六呂木は重い女性に好かれやすい

久我崎呉羽

雑魚なりの戦い方

  高校生活2年目が始まった、新入生が入り、多少は変わると思っていたが、変わらず憂鬱だった。


 4時間目の授業が終わり、欠伸をしながらスマホをいじっていると、同じクラスで、眼鏡をかけた茶髪のイケメン、坂崎神影さかさきみかげが話しかけてきた。


「どうした風見、眠いのか?」


「いや、ただ2年になっても退屈だからさ」


「そうかい?僕は2年生になる前もあとも、あまり退屈してないけどね」


「お前はイケメンで、彼女も居るからだろ」


「そうかい?それに風見もイケメンだと思うし、彼女関係なく退屈はしないよ」


 神影は微笑みながら応えてきた。


「お前とイケメン度合いを比較するな」


「イケメン度合いって、あまり関係ないと思うよ」


「関係しかないだろ」


「100とは言わないが、彼女が居ない原因は、風見が1年生の時から『自分を守ってくれる女子としか付き合わない』なんて言ったからじゃないかな?」


 神影は呆れながらも原因を応えた。


 実際1年の時に告白してきた相手にそう言って振った。その事がキッカケでいじめが起こりかけたが、俺は開き直って堂々と言い、いじめどころか人すら寄らなくなった。まあ、何人か変人が近づいて来たが...


 そうこうしていると、薄紫の髪に、ロングヘアーをした神影の彼女、能登日菜のとひなと金髪に水色のメッシュが入ったウルフカットをした、平均より低い身長をした幼馴染の福地玲花ふくちれいかが話しかけてきた。


