第4話「お前が玉かよオオオオオオオオ!!!!」



***


「股間キャノンだァ!? もう何でもありじゃねーか!! 警察呼べ警察!!」


 俺がわめき散らす中、お姉さん(男)は「ふゥー……」と野太い吐息を漏らし、自身の胸元に手をかけた。

 まさか、脱ぐのか!? 俺の目の前で!?


「本気を出すには、このサラサラヘアーが邪魔でしてね……」

「は? 何言ってんの? いや脱ぐなよ! 絶対見たくねーからな!!」


 男は胸元ではなく、頭に手をやった。

 そして、躊躇なく、ガバッ!! と茶髪のロングヘアーを引っこ抜いた。


 **パカーーーーーーン!!**


 地下室の照明が、その頭皮に反射して、閃光のごとく俺の網膜を焼いた。


「目がァァァァァッ!! 眩しいッッッ!!!」


 俺は反射的に目を閉じたが、遅かった。

 残像に残るほどの輝き。手入れが行き届きすぎている、完全無欠のツルッパゲ。

 一の毛も残さぬ、完璧なスキンヘッドだ。


「ハゲとるやないかい!!!!」


 俺のツッコミが炸裂する。


「おい! さっきまでの清楚系美女どこ行ったんだよ! ◯玉ついてるわ、頭ツルツルだわ、情報量が多すぎて処理落ちすんだよバカ野郎!!」


 スキンヘッドの男は、不敵な笑みを浮かべながら、自身の輝く頭部をペチペチと叩いた。


「探しましたか? ボーリングの『ボール』なら……」


 男は重心を低くし、まるでクラウチングスタートのような体勢をとる。

 その輝く頭頂部が、矢の如く俺に向けられた。


「ここにありますよ」


 俺は戦慄した。

 丸い。硬そう。よく滑りそう。

 そして、俺に向かって転がってきそう。


「お前が玉かよオオオオオオオオ!!!!」


 すべての謎が解けた。

 Bow(弓)を使う男と、Ball(玉)になる男。

 これは、そういうチームプレーだったのか。


「いっけぇぇぇぇ! 人間ボーリングゥゥゥッ!!」

「待て待て待て!! 物理で突っ込んでくんのは反則だろ!! ストライク(物理)やめろオオオオオ!!!」


 ドスドスドスドス!!

 

 地響きを立てて、スキンヘッドの巨体が俺に向かって突進してくる。

 おっさんの頭突きまであと3秒。


「顔はやめろ! 顔は商売道具なんだよオオオオッ!!!」


 俺の断末魔が、虚しく地下室に消えていった。

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【絶望】ボーリングで100万円もらえると思ったら、物理的に殺されかけた件wwww 志乃原七海 @09093495732p

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