転生少女と言語学者
西瓜すいか
序章
序章
夏が終わり、急に寒くなり秋になったという感覚が身にしみて分かるようになった頃。私は手元の紙に目を向けていた。学校で受け取った模試の結果表には第一志望「E」判定の文字。
夏に努力し続けたが、実力が実らなかった気がして、気分が沈んでいた。周りの人たちが、判定を言い合っているのが聞こえてさらに気分が落ち込んでいくのを感じる。
周りの人々は本当に頭がいいのだ。優秀な志望大学に進学する自分の姿が想像できず、それでいて周りの期待に答えなければならないという気持ちと板挟みになりうまく考えがまとまらなかった。
ー私は何を勉強して、何になりたいのだろうか
その答えも見出せないまま、第一志望を変えるなら今しかないと考えながらも優柔不断な自分に私自身が飽き飽きしていた。
学校の外に出ると、冷たい風が頬に当たった。いつからこんなに寒くなったのかをぼんやり考えながら、塾へと自転車を漕いだ。朝起きて、学校に行って、塾に行って、自習室に行って、帰って、お風呂入って、単語帳を読んで、寝る。そんな日々のルーティンを送っていた。
家に帰ると母が暖かなご飯を作ってくれていた。
「ありがとう。お母さん。ご飯用意してくれて。」
「いいのよ。
笑顔で聞いてくる母に、少し戸惑ったが、リュックの中を漁り、ファイルの中から模試の結果表を取り出した。
「また、E判定だった…。だから第一志望変えようと思って…。」
「いいのよ。高校受験の頃も冬から成績がうんと伸びたじゃない!今は伸びなくてもきっと大丈夫よ!」
母はこう言って慰めるのだ。自分がこんなに頑張って何がしたいのかもわからないのに、私は強く志望していると思っているようだ。
私もそうありたいし、周りがそうであって当然であると考えるものわかるのである。
「…うん。そうだね。もう少し頑張ってみる。」
「うんうん。そっちの方がいいわよ。未練が残っちゃうかもしれないからね。」
ー私はいつから、辛いとか、やめたいとか自分の意見をいうのが怖くなったのかな
父が、以前こんな話を私にこぼした。「凛が中学受験失敗した時には投資に失敗して焦ったけど、高校受験では受かっていてよかったよ。」と言われたんだ。
塾代もたくさんお金がかかっていることが分かっている。それだけ期待されていると感じるけれど、それだけ受験に受からなかったどうしようと考えてしまうのだ。
部屋に戻って布団に入ると、静かで不安が一気に押し寄せてくる。まだ受けてもいない受験の合格発表のことを考えてしまうのだ。
ー受かってなかったら、幻滅されるかな、金食い虫って思われるかな
暗いところにいるとどんどんとネガティブな気持ちになっていく。大学に挑戦できるというだけでも恵まれているというのに、素直に頑張ろうと思えない自分が嫌なのだ。
ーもし、受験をしなくてもいい人生だったらどうなっていただろう。
そんなことを考えながら眠りについた。
目覚ましの音が聞こえない。太陽の光で目を覚ました。ふと感じるいつもと違う感じ。森の中にいるようだった。朝に弱い自分の頭を叩き起こす。
「森の中だ…。」
呟いても誰の返事も聞こえない。鳥の声が上の方から聞こえるだけだった。
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