夜明けを迎える永久の黄昏
麿ケ明希
第1話 それは確かに夢であった
それは確かに夢であった。
身を粉にして、心が燃えるような献身的な、僕がもう過去に捨て去ってしまった夢だ
幼い頃からずっと憧れていた、ずっと自分もそうなるだろう、そうなるべきだと思っていた。
そうなるべく、努力した。
けれどもそれはどう足掻いても憧れであった。
追いつけるようで追いつけない、ずっとそんな距離で先を行く先人達を追いかけ続けた。
でも追いつけなかった。
追いつける者の結末を僕は見てしまったからだ。
何もかも嫌になる。
誰も僕を待ってくれやしない、皆僕を置いていってしまう。
そんな事100も承知だった、僕の事は絶対に、確実に置いていくって。
でももう少し、ほんの少しだけそばにいて欲しかった。
嗚呼、これは確かに夢である。
忌々しいけれど心安らぐあの人たちとの記憶。
僕の、憧れ。
輝かんばかりの笑みを浮かべ、その身その心を燃やし続けた憧れ。
最後の言葉すら言えなかった。
僕は最後まで追いつきたかった、だから
だから「ごめんね」なんて言わないで欲しかった。
何が起きてしまうのか分かっていた、だから最後は笑顔で送り出そう、そう思っていたのに。
泣かないで欲しかった、謝って欲しかった訳じゃない俺はただ、ただ一言「ありがとう」って言って欲しかった。
それで置いていくのを、僕の憧れに呑まれてしまうのを見守り、許そうと思ったのに。
でも行かないで欲しかったわけではない、ただ逝かないで欲しかった。
確かに僕はあの人たちがその身を言葉通り盾にした事も分かっている、それで助けられた者がいる事も。
でももしかしたらもっと違ったことで救えたかもしれなかった。
そんな事をほんの少しだけ思ってしまう。
嫌われたかもしれないなんて言ってたらしいけどはずぅっと嫌いなんて思っていないよ。
俺/僕は母さんも父さんも姉さんも義兄さんも先生も大、大好きなんだから。
嫌うわけないよ。
そんな事を吐き出しながら俺は瞼を上げた。
あぁ、これは確かにしあわせな夢であった
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