども!
やっぱり特別感のある事したいじゃん!
「せめてあと5分で出来る事ないかな」
出かけるにしても近場には何もないし、行ったところで大体の店は閉まってる気もする。
というか、えっちゃんもうパジャマ着てるし。多分支度だけで終わる!
「仕方ない。どこかに行くのは諦めて、うちで過ごすとしよう」
けど特別感ある事なんて出来ないぞ。
いい雰囲気になりそうなキャンドルなんざないし、パーティーみたいな飾りつけだって間に合う気がしない。
そりゃ普通の日として終わらせるのも悪くない。けど。
せっかく新婚になって初めての夫婦の日だし。何かあったって良いじゃない! 夫婦の日だって知ったのついさっきだけど!
「えっちゃん、他に何かない……えっちゃん!?」
なんて事だ。えっちゃんったら、もうベッドの中に入り込んでるじゃないか。
これは間違いない、普通に寝に入ってる!
「まだ寝ないでよえっちゃん、便乗してイチャイチャしようよ!」
ベッドの上に寝転びながら、えっちゃんは首を傾げた。かわいい。
「……便乗しなきゃイチャイチャしちゃダメ……?」
聞こえて来た小さな声に、思わず目を点にする。
ダメ……って事はないな? 言われてみれば、別に夫婦の日じゃない時でもイチャつく事はあったな?
えっちゃんは恥ずかしくなったのか、顔を布団で隠した。でも俺は見逃さなかった。隠す直前、えっちゃんの顔が赤くなっていたのを。
……十分、特別いただきました。
「そんな事ないです!」
俺は彼女の隣に寝転んで、力いっぱい、でも優しく彼女を抱きしめる。うん、すごく温かい。
なんて事だ。
夫婦の日関係なかったわ!
夫婦の日終了まで残り5分!! 二木弓いうる @iuru
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