第13話 黒木's point of view(黒木の視点)

俺は黒木和雄

いつもどうり、

シニアの練習が終わり駅のホームにいた。

周りには人が少なくて

なんだか不気味だった。


(また、監督に怒られた)


打つことだけが取り柄の俺は

シニアで、もやしって体格をいじられてた


「っ!?」


誰かに押された。

感覚と共に、死への恐怖が体を支配した

死ぬ、と思った。

だけど、

そこは線路じゃなかった。

真っ白な空間。

気味が悪いほど静かで、

俺は宙に浮くような感覚に包まれていた。

その中央に、青いウィンドウが現れた。


ーー

《PLAYER SYSTEM 起動》

《適性:野球》

《初期ステータスを作成します》

ーー


次の瞬間、目の前に数字が並んだ。


ーー

弾道:3

ミート:43

パワー:5

走力:12

肩力:12

守備力:12

捕球:12

ーー

(……ミートだけ高っ)

なぜか自然と納得した。

俺は昔からこれだけは得意だったからだ。

そこにまた文字が浮かぶ。

ーー

《デイリークエスチョン》

毎日1問の課題をこなすと「ポイント」獲得

ポイントはステータス振りに使用できます

ーー

パワーを上げたくて仕方がなかった俺は、

毎日欠かさずデイリーをこなし続けた。

やがてパワーは

5 → 50 へ。


同時に、思わぬイベントが起きた。

デイリーを忘れた日、

突然白い空間に飛ばされ——


《ペナルティ:時速150kmの球を打て》


必死に食らいつき、

ギリギリ打った瞬間に新しいスキルが生まれた。


《スキル:フルスイング》

追い込まれると三振しやすくなるが、

飛距離が大幅に上がる


(これで……一発が打てる)


その後、試合で代打として結果を残すごとに、

自然ともう一つのスキルが解放された。


《スキル:代打○》

代打時の能力が上昇する



教師にもチームメイトにも言っていない。

けれど、俺は“普通の選手”じゃなくなった。




そして問題の公式戦


序盤は相手がリードして進む。

こちらのチャンスが続き、

相手チームは

守備固めとして一年が入った。


佐藤晃大、レフト。


打球が飛ぶ。

ポテンヒットが確信するあたり

だが佐藤は迷わず反応し、落下点へ滑り込む。

完全ノーバンではなく、ショートへ正確にカット。

その間にランナーは止まり結果としてチャンスをつぶされる。

俺はその守備に驚く。

一年でこんな正確な守備範囲はありえない。


(……なんだこの動き。プレイヤーか?)



二死の場面、監督が代打を指示。

俺はフルスイングと代打○を発動。

初球、ど真ん中のストレート。

体が勝手にスイングを描き、白球はレフトスタンドへ。

豪快な一撃。

しかし試合は負け。

試合終了の悔しい気持ちはなかった。


胸に残ったのは、佐藤晃大の守備の広さと正確さへの驚きだけだった。


試合が終わり

グランドに礼の声かけと同時に

分析スキルを発動した。

ーー

《分析:対象の能力可視化》

使用しますか?

YES

ーー

白い光が視界を覆い、佐藤の頭上に数字が浮かぶ。

佐藤晃大(1年)

弾道:1

ミート:12

パワー:12

走力:24

肩力:12

守備力:36

捕球:12

特殊:調子極端

状態:プレイヤー

(……やっぱりプレイヤーだ)

一年で守備力36。

しかも“プレイヤー”の状態。


俺と同じ世界にいることを確信する。


脳の何かが弾けた。


胸が熱くなる。


勝敗ではなく、あいつと同じ世界で戦うことが、俺の新しい目標になった。


「次は必ずお前を倒す」


黒木の野球は、ここから本格的に動き出す。





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