ゼネコンばかりが悪者ではない

雨宮 徹

ゼネコンばかりが悪者ではない

 建設業のゼネコンについて、コンプライアンス違反にならない範囲で実情を語ります。



 そもそも、ゼネコンとは何か。簡単にいえば、建設業の中でも中規模以上の会社という認識で大丈夫です。というか、私自身、誤りなく説明はできない。ゼネコンと言えば、「リニア談合事件」が思い浮かぶ人が多いでしょう。なんで、あのようなことが起きたのか。それは、1件で数百億のお金が転がり込むからです。



 今は凍結状態に近い名古屋駅の再開発も、報道通り1件で数千億のお金が動きます。そうはいっても、1社ですべてを請け負うことは不可能なので、JV(共同企業体)で取り組ます。JV(共同企業体)について、簡単な説明を。「大規模な工事を複数の企業で分担する」と言えば、ほぼ間違いないでしょう。これは、談合とは違い発注者も承知です。というより、発注者から「早く建てて欲しいから、数社で組んでね」と、要項に書いてあります。




 昔、3Kと言われたように、今もいい印象はないでしょう。談合が絶えないので。これは、先ほど述べたように、大規模なお金が動くからです。ただ、受注者であるゼネコンも真っ黒ではありません。場合によっては、発注者の不適切な行為が疑われるケースもあります。



 発注者側の不適切行為とは? と思う人もいるでしょう。具体的には、「国から補助金をもらうためには、入札させなければならない」「形上は入札にして、いつもお世話になっているゼネコンに頼もう」という、クレイジーな考えをするのです。もちろん、発注者は複数社に声をかける必要があります。ただ、各社出来レースなのは分かっているので参加しない。そんな事情もあり、発注者側が意図した通りに動くことは、なかなかありません。そんなことが多発すれば、補助金を払う国が傾きます。




 ほかにゼネコンが悪者扱いされるのは、地中障害でしょうか。文字通り、地中に障害、多くは前の建物の支柱などが埋まっていることを指します。地中障害が見つかると、多くの場合は建設側が糾弾されます。が、実際は、撤去工事をした前の会社の手抜きが原因であるケースも少なくありません。現在進行形で動いている会社を悪く言う方が簡単なので、報道では受注したゼネコンをいじめます。



 最悪の場合、地中障害について詳しくない発注者からは「お前のせいで、工期が伸びる。どうしてくれるんだ」と無茶を言われます。安さに目がくらんで、手抜きするような会社に任せた発注者が悪いにもかかわらず。




 このように、ゼネコンは発注者と日夜バトルを繰り広げています。さらに踏み込んだ話をしましょうか。




 ここまでで大規模な工事に携わるのがゼネコンであることは、分かっていただけたかと思います。では、ビル以外で大規模な工事とは。それは、某ネズミの国やU○Jの建物だったり、国防に関わる建物です。



 某ネズミの国なども、サービス業のスタッフだけではなく、内勤として工事発注の窓口があります。その部署と連携して、夢の国を作る手伝いをする。ゼネコンは夢を与える裏方なのです。さらに言えば、国を守る生命線でもあります。自衛隊用の装備を作る会社の建物を造るという点で。もっと大規模なものだと、ロケット発射場でしょうか。あれなしでは、人工衛星を打ち上げられません。ゼネコンは皆さんの生活を支えるなくてはならない会社なのです。




 そんなゼネコンを含めた建設業ですが、少子高齢化でピンチです。簡単に言えば、現場で働いてくれる職人の減少。さらに、3Kのイメージで就職先の候補から外されやすいことも拍車をかけています。「建設業が傾いても、知らんわ」という方は、認識を改めてください。先ほど書いたように、防衛や宇宙産業にかかわる建物を海外の企業が建てれば、日本は間違いなく破滅します。だって、機密が海外にだだ洩れですから。




 建設業に限らず、ある業界を悪く言うのは簡単です。ですが、どの業界であれ、私や読者のみなさんのために日夜働いているのです。たまには、何気ない毎日を過ごせることに感謝してみてはいかがでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゼネコンばかりが悪者ではない 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画