第19話 聖の間

 長い朝餉が終わった後、皆は一旦各自の部屋へ戻った。

 聖職者決定による祝宴と、国民にお披露目する『披露目ノ議』の打ち合わせに帝が聖麗殿へ訪れるのだ。

 衣桁に掛けた聖職者の袿を羽織り、身だしなみを整える。

 真珠は、白い箱に入れ、違い棚の奥に置いてある。帝と聖職者以外は触れられないので、盗られる心配はないが念のためだ。


(よし、準備完了)


 襖を閉め、廊下に出る。

 聖の間からは笑い声が聞こえた。

 中には既に聖職者の衣を羽織った凛太郎と涼人、将大が来ていて、皆で囲碁をしていた。

 将大と凛太郎が競い、涼人は将大の補佐らしく助言をしている。


「ほら、将大。そこに置けば良いと思う」

「よし、ここだね!」

「あ、あ、そこには置かないで!」


 うぎゃああと凛太郎が喚く。

 その隣で将大と涼人が楽しそうに手をぱちんと合わせる。


「男の子って子供よね」


 いつの間にか来ていた夕海が、琴の隣で苦笑した。

 男子陣の様子を見ながら、うんうんと腕組みをしている。


「皆さま、楽しそうですね」

「私、囲碁なんて興味ないもん」


 夕海は首を振ると、「そうだ!」と琴を見た。


「昨日、得意先の反物屋から良い布が届いたの。琴はどれが好き?」


 夕海は自分の部屋から、大きな箱を持ってきた。

 そして蓋を開ける。

 そこには色とりどりの布が入っていた。


「うわぁ! 綺麗ですね!」

「琴が気に入ったのがあったら、私が衣を仕立ててあげる!」

「いいんですか⁉︎」

「いいよいいよ。琴が喜んでる姿、すごく可愛いし」


 布は、藍で染めた上品な色から、雪のように真っ白なものまであった。

 すべてに光沢があって美しい。

 琴は目をきらきらさせて、一枚一枚見ていった。

 その中から一際綺麗な布を見つけて、そっと手に取った。


「お姉さま! 私、この色が好きです!」

「撫子色の布ね。琴にぴったりだ。これに春らしい簪を合わせてみたいね!」

「とっても綺麗です!」


 少女たちが布で盛り上がっている後ろで。

 少年たちは囲碁で大騒ぎをしていた。


「すごいすごい! 涼人のおかげで勝てた!」

「やったな、将大!」


 どうやら、涼人と将大が勝利したらしい。喜びに舞い上がる二人の前では、凛太朗が碁盤でがっくりと項垂れている。


「よし、もう一回勝負だ! 次は負けないぞ!」


 凛太郎が立ち上がって宣戦布告をしたとき。


「盛り上がっているな」


 笑いを含む声がした。

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