「風見、何騒いでるんだ?」


「え?授業だるいって嘆いてただけだけど」


「六呂木くん、くだらないことを神影くんに言わないでくれる?」


「いいだろ、大体神影は嫌なら嫌って言うしな。あれ?そんなことも知らずに彼j」


 そう発言すると、玲花の拳が腹に入って、俺は尻餅をついた。


「煽りすぎだ、馬鹿」



「風見、あまり日菜をいじめないでくれるかい?あと日菜、彼が言った通り、嫌なことはちゃんと言うよ。けど僕のことを気遣ってくれるのは嬉しいよ、ありがとう」


「わかった、今度からは気をつけるね」


 日菜は頬を赤ながら、応えていた。


「まあ、みんな揃ったことだし食堂に行こうか。風見立てるかい?」


「あぁ、なんとか。だけどスッゲー痛いから、玲花、肩を貸せ」


「嫌だよ。なんで自分デカい男に肩を貸さないいけないんだ?あと真っ先に女子に助けを求めるとか、恥ずかしくないのか?」


「俺はいつも言ってるだろ。自分を守ってくれる女子が好きだと。だから恥なんてない。それにお前が殴ったから責任を取るのは当たり前だろ?」


 玲花は呆れながら、それはそうだけどという感じで頷いた。


「お前...そういう奴だったな。まあ、お前が言うことは一理あるが、坂崎の方が良くないか?身長近いし」


「いや、これ以上神影を使うと、日菜に嫉妬するからな」


 日菜は焦りながら反論した。


「そ、そんなことないよ」


 日菜の反応に神影がフォローに入った。


「そうだね。普通なら僕が肩を貸すべきだ。だけど、殴ったのは、福地さんだ。今回は特別に肩を貸してあげてくれないかい?」


 神影がそういうならと、玲花が俺に肩を貸してきた。玲花に近くに行くと少し花の香りがした。


「じゃあ、食堂に行こうか」


 俺は、玲花は呆れ顔をしていたが、無視をして肩に手を乗せて食堂へ向かった。



 食堂で昼食を摂り、その後の授業を乗り切った。


 そして下校時間になった。俺以外は部活に入っているので、1人で下校している。


 1人は寂しくはあるが、寄り道が自由にできるので嫌いではない。


 そんなわけで、今日はゲームセンターによる為に街の方へ向かった。


 俺は音ゲーを満足するまでプレイし、そのまま家へ向かった。


 家へ向かっている途中、人通りの少ない場所で、同じ学校の制服をきた、藍色髪ボーイッシュの女子が絡まれていた。


「ねぇ、俺と遊ばない?」

「結構です」


 断られても、しつこく付き纏う男。道の真ん中で邪魔と感じつつ、めんどくさそうなので無視して通ることにした。


 横を通る瞬間、男がぶつかってきた。少し苛立ちつつも、謝罪がしてくれれば許すつもりでいた。だが男がキレ出しこちらに野次を飛ばし始めた。


「おい、前向いて歩けバカが」


 そう言われた俺は少し離れてスマホを取り出し、男に向けた。


「うわ〜、猿だ!こんな街中に居るの初めて見た!動物園から抜け出してきたのかな?」


「テメェ、何言ってんだ?」


「うわ〜、すっげ〜凶暴!森から来たのかな?」


 男は殴り掛かろうとこちらに走ってきた。男が近づいた瞬間、スマホのライトを光らせ、視界を奪った。そして自分の腕をクロスさせ、力を込め相手の拳に合わせながら、押し付けた。


 少しは痛いが、これで正当防衛の条件は揃った。拳が当たった瞬間屈み込み、相手の懐に潜り、体重掛けながら押した。


 ゴンと鈍い音がした。


「やっば、やり過ぎたか?おい、起きてるか?


すぐに立ち上がり確認すると、相手は動いていなかった。幸い気絶だけで済んでおり、呼吸もしていたので、とりあえず救急車に連絡した。


 救急車を呼び終え、絡まれていた女の子に話しかけた。


「なあ、このままだと俺の人生が終わる。だから辻褄を合わせる為に手伝ってくれないか?」


「いいですけど、どうすればいいの?」


「そうだな、俺と君は友達で、君と仲良くしてる俺に嫉妬して、殴り掛かってきた。そして俺は腕を殴られパニックになり、押し倒したら、気絶したって設定にしよう」


「それ無理がない?」


「こういうのは証言があれば、上手くいくんだよ。それに、人通りは少ないし、防犯カメラはここには無いから、不利になる証拠は出ないだろうし、頭打ってるから記憶が混濁しているって言えば通るでしょ。あとよかったら名前教えてくれる?」


「?わかりました、それでいいよ。名前は依田存愛いだありあ


「俺は六呂木風見ろくろぎかざみ。巻き込んで悪いが、協力してもらうぜ。よろしく」


「巻き込まれたって、私はあの人にしつこくナンパされて困ってたから、気にしなくて大丈夫」


 依田と協力を結び、救急車や警察が来て、口裏を合わせた証言をしていたら、夜も遅きなった。


 色々対策は打ったが、これだけでは不安は拭えない。俺は玲花に電話をかけた。


 玲花の父親は、有名企業の社長でコネなどが多数ある。昔いじめや冤罪などのトラブルを助けてもらったことがある。


 その味を覚えた俺は何かに巻き込まれ、自分が発端ではない場合は、真っ先に頼るようしている。


 直接電話をしないのは、忙しいのもあるが、玲花の頼みは断らない親バカなので、まず仲介役に玲花に電話をかけるようにしてる。


「今度は何をやらかした」


「おお玲花様、いつも話が早くて助かります。それで要件なのですが」


 俺は概要を伝えると、キレ気味の返答が返ってきた。


「おい、親父のコネにただ乗りできるからって限度があるぞ」


「そこをなんとか出来ませんかね?マジで人生詰むんですよ!!助けてくれなかったら、お前祟るからな!」


「わかったわかった。けど今回の件は、無償じゃないと思うから、覚悟しとけ」


 前社長からは、会社に雇う価値のある人材になれとは言われた。条件を満たせば大企業に入社できるのはありがたいが、有名大学とかに行かないとその資格がないので、勉強や教師の点数稼ぎをしてる。次はどんなことを言われるのか、想像がつかない。


 だが今は人生破滅を防げるのを喜ぼう。


「ありがとうございます。玲花様、社長ばんざーい」



 あのキモい男に喋りかけられることは嫌だったが、これも風見君に近づくためだった。


 私から彼を寝取った、玲花とかいうクソ金持ちに脅され洗脳されていた。わざと嫌われたりしてたり、私のことを忘れていたりしていた。


 けど忘れていても私を身を挺して守ってくれた。本当に私のこと好きなんだから。


 昔もいじめっ子から助けてくれて、いじめ矛先まで変えて守ってくれた。私が好きじゃないと絶対にできない行動。


 けど今度は私があの女の手から助けるから待っててね。


 


