第49話 新学期

視点:斎木 晃大


――4月。新学期。


春の風って、毎年同じ匂いのはずなのに、

なんでこんなに胸がザワザワするんだろう。


(今日から二年生か……

 クラス替えどうなるんだろ……黒木と一緒なら……!)


期待が止まらないまま教室へ入った。


貼り出された名簿を見た瞬間、

心臓が一度跳ねた。


(黒木……いた!!)


思わずガッツポーズした。


そしてもうひとつ、目が止まった名前。


三浦ほのか。


(……マジで同じクラス?)


胸の奥が変な意味でそわそわする。

前より目が合うことが多くなったし、

距離が近いと普通に緊張する。


席替えの紙が配られる。

半ば祈るように自分の番号を探す。


(えーっと、俺は……ここ。で、三浦は……)


——隣。


近すぎる。


椅子に座ると、横からあの明るい声が聞こえた。


「おはよう、斎木くん!」


ドキッ。


「あ、……こ、こんにちは。」


自分でもわかるくらい声が固かった。

でも、ほのかは全然気にしてないみたいで、

いつも通りの笑顔だった。


(やばい……慣れるまで時間かかるやつだ……)




放課後 ——


その日は部活がなく、

黒木と校門の近くで話していた。


「いや〜今年は二年最高だろ!メンバー濃いって!」


黒木は相変わらずテンション高い。


話していると、

気づけば周りにクラスメイトが集まってきていた。


「黒木、昨日の練習試合見たぞ!」

「てかさ斎木、お前守備エグいよな」

「二年のこのグループなんか面白くね?」


なんとなく輪が広がっていく。


(黒木……コミ力どうなってんだよ……)


気づけば中心で喋ってるのは黒木で、

周りは笑ってる。


俺は横からツッコミ入れる感じだけど、

妙に居心地は悪くなかった。


(今年……なんか良い年になりそうだな)




話していると、ふと黒木が言った。


「てかさ、今年の一年どんなの来るんかな。

 強いの来たらヤバいよな?」


「あー……確かに。」


去年はギリギリの代だったから、

新しい風が入るのがちょっと楽しみだ。


(もしかしたら……俺らと同じタイプの“プレイヤー”が来たりして)


そんなバカみたいな想像をしながら、

春の日差しの中で、

二年生の初日はゆっくり終わっていった。

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