第32話 トパジオンとギルドの選択
「ルーカスらは廃村まで出かけ、リンゴの実を採取した。その際、ポイズンベアに襲われた、というものです。ルーカスはその際配信をしており、ポイズンベアに襲われたことを明言して配信を切っています。ですが、彼らはその後酒場に帰還して夕飯を食べ、何の問題もなく就寝しております」
「サガの廃村とはいえ、ポイズンベア? 少し非現実的ですね」
「ええ、だから合成合成と騒がれていたのでしょう。もちろん、解析しましたが本物でした。ポイズンベアは、サガにはもちろん、ナガサキにもオオイタにも出没したことはなかったのです。カゴシマやミヤザキといった、
「ふ、並みの冒険者では歯は立ちませんね。まさか、ちょっと待って下さい。さっきルーカスはギルドから魔道具をもらっていないと言っていましたね?」
「はい、そうです」
「じゃあどうやって勝ったんです。剣や何か?」
「それは我々にも測りかねますが、可能としては2つです。1つはルーカスが何らの方法で魔導具を隠し持っていたか。もう1つはあのマスターなる男が、魔導具を持っているか? どちらにせよ魔道具を他人に譲渡するのは法律違反です。マスターなる男が持っていたにせよ、ギルドに申請をしていないのに魔導具を使う権利はない。我々には彼らを補足する正当な理由があります。彼らが魔道具を使っていたらですが
「だが、魔道具は使えば消えてしまい、証拠はもうなくなってしまったでしょう」
制服の上まできっちりとボタンを閉めているギルドの構成員はトパジオンに向かってうやうやしく一礼した。
「その通りです。しかし、2度あることは3度あると申します。あの、マスターなる男は鳥というふざけた名目で『魔物』を飼っているようです」
「もの好きなやつもいるもんですね。しかもあの小さな商店街の酒場でどこで買うって言うのでしょう」
「それが、裏庭で飼育してるようなのです。空間をねじ曲げているとしか思えません。噂によればドラゴンとか」
「ドラゴン」
トパジオンとギルドの会員は顔を見合わせた。
そして、一瞬の間があり、はははは!と大声で笑い合った。
「まさかそんなことが」
「そうですね。すみません。私も現実的ではないとは思ったのですが、ドラゴンなんて」
「伝説とは大きく出ましたね」
「哀れなものです。魔物は人間になつくだなんて妄想を……何かの拍子に腕でも食いちぎられて気づくはめになりますね。ルーカスのことを、勇者は気に入ってしまっています。どうやら昔の知り合いらしいです。あいつは何をするかわかりません」
「勇者というのはネクロスフィアのことですか? 私も唯一あいつには勝てません」
「ですが、ギルドのお仕事もされながら討伐をされています。ギルド業務がなければ、ネクロスフィア様にも記録では並ぶかその上を行くのではないでしょうか」
「だからといってギルドの長の私がいきなり辞任してしまったら、このギルドはどうなってしまうのですか。君たちがもっともっと出世して、ランキングの3位ガルタークに勝つことができれば、私も安心してギルド長の後任を決めることができます」
隊員は慇懃に礼をした。
「我々の力不足をお詫び申し上げます」
「ふう。それにしてもどうしましょう。オニクシウスはあのルーカスのこととなると、ちょっと頭のネジが外れるんですよ。いや、元々外れてるようなやつなんだけど、もっと外れるんです。ちょっと病気ですね、あれは。ルーカスとは元々の知り合いらしいけれど、冒険者になったのを聞いて、自分も志願したらしいんです。憧れをこじらせてるみたいですね。あの底辺配信者ルーカスをずっと見てますよ、動画を通してね。気持ち悪いったら」
「そうでございましたか。てっきり私なんぞは、トパジオン様とルーカスがお知り合いなのかと思っていましたが」
「いやいや、全然違うんですよ。ほら勇者って本土と更新をしたり、打ち合わせをしたり、何かのタイアップに使われたり、まあ表に出ないといけなかったりするでしょう。ギルドとしては勇者がいないと始まらないところがあって、私が勇者だった時は自分の再配次第で良かったんだが、あいつがどうにも嫌がるんですよ」
「ご苦労お察しします」
トパジオンは仰々しくため息をついた。
「わかってくれます? もう本当に若い子って使いづらくて。だからだと思うんだけど、全然言うこと聞かないんですよね。国のお偉いさんにちょっと頭を下げて、本土で尻尾降ってきてくれたらいいのに、行きたがらないし。で、オニキシウスは交換条件を出したんですよ。あのルーカスとかいう男の動画を見て視聴者として盛り上げてくれって。欲がないといおうか何といおうか。まあそれで、本土のパーティーには出てくれって言って、それでようやく説得したんです」
それにしても、棚からぼたもちといおうか、それともエビで鯛を釣るというべきか。
「ぼんくらのおかげで大物を仕留められそうですねえ」
元・勇者トパジオンは棚に引っかけていた魔導具の金のロッドを眺めた。
久々にあれを使う必要があるかもしれない。
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