傭兵会社をクビになったおっさん、助けた美女配信冒険者達に拾われる
頼瑠 ユウ
第1話 とある指導員のお仕事
約五〇年前、地下に広がる大迷宮『ダンジョン』の出現に世界は一変した。
異形な怪物が生み出され、物理法則が通用しない異常な領域が超自然災害に人々は恐怖した。
だが、同時に世界そのものの在り方も大きく変容した。
人の意識に反応する新たなエネルギー粒子『魔力』が確認される。
それにより、人は『スキル』を発現し『冒険者』としてダンジョンを探索し、利益を得る術を獲得した。
――そして、現在。
ダンジョンは人々の生活に良くも悪くも浸透し、冒険者の『配信』が一般化していた。
◇
洞窟の様な通路と部屋が複雑に広がる地下にある
その一階層。二階層へと続くルートからは大きく外れ、他の冒険者が殆ど訪れる事の無い区域で、俺は新人冒険者への指導員として、若い冒険者達とゴブリンとの戦闘を後方から見守っていた。
「おら、とっとと死ね!」
剣士の少年が最後のゴブリンの頭を叩き割り、その緑の小柄の身体が魔力の粒子となって霧散した。魔物の心臓であり換金し収入の元となる魔石が地面に三つ転がっている。
「――よし、良い感じだな」
まだまだ荒い所あるが、運動神経は良い。経験を積んで行けば良い冒険者になるだろう。
「何が良い感じだよ。今更、ゴブリン三体なんか余裕に決まってるだろーが」
頭の中で今後の指導方針を組み立てていると、剣士の少年が大きく舌を打った。
「確かに、研修も既に二週間となるのに未だに一階層しか探索出来ないのはつまらないね」
それに槍を持つ少年が頷く。
「ホントよ。なんの為の研修なのこれ?」
退屈そうに杖を弄る少女は溜息をついた。
「そう言うな。一階層でも冒険者としてやっていく経験は十分に積める。今後の為に経験できることはしておく方が良いぞ」
俺がそう言うと、剣士の少年が声を荒げた。
「だから一階層なんかじゃ経験もクソもねぇだろうがよ!」
彼は苛立ちを隠す様子も無く、俺を睨む。
「二か月の研修期間、半分は座学と一階層の探索だけ! 探索に出れば出たで、一々マッピングをさせやがる! 何考えてんだよおっさん!」
「だね。既に開拓が済んでいる階層なのに進みが遅くなるばかりだ、まったく非効率だよ」
「だいたい、同期の子達はもう五階層で慣らしてるらしいじゃん。経験ってならそっちの方が良くない?」
堰を切ったように三人から不満が溢れ出す。
彼等の気持ちは分かるが、指導員の立場としてはそうもいかなかった。
「その説明も何度もしているだろ。前半の一か月は基本の反復。後半の一か月で様子を見ながら階層を進めて行くと」
我ながら口煩いと思いながらも、
「それにマッピングは冒険者として必須技能の一つだ。既にマッピングされている所を改めて自分達でマッピングすれば上達は早い。それに慣れておけば、探索しながら警戒する癖がつく。初見のルートを進む時には――」
「ああ、もう。わかったよ!」
剣士の少年が耐えきれなかったのか、うんざりしたように乱暴に剣を鞘に納めた。
「おっさんがそういうつもりなら、仕方がねぇよな」
「……そうだね。仕方がないか」
「あはは。だね」
槍の少年と杖の少女も続く。
「分かってくれたか。なら、明日は仲間内での連携を強化しよう。各々を上手くカバー出来れば、不意に格上の魔物と遭遇しても対応できるからな」
そうして、今日の研修を終え帰還した。
まだまだ若い十五、六歳の新人達からすれば俺の小言など聞きたくも無いだろうが、必ず役に立つ時が来る筈だ。
そうであれば、俺が働く意味もあるというものだ。
***あとがき***
以前から構想だけあったモノを連載していこうと思います。
他の作品の制作も少しずつですが進めているので、近々そちらも更新します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます