第20話 才能の塊

Aチームに入ったその日の午後。

一年生は全員グラウンド端に集められた。

山根監督がゆっくり歩きながら説明する。


「一年は基本、外野守備が中心だ。

理由は簡単。外野ができない奴は野球ができない。」


その言葉に一年たちはザワつく。

(外野が一番簡単だと思ってた……)


監督は続けた。


「外野は“打球判断”“肩”“脚”すべてが必要になる。

内野より楽だと思ってたら甘いぞ。

一年生はまず外野の土台を作る。」


外野ノック開始

鬼のようなノッカーが前に立つ。

三年のレギュラー外野手・椎名先輩。

強肩・俊足で、プロ注目の選手。


「一年、死ぬ気で取れよ。

中途半端なステップ踏んだら俺は許さねえ」


ボールが打ち込まれる。


バッコンッ!!!

(速っ!?)


放物線じゃない。

弾丸ライナーだ。


一年たちは次々と取り逃がす。

椎名先輩は一切手加減しない。


椎名:「おい!そこから落下点に入るのが遅え!

外野は一歩早く動いた奴が勝つんだよ!」


斎木も走り回る。

(キツい……でも楽しい……!)

斎木は反応の速さが光り、

スッ……と落下点に入り、

ズドンッとキャッチ。


椎名先輩:「……おい新入り。お前、守備いいな。」


心臓が跳ねた。


「は、はい!」


椎名先輩:「ただし声が小さい。外野は声で守るんだ。

次から指示を出しながら捕れ。」

(声……!)


次の打球。

斎木:「俺いく!!ライト寄れ!!」

キャッチ。

先輩たちが「おお」と小さく唸った。




ノックが一段落したところで、

山根監督が名簿を見ながら言う。


「肩が強かったやつは残れ。

ちょっと投げさせる。」


一年の中でも明らかに肩が強い数人が呼ばれる。

「黒木!」

「高梨!」

「大河内!」

そして――

「斎木。」

(え、俺!?)


黒木:「お前肩いいもんな。やってみろよ!」


マウンドに立たされ、

ブルペン捕手のミットが構えられる。


監督:「軽くでいい。フォームを見るだけだ。」


斎木は深呼吸して投げる。

ミット、パンッ!

キャッチャーが小さく頷く。

もう一球。

パンッ!!


ブルペン捕手:「……一年でこれは素直だな。クセが少ない。」


監督も腕を組む。


監督:「球速は今は並だが……この伸びのある軌道は良い。

外野守備も良いし、二刀流で様子を見るか。」

(に、二刀流……!?)


黒木が後ろで興奮してる。


「おい斎木!!やべぇよそれ!!」



結果発表

監督が一年生に告げる。


「今日肩を見たやつらは、

これから時々ピッチングも組み込む。

ただし基本は外野守備だ。」


そして斎木に目を向ける。


「斎木。

お前は守備が武器だ。

ただ肩が良いから投手の可能性も捨てない。

外野+投手の“兼任枠”として扱う。」


(……兼任枠!?

すげぇ……いつの間にこんなことに……)


黒木はニッと笑う。


「最強じゃん、斎木!

外野も投手も両方やれよ!」


斎木は深呼吸して微笑んだ。

「……うん。やってみる。」




帰宅後。

デイリークエスチョンを終えると、

画面に新しい項目が増えていた。

【新スキル候補:投手適性の芽】

・制球力+小アップ

・肩力+小アップ

・精神力+微増

・覚醒条件:ブルペン練習20回

(……マジで投手もやる流れだ……)


心臓が少し震えたが、

同時にワクワクした。


「やってやるよ……全力で!」


斎木は布団に倒れ込みながら、

今日の充実感を噛みしめた。

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