2 私のこと


私の祖母は、優しい人だ。

こうやって家族を集めては、みんなで過ごす。

彼女はイギリス生まれで、その遺伝で私の髪も生まれつきブロンド。

そのせいで、周りから避けられていた時期があったけれど、この髪を、祖母を恨んだ事は一度もなかった。

地毛なのだから、と染めようとも思わなかった。


「着いたよ」


夏花さんの後をついていくようにして、私は車を降りる。

駐車場には、大きい車がいくつも停まっている。

いつ見ても、祖母の家は大きい。

今日のように、遅い時間になってしまったら全員が泊まれる。

それくらい大きい。

祖母に挨拶をしてから、来客用の部屋に入った。

白い天井に白い壁、それに木の床や家具。

部屋の一つ一つでさえ、シンプルなのに広々としていて、どこか温かみがある。

さっさと風呂を済ませたいけれど、この家にも風呂は1つしかない。

きっと他の誰かが入っているだろうと思い、椅子に腰掛けた。

瞼が、重くなっていく。

その裏にまだ、あの眼差しが残っている。


夢を見ていたはずなのに、どうしても思い出せない。

朝の食卓で、親戚たちの笑い声が響いていた。
味噌汁の湯気に、祖母の優しい笑顔。

英語も日本語も飛び交う環境が、なんだか懐かしい。
なのに私は、箸を動かしながらも、昨夜の少年のことばかり考えていた。
月明かりに照らされた髪、こちらを射抜くような瞳。
名前も知らないのに、どうしてこんなに忘れられないんだろう。



そして季節は巡る。
春の光が射し込む教室で、私は――あの夜の瞳と、もう一度出会うことになる。

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月と夕 ますたーぴーせ @PAPERM00N

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