「矜持」という言葉の持つ意味と重さをあらためて実感できる、貴重な読書体験ができました。その年齢、状況での、主人公の首尾一貫した思考回路を擬似体験でき、その目に映ったであろう光景も、丁寧な描写から映像のように浮かびます。主人公は不幸だったのか、あるいは幸せだったのか。読む側が考えさせられる、余韻の残る作品です。