 腕が痛い。昨日殴られたせいで、痣ができていた。殴られた瞬間はあまり痛みを感じなかったが、時間に経つにつれじわじわと痛みが続いて、イライラしている。


「おはよう風見、昨日殴られたってLINEで言ってたけど大丈夫かい?」


「これを見ろ、大丈夫じゃない」


「思っていた以上に酷そうだね」


「だろ?マジで最悪だよ。おまけに退学とかになりそうなのが、最悪度を増してる」


「可哀想だけど、相手の出方で変わるからね。あとは祈ろう」


「まあ、何があろうと、僕は君の味方だよ」


 やばい、玲花が居なければ神影に惚れていた。そんなことを思い、神影に指ハートを贈った。


「キモいよ」


 俺は神影に振られたようだ。逆に振られなかったら、キモいと言いそうだけど。


「それはそうと、さっきから視線を感じないか?」


 俺は振り返り、確認しながら話した。


「そうかい?」


「モテるお前がそう言うなら気のせいか」


「僕が関係あるかはわからないが、気をつけておきなよ。1年生の時、大変だっただろ」


「そうだな。気をつけとく」



 そして昼。いつも通り4人で、食堂に行く為に神影と待っていると、見覚えのある女子が話しかけてきた。


「風見君昨日はありがとう」


 依田律儀だな。昨日お礼を聞いたのに、今日もお礼をしにくるとわ。


「大丈夫だよ。ただあいつにムカついたからやっただけだし。こっちも助かったよ。ありがとう」


「お礼も兼ねて、お昼一緒行かない?奢るよ」


 俺は奢りという言葉に弱い。食堂は他の店に比べれば安いのだが、その数百円があれば数回ゲームができるので、ありがたい。


「ありがたいんだけど、先約があるからまた今度に...」


「いや、僕は構わないよ。それに他の2人も承諾してくると思うよ」


「ということで行ってくるわ神影」


「ああ、失礼の無いようにね」


「わかってるわかってる」


「信用がないから言われるんだよ」


 正論すぎて言い返せない。それに神影を怒らせるのは、マジでやばい。去年キレられたが、今でもトラウマだ。


 俺と依田は食堂に向かった。



 日菜と一緒に、風見達の教師へ向かっていると、風見が私と同じクラスの存愛と廊下を歩いていた。


 昨日ついでに助けたとか言っていたが、話し合う仲までになったのか?


「玲花ちゃん、風見君が他の子と食堂に向かってるけど止めなくて大丈夫?」


「大丈夫じゃないか?」


 まあ、風見は私に惚れているだろうし、見逃しても大丈夫だろう。いざとなったら最終手段があるし。


「玲花ちゃん、油断してると風見君取られちゃうよ」


「取られる?あいつの評判知らないのか?地の底だぞ。友達すらほとんど居ないだろ」


 日菜は引き笑いしながら応えた。


「玲花ちゃん知らないの?風見君裏で人助けとかしてて、それで彼を見直した人から結構モテているんだよ」


「そうなのから?あいつが女子喋って居るの観ないからモテてないのかと」


「それ、玲花が彼女だと思われて少ないだけだよ。もし彼が彼女居ないって知られたらあっという間に取られちゃうよ」


「まあ、あいつ薄っぺらい関係嫌いだから大丈夫じゃないか?」

 

「それはそうだけど…


「けどあいつからの告白を待っていたが、私から行くしかないか。日菜手伝って」


「いいよ。なら放課後、服とか化粧品見に行こうか。玲花の私服ダサいし」


「おい、ダサいと思ってたなら言えよ」


「風見君が似合うって言ってくれた〜って喜んでたからそっとしておいたんだよ。それに風見君が笑うために冗談で言った可能性があるって伝えたのに、無視したのは玲花ちゃんだよ?」


「そういえばそうでした」


「まあ、ダサい服から可愛い服になったら風見君の好感度一気上がるよ、多分」


「ならやるしかないか。頼んだ日菜」


 玲花はサムズアップをしながら、日菜に熱い信頼の眼差しを向けていた。




 







 









 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

六呂木は重い女性に好かれやすい 久我崎呉羽 @KugasakiKureha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