第9話 特訓

 サクラとカグラは闘技場の右側を使って、イザベラと鍛冶屋の主は左側を使うことにした。

 カグラは刀を扱う際に大事なことを先に話した。

 「まず、刀というものは命だ」

 「命…?」

 「ああ。体の一部であり、命と同じだ」

すると、サクラは頭を押さえ始めた。

 「うっ…!あぁ!」

 「サクラ?!大丈夫か?!」


 視界が真っ白になって、しばらくしてから、知らない背景が映し出された。

 木製の双剣を扱っている場面だった。

 「そうよ、剣も体の一部なのよ」

 しばらく剣を振ってから、声のした方を向くと、黒髪を綺麗に伸ばした人物がいた。

 そして、また触れようとしたら、真っ白になって何もなくなってしまった。


 「サクラ!サクラ!」

 「はっ!」

 カグラに肩を揺さぶられて、正気に戻った。

 「あれ…私…」

 「よかった、戻ったな。突然頭を押さえたから驚いた」

 サクラは謝った。

 「すみません…よく、知らない記憶が…」

 「あまり無理して言わなくていい」

 「…はい」

 カグラが少し距離を取って、白いパネルを操作し始めた。

 目の前には赤いクリスタルが輝いていた。

 「あっ!」

 「ん?どうした?」

 サクラが、すごく前に森の中で見つけて以来のクリスタルだった。

 「このクリスタル!」

 カグラは周囲を見たが、クリスタルなんて見えない様子だった。

 「私には何も見えない…大丈夫か?さっきのショックでおかしくなったか?」

 「え、確かにここに…」

 サクラはクリスタルがあるところを指で指したが、それでもカグラには見えていなかったようだ。

 「少し休むか?」

 サクラはクリスタルに触れた。すると、クリスタルは消えた。

 「はい…すみません。少し頭を冷やしてきます…」

 「ああ。休憩が終わったら言ってくれ」

 「はい!」

 サクラは一旦待機場に戻った。



 一方、イザベラの方では。

 「まず大剣に必要なのは何か分かるか?」

 イザベラは顎に手を当てて考える仕草をしながら答えた。

 「パワーニャ?」

 鍛冶屋の主は豪快に笑いながらその答えを受け止めた。

 「ああ!確かにパワーも必要だ!」

 鍛冶屋の主は剣を構えた。

 「まず!大剣を扱うには、イザベラの言った通り、パワーだ!」

 剣を構えた状態で腕の筋肉を膨らませて、パワーを演出した。

 「パワー!」

 イザベラも真似して大きく見せた。

 「そして!そのパワーを引き出すためのフィジカルだ!」

 そう言って、全身を膨らませた。

 「そして次に!第六感だ!」

 イザベラは筋肉に関係ない言葉が出てきて、思わず疑問符を浮かべた。

 「だい…ろっかん…にゃ?」

 「ああ!第六感、つまり、勘だ!」

 イザベラの疑問符は3つくらいに増えるほどになっていた。

 「闇雲に剣を振り回して、体力を消耗してはパフォーマンスにも影響が出るだろう!」

 「うにゃ…」

 イザベラはようやく理解したようだ。

 「サクラに良いとこ見せたいと思わないのかい?」

 「見せたいニャ!」

 イザベラは一瞬で食いついた。どうやら本気のようだ。

 「よし!なら、早速やってみよう!」



 サクラが再び訓練場に戻ってきて、刀の使い方を学び始めた。


 説明だけでは何も始まらないと思った鍛冶屋の主は、スライムを出現させた。

 「イザベラ、こいつが何をしてこようとしてるか分かるか?」

 「突進してくるニャ!」

 しかし、スライムはただ見ているだけで、何もしてこなかった。

 「あれぇ、何もしてこないニャ…」

 「敵が動いて来ないなら、こっちから仕掛けるのもありだ!」

 鍛冶屋の主は走り出して、スライムに向かって剣を振り下ろした。スライムを切り裂いた。

 鍛冶屋の主はイザベラのところに戻ってきた。

 「常に敵の動きを予測して、最小限の動きで敵を倒すのが大剣だ!」

 「はい!」

 そして、イザベラは、ひたすら色々なモンスターと戦った。

 サクラの方も居合切りを教わっていた。

 そして、2人はそれぞれの武器を習得した。

 待機場に戻って休憩を始めた。

 「サクラ!どうだったニャ?」

 「すごく勉強になった…」

 「そうなのかニャ?こっちもすごく良かったニャ!」

 イザベラはしっぽを振りながら嬉しそうに言っていて、サクラの疲れが少し吹き飛んだ。

 「そうだ!せっかくだし、新しい武器で戦ってみないかニャ?」

 「え?でも、大切な人を傷つけるのは…」

 カグラが来た。

 「大切な人を傷つけたくないのは分かるが、それで相手の意思を無視せず、応えるべきだと思う」

 カグラの言うことは確かにそうだとサクラは思ったが、それでも判断に困ってしまった。

 「…だめかニャ…?」

 上目遣いでおねだりされて、サクラは心の中で 、ずるいと思った。

 「分かったよ!やろう!」

 サクラは「実際に死ぬわけじゃないから」と心の中で自分に言い聞かせた。

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