最下位配信者とバ先の上司 ~魔物だらけの旧『九州』で、最弱冒険者は勇者になる~
ニクウマイ
第0話 登録者62958642人
鹿児島の霧島神宮。
レベルSSS級ダンジョンの最深部――。
「えーと……今日は鹿児島のダンジョンに来てます」
視聴者からの投げ銭が飛ぶ。
『待ってた』
『がんばれー』
『支援!!』
配信者ルーカスは、ハハッと乾いた笑いを零した。
長身に色素の薄い髪、短髪といえなくもない。
垂れ目がちの目は青みがかっていて、全体的に透明感のある見た目だ。
しかし、華奢というよりはがっちりした体格もあって、儚いというより人なつっこそうな大型犬のようだ。
「えー……うちのペットが最近グルメになっちゃって……キノコが食べたいらしいので、採取したいと思います。なんかね、鳥には薬になるキノコなんだって。ドコノコキノコっていうんだけど……みんな知ってる? ビタミンがいっぱい入ってんのかなあ」
自分で撮影しているのではなく、誰か別の者がカメラを持っているようだ。
人気配信者ともなれば、スタッフをつけるのも当然だろう。
ルーカスは喋りながら、どんどん進んでいく。
なぜか、ほとんどモンスターが出てこない。
どちらかというと、モンスターの方が避けているようだ。
出てきても、サササッと暗闇に隠れて逃げていってしまう。
何か忌避剤のような、特別なアイテムを持っているのだろうか。
「あ。あった」
洞窟の最深部に生えていたのは確かにキノコだった。
黄金に光り輝いている。
大きな木の幹が横たわっており、その上にちょこんと可愛らしく生えている。
「これが美味い……のかな? あまり美味そうにも思えないんですが。まあ、でもこれが薬になるらしいってことなので、もぎとりたいと思います!」
ルーカスはすたすたと近寄っていって、黄金のキノコをもぎとった。
「ん……うわっ!?」
その瞬間、ぐらりと木が揺れる。
幹だと思っていたものは、大きな腕だったのだ。
トレント。
妖樹と呼ばれるモンスターの一種である。
しかし、これほど大きなものは例を見ない。
鹿児島はほとんどの冒険者にとって、未知の領域だ。
何が出てもおかしくはない。
しかし、これほどとは……。
視聴者は息を呑んだ。
「っぐ……」
トレントはぎりぎりとルーカスをしめあげる。
ルーカスはキノコの入った籠を、向こう側に放り投げた。
カメラを構えていた者がキャッチをしたらしい。
『お、おい』
『これマジなやつ?』
『大丈夫かよ』
視聴者の心配をよそに、カメラマンだけが冷静なようだ。
姿は映らないが、画面の水平は変わらない。
と、思ったら、ザザザッと音声が途切れた。
洞窟の岩壁にレンズが向けられる。
ごつごつした岩肌以外、何も映らない。
トレントにしめあげられているルーカスの影。
シルエットだけが映っている。
しばらくの後。
それが一気に爆散した。
『!?!?!?』
『エッッッッ』
『は????』
『今なにがおこった』
視聴者からの反応が波のように膨れ上がる。
正確には、ルーカスだけが形を保っていた。
人型の影がぴょんっと躍り出ると、またザ・ザ・ザッとノイズが入った。
カメラがゆっくりと向きを変える。
そこには、両肩をさするルーカスと、キノコの入った籠。
そして、炭となったトレントの残骸が落ちていた。
「木炭もゲットですねえ」
カメラマンがのんきに言う台詞が聞こえる。
男のようだ。
それにしては穏やかそうな、浮世離れした感さえある。
頬を土で汚したルーカスは、しみじみと息を吐いて、
「助かった……」
と呟いた。
「大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫じゃないですよ……もう、死ぬかと思った……あんなモンスターがいるなら先に言ってください。俺の武器、木の棒しかないんですよ」
「ふふ、木に木で対抗……ふふふ」
「何のツボに入ってんのか分からないですが、とりあえずこれで採取完了ですね」
「ルーカスくん、宣伝宣伝」
「あ! そうだった……えーと、はじまりの酒場『鷹羽』では秋のキノコフェアを開催してます! ドコノコキノコは猛毒だから、人間には出しませんから安心してね! おいしいシイタケやエリンギをバターソテーにして出します。ワインともよく合いますよ~。期間限定、数量限定なのでお早めに。それでは、今日も観てくれてありがとうっ。ばいばいルーカス!」
ブチッ……。
『ねえやばいって』
『さすが登録者6千万の男』
『木の棒ってさすがに冗談だよね』
『SSS級ダンジョンで木の棒は草www』
『いやーにわかが増えたなw』
『これがルーカスクオリティ』
『俺らのルーカス先輩さすがっす』
『いつ見てもネタwww』
『結構かわいいじゃん』
『やばいメロい』
『犬系男子?』
『えっあれって何? ルーカスどうやって倒したの』
『魔導石どんだけ持ってんだろ』
『キャラだとしても推せる』
『木の棒に魔導石メッチャ仕込んでんじゃない』
『うけるwww』
『あー明日も頑張れそう』
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